羽生結弦と宇野昌磨を追いかける存在として、24歳の田中刑事がスケートカナダで3位と結果を出すなか、それを追いかける若手で誰が頭角を現してくるか。それが注目ポイントのひとつでもあるフィギュアスケート西日本選手権が開幕。 初日の男子ショー…

 羽生結弦と宇野昌磨を追いかける存在として、24歳の田中刑事がスケートカナダで3位と結果を出すなか、それを追いかける若手で誰が頭角を現してくるか。それが注目ポイントのひとつでもあるフィギュアスケート西日本選手権が開幕。

 初日の男子ショートプログラム(SP)は、各選手がミスをする展開となった。トップに立ったのは、山本草太。今季は、10月のフィンランディアトロフィーのSPで4回転サルコウ+2回転トーループと4回転トーループ、トリプルアクセルをすべて決め、宇野をわずかに上回る92.81点でトップに立って復活を印象づけていた。



西日本選手権SPで首位の山本草太

 そのフィンランディアのフリーでは、ジャンプで転倒を繰り返して宇野に逆転を許したこともあって、「フリーの練習に力を入れてきた」と言う山本。大会前にはジャンプの調子が落ちてきていることも感じていたというが、それはケガが治って、体を存分に動かせるようになってきたからこその悩みでもあった。

「去年までは練習でもジャンプを制限して1日に1回だったりしましたが、それだと一つひとつに集中して跳んでいたので、体の調子の良し悪しまではわからなかった。でも今シーズンはかなり練習量を増やしているので、その日の調子の良し悪しがわかるようになり、それに影響されるようにもなってきています」

 そう自己分析した山本は、6分間練習では4回転サルコウと4回転トーループ、トリプルアクセルを何度かミスしながらも、最後には何とか決めて、慎重にジャンプと向き合っていた。

 本番では、最初の4回転サルコウは回転不足で片手をつきながらも、2回転トーループを付けて連続ジャンプにすると、6分間練習では尻の下がる着氷になっていた4回転トーループはしっかり降りて2.28点の加点をもらう出来。だが、最後のジャンプのトリプルアクセルでミスをしてしまい、1位発進となったものの75.05点にとどまった。

「4回転は何とかまとめられた感じでしたが、調子が落ちていた不安もあったので、トリプルアクセルはうまく浮かない感じで決まらなかった。僕はアクセルを得意と言えるような選手ではないですし、4回転もまだ難しいと思っています。トリプルアクセルについては、いつでも跳べる状態にはまだなっていないので、もっと練習量を増やしていかなければいけないと思っています」

 こう話す山本は、フィンランディアのSPで結果を出せたことで、さらに上を目指す向上心を持つようになり、270~280点を意識するまでになっている。

「あの時は連続ジャンプが4回転+2回転でも92点だったので、4回転+3回転にしてショートは90点台後半を出したい。フリーは昨季最終戦で171.63点を出していますが、今季の構成はそれより難しいので、しっかりやればそれ以上の点数を出せると思う」

 そのために取り組んでいるのは、フリーの演技を安定させることだ。昨季171.63点を出した時、4回転はトーループ1本だけだったのに対し、現在は4回転サルコウ2本、4回転トーループ1本の構成になっている。そのフリーをしっかり滑ることができるようになれば、さらに点数は伸びてくるはずだ。

 一方、グランプリ(GP)シリーズ初戦のスケートアメリカで5位だった友野一希は、今回も同じようにSPで出遅れる結果となった。

「スケートアメリカ以降は調子が良かったので、リラックスして会場入りできましたが、ジャンプを跳ぶ時に少し慎重になってしまった」と言う友野は、最初の4回転トーループは回転不足で3.50点の減点。次の4回転サルコウは2回転になって連続ジャンプにできず、最後のトリプルアクセルでは着氷を乱して手をついて、ミスを連発。65.14点で6位発進になった。

「4回転は練習で問題なく跳べている状態だったので、本当に悔しい。試合になると気持ちの振れ幅が大きくなってしまうのが失敗の要因と思いますが、どうしてもショートでは、気持ちも体も一歩踏み出せない状態になってしまう。このところはショートでミスをしてフリーで挽回するという形が続いているので、そこを何とかしなければいけない」

 友野は、昨季はさまざまな面で成長しようと貪欲に取り組み、それがかえって悪影響をおよぼすこともあった。本人も「いろいろ考えて自分を追い詰めてしまい、スケートが嫌になってしまってもいた」と認めるが、「でも、今季はスケートアメリカでいろいろ経験できたので原点に戻れたというか、気持ち的にも前に進めて、練習もリラックスしてできるようになっている」と上昇気流をつかみつつある。

 練習での4回転ジャンプの安定感が増している状態であれば、SPへの苦手意識は1回結果を出せば拭えるだろうし、そこからはポンと前に進めるはずだ。

 11月22日からのNHK杯に出場する山本と、GPシリーズ次戦はロステレコム杯に出場する友野。ふたりは、世界の上位陣を追いかける日本男子スケーターとして、乗り越えなければいけない壁を明確に意識し、それを攻略しようとしている。