今季の第2先発のマウンドに立つのは徳山壮磨(スポ2=大阪桐蔭)だ。けがから復帰した春は守護神として三振の山を築く活躍を見せたが、今秋は一転。打たせて取る丁寧な投球で相手打線を手玉に取る。早慶戦での先発登板は、志願で手に入れた1年春以来。「…

 今季の第2先発のマウンドに立つのは徳山壮磨(スポ2=大阪桐蔭)だ。けがから復帰した春は守護神として三振の山を築く活躍を見せたが、今秋は一転。打たせて取る丁寧な投球で相手打線を手玉に取る。早慶戦での先発登板は、志願で手に入れた1年春以来。「絶対に点をやらないように、ホームベースを踏ませない」。強い意志で大一番に挑む。

※この取材は10月23日に行われたものです。

「やっぱり先発が自分はしっくり来るなという感覚」(徳山)


取材に応じる徳山

――直前のアンケートで現在の状態を50点と評価していただきましたが、なぜこの点数にされたのでしょうか

 自分としては2回戦を任されていて、完投完封というのが目標でずっとやってきていたので、7回8回の後半で自分のピッチングが崩れてしまう後半の弱さというのが、半分足りていない部分だと思っています。逆に前半は自分でゲームを作れているので合格点なのですが、後半の粘りという部分が足りていないので50点にしました。

――このアンケートにご回答いただいたのがおそらく東大戦後だと思うのですが、立大戦を経て評価は変わりましたか

 ここまで4試合とも、ゲームの前半は自分のかたちをつくれているので、自分としてもそこは評価しています。でもどの試合を見ても、 後半戦がまだ弱いので慶大戦では良い流れを作れたらな、と思っています。

――法大、明大との対戦では登板が6回や7回までになったかと思うのですが、その時点では既に球が浮いているという状態になっていたのでしょうか

 明大戦でも6回で球が上ずって犠牲フライで点を取られたりしてしまったので、前半で取られていないのに後半で点を取られてしまったり、空振りが取れなくなったりしてきてしまいます。自分としては浮いている球を外野に運ばれてしまうと実感しています。

――防御率は1.50。この数字をどのように考えていますか

 秋を迎える前は防御率1点台に抑えるということを目標としていたので、その面では順調に来れていると思います。

――今シーズン登板された4試合を振り返ってみていかがですか

 もっと上を目指してやっている分、力不足を感じているので現状に満足は全然いってないですね。

――上を目指すという「上」とは、点を取られない投球のことでしょうか。それとも被安打などを含めた投球の内容か、どちらの話でしょうか

 失点しないことは自分としても重要ですけど、内容が良かったら結果も付いてくると思うので内容ですかね。

――今季、第2先発の決定というのはいつ頃あったのでしょうか

 春季リーグ戦が終わった時点で、小宮山さん(悟監督、平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から「この秋は先発で使うつもりでおるから、そのつもりで準備してくれ」というふうに言われていました。 実際に練習試合などで先発の経験をしてその面ではしっかり準備をしていました。

――準備というのは前にも伺ったかと思うのですが、投げ込む球数を増やすことやスタミナをつけるというお話になってきますか

 球数に関してはそうですね。でも自分は走る量をリーグ戦前と(リーグ戦)期間中で量を落とすのではなくて、現状維持でずっとやれる量をしっかりこなすということをやってきているので、特別練習量を変えたっていうことはないです。

――先発登板を重ねて、手応えとしてはいかがですか

 大学に入ってから先発をしていなくて、自分でも物足りなさってのはずっと感じながらやってきていたので、やっと出番が巡ってきて先発をやれる喜びというかそういうのはすごくマウンドでも感じています。やっぱり先発が自分はしっくり来るなという感覚は持っています。

――入学前の対談から「先発にこだわってやっていきたい」とおっしゃっていたのを覚えていますので、かなり先発に対する思い入れは強いのではないかと思うのですが

 高校時代からずっと先発のマウンドを任されていたので(笑)。ここが自分の場所だと思っています。先発だと勝ったら自分の勝ちというのを取れますし、勝利ということに関しては3年生4年生になると、プロに行くためにはその数が必要になってくるような場面も出てくるかと思うので、そういうところにもこだわっていきたいです。

――具体的に目指す勝利数はありますか

 勝利数は試合展開だとかチーム状態で変わってきてしまうので…。ラッキーな勝ちもあれば(自分が)抑えても勝ちを取れない時もあるので、おのずとついてくるものだと思っています。それよりは通算防御率を4年生になるまで1点台に抑えてキープできるようにこだわっていきたいなと思っています。

――第2先発ということで1回戦を落としてしまった後の先発では、かかるプレッシャーも大きくなるかと思うのですが

 プレッシャーというよりは毎試合毎試合、自分が投げた時は完投するぐらいの気持ちで入り込んでいるので、勝った負けたよりかは自分が投げた試合だけは絶対勝つということだけを見て投げています。

「プレッシャーをプラスに変えて投球に」

――各試合の振り返りに入りたいと思います。まずは法大2回戦なのですが、試合後のコメントで「少し緊張した」とおっしゃっていたのが印象的でした

 初回は結構緊張しましたね。やっぱり。今でも毎週毎週結構緊張するんですけど、高校の時の監督から「緊張しなくなったら終わりだ」みたいなふうに言われていたこともあって。「緊張をすればするほど自分の力が出せるように、プレッシャーをプラスにしてやれ」っていうふうにはずっと言われていたので、自分にプレッシャーを掛けるのもそうですし、緊張感ってのは自分にとって良いものなんじゃないかなというふうに思います。

――むしろその緊張感をプラスに働かせるようにしているんですか

 (緊張感が)マイナスになる人もいるかとは思うのですが、自分はそのプレッシャーをプラスに変えて投球に繋げられるようになってきました。

――春はクローザーとしての登板となっていましたが、気持ちの面で違うところはありますか

 先発だと自分のペースでじっくり気持ちをつくって試合に向かうことができるし、自分での気持ちの調整がうまくいきやすいです。

――急に「今から救援登板!」みたいなことはないですもんね

 そうですね。

――東大戦では完投完封勝利があったかと思うのですが、あの日は雨が降っていて状態も悪い中での投球になりました

 雨の試合で結構投げづらくてストライクを取るのに必死な感じだったんですけど、内容というよりはストライクを投げて押さえるということを意識していました。その結果、完封につながったと思うので、完璧に0点に抑えられたことを自分としては評価しています。

――明大戦、立大戦では後半から球が浮くというふうにおっしゃっていたかと思うのですが、球が浮くという状態は、意図したコースにボールが決まらないという解釈で合っていますか

 ただ単にボールが高いっていう感じですね。 自分のストレートをコースに決められていたら0点に抑えられるという自信は結構あるので、初回から5回までは0点に抑えられてきているんじゃないかなと思っています。6回7回からの後半で(球が)浮くようになってから打たれるようになってしまっているので、後半の制球力という部分が課題になってくると思います。

――試合の途中で投球の感覚が変わるということですか

 感覚が変わるというよりはフォームの問題なんですけど、上体が突っ込んでしまったりだとか体の開きが早かったりだとかの微妙なズレで大きく変わってくるので、若干何ミリとかの世界でコントロールが悪くなったりだとか、指のかかりが悪くなったりだとか、微妙なところのズレが重なって甘くなってしまうのかと考えています。

――かなり感覚的な部分の話になってくるんですね

 結構緻密なんです(笑)。

――その場面でも変化球に頼るのではなくて、ストレートで押していくというのが今季のスタイルになっているかと思うのですが

 2年後にプロに行くためには真っすぐが基本なので。大学生時代は変化球でかわす投球ではなくて、まっすぐでどんどん押して、大学生レベルだとストレート一本で抑えれるぐらいじゃないとプロでは無理だと思っているので。それができないと上では通用しないなと思っています。

――アンケートで答えていただいた「マウンドさばき」という言葉が少し気になっているのですが、これはどのような徳山選手ご自身はどのような言葉だと思われていますか

 高校の時のピッチングコーチの方から「マウンドさばき」は「心技体」だと言われていました。「心のコントロール」「体のコントロール」「技術のコントロール」の三つが基本です。この三つのコントロールができると、ようやく自分のピッチングができるんだろうと言われていたので、「心の中では抑えられるっていう気持ちは持っていても、体が付いてこなかったら一緒やから、まずは気持ちと体のコントロール。そこに技術のコントロールを追い付かせる」。っていうことだと思っています。

――前回対談で改良しているとおっしゃっていた真っすぐですが、実際に投げてみての手応えはいかがですか

 良い時と悪い時とはっきりしているんですけど、腕が振れているときは空振りを取れているんで、それをもっと増やしてファウルじゃなくて空振りを取れるようにこだわっていきたいです。

――今季は打たせて取るピッチングがメインになっていると思うのですが、テンポのいい投球のために意識していることはありますか

 力をできるだけ抜いてラインを出すという感じですね。立大戦なんかは、本当にそれができていたと思います。

――立大戦は3奪三振。普段と比べるとかなり少なくなっていましたね

 立大戦では序盤本当に力を入れてなくてラインを出すところでしっかり出せていたと思うので、テンポの面では良かったと思います。

――テンポの面では、ですか

 まだまだピンチをしのぎ切れなかったので足りないですね。特にストレートですね。ファウルになってしまうので空振りを取りたいです。

―― バットに当たらない、当てられないが目標になってきますか

 そうですね。

――野球から少し離れますが、今季からグローブを変えられましたね。春とはカラーリングが変わったと思うのですが

 新しいグローブができたら使いたくなった、って感じですね(笑)。自分としては色どうしようかなーと思っていたんですけど、同期の長柄(昂、人2=石川・金沢桜丘)にどういう色がいいかって相談しました。

――春季リーグ戦が終わってから20歳になられたということで、おめでとうございます

 ありがとうございます!

――当日は何かお祝いされたりしましたか

 ちょうどリーグ戦が終わって帰省していたので、実家に帰っていたんです。家族がホテルのレストランでステーキを予約してくれていて、そこで肉食べてビールを飲んだんですけど、ビールがまずくておとんにあげましたね(笑)。

「勝負したいって言ってくれているのは誰に言われてもうれしい」


明大2回戦で力投する徳山

――早慶戦の話に入ろうと思います。先発は1年の春以来ですが、当時想像していたような選手に成長できたと思いますか

 順調に平均球速が上がったりだとか、徐々に成長ができているとは思います。残り2年でもっと大きくなりたいという感じですね。

――当時は緊張されていましたか

 まあまあですね(笑)。

――慶大が今季好調ですが、今の印象はいかがですか

 普通にチーム力がいいなっていう印象ですかね。一つにまとまっていてやっているなと見ていて思いますし、さすがに10連勝は避けたいんで、自分が投げて抑えて勝ちます。

――打者陣だけではなくて投手陣も層が厚い印象ですが、気になる選手はいますか

 今季は森田(晃介、2年)ですね。防御率が0.00っていうすごいことしているんで、同い年として負けられません。2回戦で投げ合うとしたら、絶対勝ちます。

――慶大打線の要注意打者としてはいかがでしょうか

 下山(悠介、1年)と柳町さん(達副将、4年)ですね。その二人です。下山とかほんまに1年か?って感じの活躍なのでしっかり抑えます。

――アンケートでは福井章吾選手(2年)との対戦について書き込んでいただいたと思うんですけど、最近はいかがですか

  LINEで今年は対戦できるんちゃう?みたいなメッセージが来て、できるなーって話はしてます。お互い頑張ろうみたいな感じすね(笑)。

――実は慶大の選手にもアンケートを取っているんですが、「早稲田の選手に一言」という欄で複数人の選手から「対戦を楽しみにしている」というような指名がありました

 え?本当に言われてるんすか(笑)?

――正木智也選手(2年)、若林翔平選手(2年)、渡部遼人選手(2年)からですね

徳山あー。正木は自分との対戦楽しみにしてるって、福井から前から聞いていたんで。勝負したいって言ってくれているのは誰に言われてもうれしいですね。若林なんかは大阪の時からの因縁みたいなもありますし(笑)。

――現在の徳山選手の状態としては何パーセントぐらいになりますか

 早慶戦に100パーセントで臨めるように調整中です

――チームとしてはどれぐらいだと思いますか

 チームか…きっと早慶戦なんで全員調子が上がると信じて100パーセントっていうことで。

――アンケートでは「4年生と笑って終わる!」とお答えいただいていましたが、4年生はどのような代でしたか

 個人個人の技術レベルがとにかく高い選手が多いので、この力が集結したら慶大にだって負けない強さがあります。最後に力を見せてほしいですね。

――早慶戦ではご自身はどのような投球を目指していきますか

 とりあえずは、もう絶対にゼロに抑えるっていうことがテーマになってきます。絶対に点をやらないように、ホームベースを踏ませないっていう気持ちでしっかり投げていきます。

――早慶戦への意気込みをお願いします

 連勝して勝ち点を取って終われるように頑張ります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 柴田侑佳)


慶大打線をゼロに封じます!

◆徳山壮磨(とくやま・そうま)
1999(平11)年6月6日生まれ。183センチ、82キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部2年。投手。右投右打。今季も好調を維持する徳山選手。しかし必ず「まだまだ」と上を向き、常に貪欲な姿勢を見せるなどさらなる成長に期待がかかります。入学前から望んでいた先発の座を実力でつかみ取った右腕は、これからの早大を背負って立つ投手になることになるでしょう。そのためにもまずはこの大一番で、自慢の直球を存分に駆使して慶大打線に立ちはだかります!