初勝利を決めた瞬間、父親らがいる方向を見つめた大坂なおみ 女子プロテニスツアーの最終戦・資生堂WTAファイナルズ(中国・深セン)のオープニングマッチに登場した第3シードの大坂なおみ(WTAランキング3位、10月21日付け、以下同)は、ラ…



初勝利を決めた瞬間、父親らがいる方向を見つめた大坂なおみ

 女子プロテニスツアーの最終戦・資生堂WTAファイナルズ(中国・深セン)のオープニングマッチに登場した第3シードの大坂なおみ(WTAランキング3位、10月21日付け、以下同)は、ラウンドロビンの初戦で、第6シードのペトラ・クビトバ(6位、チェコ)を、7-6、4-6、6-4で破って幸先のいいスタートをきった。

 2年連続2回目のWTAファイナルズ出場となった大坂だが、昨年は3連敗だったため、これがファイナルズでの初勝利となった。

「とてもうれしいです。すべてのトッププレーヤーがプレーしている大会ですからね。過去には少し苦しんだ部分もありましたし。高いランキングの選手とプレーするとき、なかなかうまくいかないこともあります。だからこそ、この大会は私にとって大きなチャレンジなのです」

 2019年オーストラリアンオープン決勝の再現となったこの対戦カード。第1セット第1ゲームを、クビトバがいきなり先にブレークした。クビトバは、サーブやストロークで強気に打っていく時、一撃でウィナーを奪える力がある反面、ミスが多い部分もあり、そこから大坂が反撃へ転じるチャンスがあった。

 また、サーブやストロークの打ち合いでは、クビトバがバックサイドにボールを集め、なかなか思うように試合の流れをつかむことができなかったため、大坂のメンタルのアップダウンが激しく、ラケットを何度も投げる場面があった。

 ただ、「自分のサーブで、自分から本当にひどいゲームをしてしまった」と振り返ったクビトバは、第1セット第8ゲームで3回、ファイナルセット第3ゲームで2回、ダブルフォールトをして、自らのミスによってサービスブレークを大坂に許すことになった。

「彼女(クビトバ)のダブルフォールト(合計9回)がかなり多かったので、私が取れた(ブレークした)ゲームはちょっとラッキーだったと思います」

 結局、2時間39分におよぶロングマッチを制したのは大坂で、これでマッチ11連勝となった(自己タイ)。

 このWTAファイナルズの前に行なわれていたアジアシーズンで大坂は、復活の狼煙を上げるようなめざましい活躍を見せていた。

 まず、9月中旬に大阪で開催された東レ パン パシフィックテニスで初優勝。さらに10月第1週には、WTA北京大会でも初優勝し、プレミアマンダトリー(テニス4大メジャーであるグランドスラムに次ぐグレードの大会)で、2つ目のタイトルを獲得した。

 大坂は、アジアシーズンへ臨むために来日した際、スタッフやエージェントとじっくり話し合ったという。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだUSオープンでは4回戦で敗れ、みんなの期待にこたえられずじくじたる思いがあった。だからこそ、アジアシーズンに強い覚悟をもって戦いに臨んだ。

「私は、アジアでの大会で優勝すると約束しました。今季の残りにすべてを出し尽くすつもりでやる。そして私は成し遂げることができました」

 いつもツアーに帯同してくれるチームメンバーを、家族のようにとらえ、彼らをハッピーにさせたいと考えている。自分自身のために戦うよりも他人のために戦うほうがモチベーションは上がって力が発揮できるというのは、いかにも心優しい大坂らしく、彼女の大きな魅力のひとつとも言える。

 次の第2戦は初戦を勝利した者同士で行なわれ、第1シードのアシュリ―・バーティ(1位、オーストラリア)との大一番に臨むことになった。2人の対戦成績は2勝2敗で、直近では、WTA北京大会の決勝で対戦し、大坂がフルセットの逆転勝ちを収めている。

 おそらく、レッドグループでの準決勝進出決定を左右するような重要な戦いになるだろう(グループの1位と2位が準決勝に進出できる)。

 大坂は、自分が引き続きWTAファイナルズで勝っていくための自分なりに見つけたマインドセットを心がけている。

「この大会を、ファイナルズだとあまり考え過ぎないように、と思っています。北京から続く戦いを続けられるようにトライしていきたいです」

 自分のいいイメージのプレーを忘れずに、WTAファイナルズでも同じようにいいテニスを披露できればと考えているのだ。

「優勝するために、ここにいる。それが私のゴールなんです」と力強く宣言をした大坂は、今大会の優勝候補のひとりと言っても決して過言ではない。