人呼んで「カントー」が、大学日本一を争うステージへ戻って来た。 今秋開幕の関東大学リーグ戦にあって、関東学院大が4シーズンぶりに1部へ復帰。2006年度まで10季続けて大学選手権の決勝へ進んだ強豪が、復権の第一歩を踏み出す。 日本一を決め…

 人呼んで「カントー」が、大学日本一を争うステージへ戻って来た。

 今秋開幕の関東大学リーグ戦にあって、関東学院大が4シーズンぶりに1部へ復帰。2006年度まで10季続けて大学選手権の決勝へ進んだ強豪が、復権の第一歩を踏み出す。

 日本一を決める大学選手権への出場権争いは、同リーグ戦では1部のチームのみに与えられる。入学以来ずっと2部でプレーしてきた宮川智海主将が、こみ上げる思いを語った。

「昨年までとは違うステージでやれる。自分も、チーム全体も、意識が違う。今年は大学選手権も狙える。目線が、違います」

 昇格後初の夏合宿中だった、8月16日。FW陣が韓国の延世大を交え、昨季全国4強の明治大と合同練習をした。明大のセミナーハウスでスクラム、ラインアウトをおこない、その圧力を肌で感じた。

「明大さんとのセッションは去年もやらせていただいていたんですけど、その時は1.5軍といったようなメンバーでした。今年は1軍が相手をしていただいて…。大きさ、重さ、巧さ。これが大学のトップチームだ。皆、口を揃えて言っていました」

 東北屈指の古豪である秋田工高から関東学大入り。当時の心境を「1部でやる気持ちでいたら、入ったら2部。早く1部でプレーしたいという焦りがあった」と振り返る。

 降格初年度となったルーキーイヤーは、指導陣と上級生部員との間のトラブルに直面。板井良太監督が就任した2年時は、「自信を持っていた」としながら昇格は果たせなかった。「何を達成するにも、簡単ではない」。この一言に、実感を込めた。

「2年生の時はチームも整ってきていて、頼りになる上級性もいた。それで自信があったんですけど、入替戦にすら出られなかった。正直、チームがまとまっていなかったかもしれません。1部に上がった今年は、目標を達成するための努力がさらに大変になる。大学選手権は高いレベルの目標です」

 身長190センチ、体重95キロのバックローは、跳躍力と柔らかなランを長所とする。男子7人制の学生日本代表にも選ばれたことがあり、クラブの華となりうる。

 そのため板井監督は、「手を掴んでおかないとふわーっとどっかへ行ってしまいそうなところがありますけど、潜在的な能力、存在感がある」と冗談交じりに期待。主将に任命した。

「僕はどちらかと言うとそういうキャラではないんですけど…」こう戸惑っていたという宮川に対し、助け舟を出すのは榎本淳平ヘッドコーチ(HC)だった。黄金期のOBである榎本HCは、パナソニックの前身である三洋電機で主将経験を持つ。主将をしたことのない宮川へは練習中、仲間に声をかけるタイミングなどを助言するようだ。

 当の本人は「周りの方がサポートしてくれる」と、その役割に責任を持つ。

「淳平さんに細かくアドバイスしてもらっています。その場では言われないんですが、『きょうの練習中のあの時みたいな場合、皆を集めた方がいいぞ』とか」

 初戦は9月11日、群馬・浜川グラウンドでおこなわれる。相手は前年度リーグ戦王者の東海大。関東学大が低迷した間、フィジカリティの強さを確立した組織である。宮川は「個で勝つより組織力で勝つ」。再びクラブに矜持を根付かせるべく、勝機を探る。

「孤立をしないために、1人がアタックしたらサポートは3枚で。ボールをキープして、キープして…。大事にいきます」(文:向 風見也)