ヤクルトのウラジミール・バレンティン外野手が、スイングのフォロースルーでバットを捕手の頭に当てる“ハプニング”を今季だけで2度も起こしている。しかも、1週間半という短い期間で続いたため、大きな問題となった。■短期間に2度続いた“アクシデント…

ヤクルトのウラジミール・バレンティン外野手が、スイングのフォロースルーでバットを捕手の頭に当てる“ハプニング”を今季だけで2度も起こしている。しかも、1週間半という短い期間で続いたため、大きな問題となった。

■短期間に2度続いた“アクシデント”、バット直撃は「命に関わる」問題

 ヤクルトのウラジミール・バレンティン外野手が、スイングのフォロースルーでバットを捕手の頭に当てる“ハプニング”を今季だけで2度も起こしている。しかも、1週間半という短い期間で続いたため、大きな問題となった。

 1度目は7月24日の中日戦。アクシデントに見舞われた杉山は負傷交代となった。そして、2度目は今月2日の広島戦。この時も石原はその場に倒れこみ、負傷交代となっている。

 危険を回避するために、選手はどうすべきなのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は、打者が気をつけなければ、防ぐことはできないと指摘する。

「私も何回かやられていますけど、あれを防ぐためには、バッターが気をつけるか、キャッチャーが下がるしかない。キャッチャーの視点からすると、ワンバウンドで来た球を止めにいって、体が前に出ているのだから、そこにあのような形でバットが来れば、頭に当たらない方がおかしい。

 今回のバレンティンのように、左手一本でバットを後ろまで振るのは、ワンバウンドの球を空振りしたときがほとんどですね。高めの真っ直ぐを空振りしてもあのような形にはならないので、低めの球を空振りしたときです。これを防ぐには、よっぽどバッターに気をつけてもらわないと」

■捕手心理では「ワンバウンドを止めにいくときは前に行くしかない」

 ワンバウンドのボールが来た時、捕手が前に出て止めようとするのは“必然”だと野口氏は指摘する。

「キャッチャーの心理としては、ワンバウンドを止めにいくんだから下がれないですよ。監督・コーチからは『危ないから下がれ』と言われることもありますが、止めにいくときは前に行くしかない。これを『下がれ』とは、経験者としたら言いにくいですね。下がりすぎると、ショートバウンドがハーフバウンドになってしまいますから、より捕球が難しくなります。ワンバウンドする球は、多くの場合が変化球なので、どこに弾むかわからない。できるだけ前で押さえたくなるのがキャッチャーの心理です。

 ピッチャーとしても、人によってはキャッチャーが50センチ下がって構えたときに、的が遠くなって投げづらく感じる可能性もあります。様々な意味で、キャッチャーが下がるのはリスクがあります。だから、バッターが気をつけるしかないんです。中日が意見書を出しましたが、気持ちはすごくわかります。そうやって防ぐしかないんですよ。キャッチャーからすると、自分では防御しようがなく、さらに頭をバットで殴られるんですから。あのようなスイングをするバッターは、使わないでほしいですよ」

 頭部にバットが直撃すれば、選手生命の危機どころか、命に関わるような重症を負う可能性もある。実際に、杉山は頭頂部から流血する事態となった。野球では、頭部に衝撃を受けた選手が、脳震盪の後遺症で成績を落とすことも少なくない。

■専門家から様々な意見、命にかかわる問題「ルールで規制してほしい」

「今回の件では、当たり前ですが、2人ともヘルメットを被っていたのにも関わらず、1人は頭から流血しているわけです。バットは凶器だということを、バッターは忘れないでほしいですね。今年、キャッチャーを守るためにコリジョンルールが導入されましたが、であるなら、今回の件もルールで規制してほしいです。こっちのほうが、命に関わります。脳震盪でキャリアを終えたメジャーリーガーが何人いるのか」

 2度も続いた“ハプニング”については、多くの専門家から様々な意見が出た。中には、捕手が気をつけるべきだというものもあった。ただ、野口氏は何度も「バッターが気をつけるべき」だと訴える。

「キャッチャーが下がるしかない、という意見を言う方もいますが、本当にあそこに座って、ワンバウンドを投げられたときに、止められるのか。下がって構えることと、ワンバウンドを止めることは、二律背反するんです。キャッチャーをやっていた人間だったら、下がれないと思います。だって、止めなきゃいけないんですから」

 選手を守るためにも、ルールで規制するべきかを含めて、議論が必要となってきていることは確かだろう。