結果はどうあれ、メキシコでの最速はレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンだった。 しかし、その速さが1週間後のアメリカ合衆国オースティンでも発揮できるかと言われれば、その確証はまったくない。昨年のフェルスタッペンはアメリカGP…

 結果はどうあれ、メキシコでの最速はレッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンだった。

 しかし、その速さが1週間後のアメリカ合衆国オースティンでも発揮できるかと言われれば、その確証はまったくない。



昨年のフェルスタッペンはアメリカGPで表彰台を掴んだが......

「いいレースができると思うよ。去年は最後方(18番グリッド)からスタートして、表彰台(3位)でフィニッシュすることができた。まぁ、後方スタートだからこそ別の戦略を採ることができたというのもあったけど、悪くないレースだったよね。

 でも、今年はもう少し前方のグリッドからスタートしたいと思っている。そこからどこまでやれるか見てみないとね。メキシコではマシンがとてもよく機能してくれたし、今週末もその勢いを継続できればと思っているよ」

 フェルスタッペンは3位表彰台を獲得した昨年のアメリカGPを引き合いに出してそう語ったが、それはあまりに楽観的すぎる見方かもしれない。いや、期待値が高いときほど慎重な見方を口にするフェルスタッペンの性格を考えれば、自信がないからこそ大口を叩いたとも言えそうだった。

 メキシコでは誤った2ストップ戦略で後退したものの、レース序盤は3位を好走していたアレクサンダー・アルボンは、言外にメキシコのようなメルセデスAMGやフェラーリに匹敵する走りは、アメリカでは難しいだろうという思いをにじませながら、言葉を選びつつ語った。

「メキシコはいつもレッドブルにとっていいレースだけど、標高が高いとか特殊な条件ではない一般的なサーキットに来て、どうなるか……。悲観的になっているわけではないけど、自分たちが何をすべきかわかっているよ。

 ここには長いストレートがあるし、高速コーナーも少ない。上位争いのなかに入りたいとは思うけど、FP1が始まってみなければなんとも言えないと思う」

 メキシコGP前の鈴鹿では、空力性能もメカニカル性能もパワーもすべてが問われるハイレベルなサーキットゆえに、メルセデスAMGやフェラーリには大きな差をつけられ、中団グループのマクラーレンを抑えて4位でフィニッシュするのが精一杯だった。

 一方、メキシコでは標高の高さゆえにパワー差が縮まり、冷却をさほど要求しないパワーユニットのおかげもあって、空力性能をライバルほど落とさずに済んだ。しかし、平地に戻ったサーキット・オブ・ジ・アメリカズでは、また鈴鹿の時のような差に逆戻りする可能性も十分に有り得る。

「そうじゃないことを祈っているけどね。鈴鹿の時よりは(上位勢に)近づければと思っているけど、ここのサーキットも、レイアウトや速度域的には鈴鹿と同じくイージーなサーキットじゃない。慎重にならなければならない」(アルボン)

 メキシコの快走は、あくまで標高2200メートルという特殊な条件下だからこそのものであり、このサーキット・オブ・ジ・アメリカズでは元の木阿弥となってしまう可能性は十分にある。

 ホンダの田辺豊治テクニカルディレクターに水を向けると、同じ答えが返ってきた。

「メキシコは特殊な条件下でしたから、どこのメーカーもそれなりに合せて来ているとはいえ、平地と高地のバランスは各メーカーでそれなりに違ったのかなと思います。(もとの状態に戻る可能性は)ありますね。何が出るかは走ってみないとわかりません。パワーユニットについて、とくにびっくりするような話はどこにもなくて、(メキシコGP以前の)今までどおりです」

 サーキット・オブ・ジ・アメリカズには長いストレートがあり、フェラーリはここが自分たちにとって有利になると見ている。

 しかし、それはパワーユニットの優位だけではなく、ドラッグ(空気抵抗)が小さく最高速が伸びるからこそのアドバンテージだろうと、田辺テクニカルディレクターは見る。

 ストレートが長いとはいえ、1周全体での全開率は62%程度。そこまで極端にパワーの優劣がラップタイムを大きく左右するサーキットレイアウトではないからだ。

「ストレートがあってフェラーリが得意だというのは、パワーユニットの話じゃなくて(ドラッグが小さいという)マシンパッケージの話ですよね。じゃあ、パワーユニット的に見てどうかと言われると、パワーユニットにとってここはチャレンジングな要素のない、普通のサーキットなんです。しかし、マシンパッケージ全体として見ると、長いストレートが2本あるので、また『フェラーリはストレートだけで0.7秒(稼いでいる)』という話になるかもしれません」

 暑くなれば、冷却に苦しむパワーユニットメーカーもいてホンダにとっては有利になり得る。だが、今週末のオースティンは最高気温が20度を下回り、朝晩はひとケタ台まで冷え込む寒さに包まれている。

 今週末、ルイス・ハミルトンが6度目のタイトルを獲得することがほぼ確定的といえるメルセデスAMGは、2台のマシンに気流センサーを装着し、金曜フリー走行をすでに来季を見据えたデータ収集作業にあてている。

 来季に大きな飛躍と逆転を遂げなければならないレッドブル・ホンダこそ、残り3戦でやるべきことは、目先の結果に一喜一憂することではなく、来季に向けて自分たちが抱えている問題をしっかりと理解し、解決するために努力することだ。そのくらい、今のレッドブル・ホンダは追い込まれている。そのことを彼ら自身が認識しなければ、来季の飛躍は簡単ではないだろう。