専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第229回 現在、日本のオリンピック関係者は、てんやわんやの大騒ぎになっています。騒動の原因となったニュースは、これです。「東京五輪のマラソンと競歩の開催地を、東京から札幌に変…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第229回

 現在、日本のオリンピック関係者は、てんやわんやの大騒ぎになっています。騒動の原因となったニュースは、これです。

「東京五輪のマラソンと競歩の開催地を、東京から札幌に変更」

 IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が「札幌案」を提示したと思ったら、翌日には「決定」って、なんだんねん。日本に”主権”はないんですかね? なんで、ドイツ人に競技会場の決定権まで牛耳られなければならないのか、まったく意味不明です。アメリカ人ならまだしも……って、突っ込むところはそこかぁ~。

 とにかく、バッハ会長の発言から、大騒動となったこの問題。その後、大会組織委員会の森喜朗会長、小池百合子都知事、橋本聖子五輪相とIOC調整委員会を交えた4者協議が日本で行なわれ、マラソン、競歩の開催地変更が正式に決まりました。

 同協議では、「マラソン、競歩以外の会場変更はない」ということも合意されたようですが、今回は東京五輪の競技会場に関して、さらなる再検討を本当にしなくていいのか、ゴルフを含めて考えていきたいと思います。

 IOCは、9月にカタールのドーハで開催された世界陸上の、マラソンや競歩の結果から愕然とするデータを叩きつけられました。それは、途中棄権者が続出したのです。

 なかでも、強烈だったのは、女子マラソンです。68人が出場し、28人が棄権。完走率は、わずか58.8%にとどまったのです。

 当日の気象条件は、気温32.2度、湿度73.3%。夜中に開催されながら、それほど多くの棄権者が出たのは、高い湿度のせいでした。

 これを見たIOCは、東京五輪でも同様なことが起きると予測し、強権を発動。先手を打って、マラソンと競歩の競技会場を札幌へと変更したのです。

 東京の夏は暑すぎる、ということは前からわかっていた話ですけどね。日本政府は東京誘致をしたとき、「東京の夏は温暖でアスリートに最適」といった大嘘をかました経緯があります。どうしても、東京でオリンピックをしたかったのでしょう。

 ちなみに、メルセデス・ベンツの日本仕様の自動車のエアコンは、”熱帯モード”になっています。これは、もう30年以上も前からのことで、最初は”温帯モード”だったのですが、あまりの暑さと湿度のすごさに、「熱帯じゃん、ここ(日本)は」と気づいて、仕様を変えています。

 ドイツ人のバッハ会長が、こんな当たり前のことを知らないのも不思議です。ダイムラーに問い合わせれば、すぐわかる話じゃないですか。BMWでもいいんだけどさ。

 そんなことを言ったところで、もはや決まったものは仕方がありません。北海道でマラソンと競歩を開催することは、よしとしましょう。

 ところで、いまだ改善の余地がある競技があります。トライアスロンとゴルフです。これらはどうしますかね……。

 トライアスロンは、暑さも難儀ですが、お台場の水質汚染問題が深刻です。どこか、きれいな水のある地域に移さないと、マジでヤバいと思いますよ。だって、そもそも夏場のお台場は、大腸菌がウヨウヨして「トイレ臭い」と言われていますから……。

 トライアスロンと言えば、日本ですぐに連想するのは、宮古島の大会です。ただ、国際大会で見ると、最近は都市型になっているんですな。

 オーストラリアでは、シドニーのオペラハウスをバックに泳ぐとか、イギリスではテムズ川でビッグベンを見ながら泳ぐとか。日本では、横浜港でやっていましたか。

 そういう”都会開催”を夢見て、東京五輪ではお台場でやろうとした。それが、甘いんですね。

 トライアスロンは北海道じゃなくてもいいから、せめて房総半島で、台風被害の復興をかねてやるとか、そういう変更案があってもいいと思います。




東京五輪において、会場変更が本当に必要な競技は他にもあると思うんですがね...

●ゴルフの会場はどうする?
 さて、いよいよ真打ち登場。ゴルフの会場問題です。

 現在、ゴルフ会場は埼玉県の霞ヶ関カンツリー倶楽部に決定しています。

 けど、日本のプロゴルフ界では、過去何十年も夏の酷暑の時期に、都心近郊でビッグトーナメントは開催していません。最も暑い8月の上旬は、北海道や軽井沢、関東でも比較的過ごしやすい箱根とか、富士山周りのゴルフ場で開催される感じです。そんなの、ゴルフ界じゃあ常識です。

 地球温暖化が叫ばれて久しい最中、年々暑くなるのに、日本で一番暑いとされる地域でゴルフの試合をやるのは、自殺行為でしょ。選手のプレーに支障をきたすのはもちろん、ギャラリーの健康面も非常に心配です。

 このことはもう、何度となく言っているんですけどね。関係者はまったく聞く耳を持たず、日本有数の名門コースでオリンピック開催の栄誉を勝ち取ることに、邁進しているんですな。

 ここで、素晴らしい案があるので、提案したいと思います。

●ゴルフ会場はそもそも東京ではない
 そうなんですよ、気づきました?

 ゴルフの会場を決める時、当初は東京都の「若洲ゴルフリンクスでやる」といった話もありました。それがなぜか、埼玉県の”酷暑ゾーン”でやることに……。これは、政治的な”陰謀”があったとしか思えません。

 でも、東京以外でやることが決まっているなら、もうどこでも構わないんじゃないですか。いっそ、ゴルフも一緒に札幌開催にすればいいのです。

●コース側も引くに引けない?
 一方、霞ヶ関CCは、オリンピックに向けて、事前対策を練っているのか?

 今年の酷暑の時期に、トッププロ50人ぐらい集めて「4日間のラウンドをさせてみた」とか、そういう話は聞きません。

 やったことは、ジュニアを集めて、夏用のラウンドをさせたとか。子どもをオリンピックのテストに使ってどうするの? それ自体、危険じゃないですか。しかも当日、突然の雨に見舞われて中断したそうです。

 その結果、「この時期は危険」という判断を下さず、「雨の日の貴重なデータが取れた」なんて言うんだから、まったく意味不明です。

 さらに、霞ヶ関CCは、オリンピックの準備と称して、長期の休場をします。オリンピック会場となる東コースが4月から10月まで。西コースも5月から9月頃までクローズにするようです。そのうえ、具体的な金額はわかりませんが、休業補償のお金もどこからか出るという話です。

 なんで、そんなに恵まれているの? そこまで休んでの準備って何ですか?

 コースのメンテナンスはいいから、暑さ対策の具体案をしっかり示してほしいです。

 ここまで来ると、霞ヶ関CCのほうも、引くに引けない状況なんだと思います。突っ張ってはいけるけど、「もし大量のリタイヤが出たらどうしよう……」と、内心ハラハラしているはずです。

 誰か、霞ヶ関CCをラクにさせてやってください。

●究極の一手
 ここで、ゴルフ会場を霞ヶ関CCから北海道へ移す”究極の一手”があります。それは、霞ヶ関CCが「ゴルフ会場の受け入れを辞退」――そう宣言をすればいいのです。

「オリンピック開催時は酷暑が予想され、選手およびギャラリーの健康&体調管理ができませんので、会場になることを辞退します」と、言えばいいのです。

 すなわち、徳川慶喜が行なった「大政奉還」です。

 さすれば、「これは仕方がない。じゃあ、ゴルフ会場も北海道に移すか」と、話は簡単にまとまります。

 けど、頑なになっている霞ヶ関CCですから、ここはぜひとも坂本龍馬的な人物の登場が望ましいところです。

「今一度、東京五輪のゴルフ会場を洗い直したい候」

 そんなことをバッハさんが言えば済む話です。誰か、彼の耳元で囁いてくれませんかねぇ……。

 とにかく、ゴルフの試合中、熱中症の人を多数出したくないんです。今はただ、それだけを願うばかりです。