2019-2020シーズン展望@ウェスタン・カンファレンス編 NBAの新シーズンがついに開幕。今季のウェスタン・カンファレンスの優勝予想は、かつてないほど難しい。過去5年で3度の優勝を果たしているゴールデンステート・ウォリアーズの実力に、陰…

2019-2020シーズン展望@ウェスタン・カンファレンス編

 NBAの新シーズンがついに開幕。今季のウェスタン・カンファレンスの優勝予想は、かつてないほど難しい。過去5年で3度の優勝を果たしているゴールデンステート・ウォリアーズの実力に、陰りが見え始めているからだ。大本命なきウェスタンで、一歩抜け出すチームはどこだ?

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レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの最強デュオが誕生

 5シーズン連続でNBAファイナル進出を果たしていた「絶対王者」ゴールデンステート・ウォリアーズ(57勝25敗/ウェスタン1位)の時代にピリオドが打たれようとしている。

左ひざ前十字じん帯を断裂し、リハビリを続けているクレイ・トンプソン(SG)の復帰は、早くとも来年2月。ケビン・デュラント(ブルックリン・ネッツ/SF)のみならず、アンドレ・イグダーラ(メンフィス・グリズリーズ/SG)もチームを去り、ショーン・リビングストン(PG)は引退した。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

昨季オールスター初出場を果たしたデアンジェロ・ラッセル(PG)が加入したものの、戦力ダウンは確実だ。とはいえ、ステフィン・カリー(SG)とラッセル、そして復帰したトンプソンがスターターに名を連ねれば、そのオフェンス力はリーグ屈指。昨季まで大本命だったウォリアーズは、ダークホースとして今季を迎える。

 では、ウォリアーズ帝国の崩壊に伴い、新たに台頭するチームはどこか? 昨季の成績をベースに考えるなら、本命はデンバー・ナゲッツ(54勝28敗/ウェスタン2位)となるだろうか。

 昨季のカンファレンス・セミファイナル、ナゲッツはポートランド・トレイルブレイザーズ(53勝29敗/ウェスタン3位)に3勝4敗で競り負けた。だが、プレーオフに進出したチームの実力はかなり拮抗している。しかも、第1シードのウォリアーズ、第3シードのトレイルブレイザーズ、そして第4シードだったヒューストン・ロケッツ(53勝29敗)までもが今季、スターターを大きく変化させている。

 そんななか、ナゲッツはエースのニコラ・ヨキッチ(C)をはじめ、スターターは昨季と変わらない。今オフには身体能力が高く、ディフェンスに定評のあるジェラミ・グラント(SF)も獲得した。さらに、腰の手術で昨季全休に終わったものの、新人王候補だったマイケル・ポーターJr.(PF)も戦線復帰する。

 ナゲッツの選手層の厚さは、一気に増した。プレシーズンゲームを4戦4勝で終え、好調のままレギュラーシーズンに突入する。ナゲッツが新王者の座に就く可能性は十分だ。

 ただ、昨季から大幅に戦力を上積みしたチームが、その王座をあっさりと奪う可能性もある。その場合、浮上するのがロサンゼルスを本拠地とする2チームだ。

 ロサンゼルス・クリッパーズ(48勝34敗/ウェスタン8位)は、昨季ファイナルMVPを獲得したカワイ・レナード(SF)と、キャリアハイ(平均28.0得点)のシーズンを送ったポール・ジョージ(SF)、ふたりのスーパースターを同時に獲得した。このビッグニュースにより、新生クリッパーズがカンファレンス制覇に一番近いところにいると予想する識者も多い。

 ジョージは肩の手術明けで、復帰は11月と言われている。レナードは「ジョージの獲得をクリッパーズへの移籍の条件にした」という経緯があるだけに、ふたりが揃ってプレーする姿が待ち遠しい。

 対するロサンゼルス・レイカーズ(37勝45敗/ウェスタン10位)は、リーグ屈指のビッグマンであるアンソニー・デイビス(PF)を獲得した。レブロン・ジェームズ(SF)とのデュオは、NBAの歴史を振り返っても最強クラスと言っていいだろう。

 アメリカ代表候補にも選ばれていたカイル・クーズマ(PF)は左足の故障のために復帰時期が未定。新加入のデマーカス・カズンズ(C)も左ひざ前十字じん帯断裂で今季絶望。マイナス面も多いが、デイビス、ジャベール・マギー(C)、ドワイト・ハワード(C)を揃えるインサイド陣は強烈だ。

 そしてなにより、レブロンが34歳となり、明らかにスピードは全盛期のそれではない。残された時間を考えれば、カンファレンス制覇に手が届く距離にいる今季は、是が非でも勝ち切りたいはず。

 一方、派手さはないものの、堅実な補強で注目すべきは古豪ユタ・ジャズ(50勝32敗/ウェスタン5位)だ。ボヤン・ボグダノビッチ(SF)やジェフ・グリーン(SF)など、補強では名より実を取った。さらに、リッキー・ルビオ(フェニックス・サンズ/PG)を放出し、マイク・コンリー(PG)を獲得。司令塔の強化にも成功している。

 また、今夏のワールドカップでアメリカ代表は7位に甘んじたものの、チームUSAのエースとなった3年目のドノバン・ミッチェル(SG)はひと皮むけた印象を受ける。カール・マローン&ジョン・ストックトンの伝説のデュオがチームを牽引し、ジャズが最後にカンファレンスを制したのは1998年。22年ぶりのファイナル進出も視界に入る。

 そのジャズとは対照的に、ギャンブル的な補強をしたのがロケッツではないだろうか。クリス・ポール(オクラホマシティ・サンダー/PG)を放出し、ラッセル・ウエストブルック(PG)を獲得。プレーオフ進出は濃厚だが、ジェームズ・ハーデン(SG)&ウエストブルックのデュオがどんなケミストリーを見せるかによって、チームの明暗はくっきりと分かれそうだ。

「魅惑的なデュオ」という面では、ダラス・マーベリックス(33勝49敗/ウェスタン14位)も負けていない。昨季新人王のルカ・ドンチッチ(SF)と、左ひざ前十字じん帯断裂から復帰する「221cmのオールラウンダー」クリスタプス・ポルジンギス(PF)のユーロ出身デュオの活躍次第では、4シーズンぶりのプレーオフ進出、さらにはその先も見えてくるだろう。

 ちなみに、マーベリックスの一員としてプレシーズンゲーム3試合に出場した馬場雄大(SG)は、マーベリックス傘下のテキサス・レジェンズと契約。今季はGリーグ(※)でプレーしながらNBAを目指すことになった。

※Gリーグ=NBAゲータレードリーグの略称。将来のNBA選手を育成する目的で発足。

 馬場はプレシーズンゲームで、そのスピードが十分通用することを証明し、ミスの少ない安定したプレーぶりを披露した。しかし、NBAという狭き門をこじ開けるには、無難なプレーでは足りず、代えのきかない武器をアピールする必要がある。這い上がるために馬場がGリーグでどんな武器を磨くのか、興味深い。

 一方、メンフィス・グリズリーズ(33勝49敗/ウェスタン12位)との本契約を狙う、2ウェイ契約(※)2年目の渡邊雄太(SG)は、プレシーズンゲームの限られたプレータイムのなかで果敢にアピールした。必見だったのが、10月16日に行なわれたサンダー戦の第4クォーターに決めたダブルクラッチ。このプレーはNBAオフィシャルサイトの「Top10 Plays of the Night」で第7位にランクインするほどインパクトが大きかった。

※2ウェイ契約=NBAチームの傘下にあるGリーグでプレーしながら、最大45日間だけNBAのロスターに登録が可能な制度。

 今季は若手中心でチームの再建期に突入しているグリズリーズ。渡邊にもチャンスが巡ってくる瞬間が必ずあるはず。そのチャンスを確実にモノにしたいところだ。

 ウォリアーズ時代が幕を降ろし、混沌の新時代が訪れるのか、それとも予想外なチームの新たな長期政権が始まるのか……。今季のウェスタン・カンファレンスは間違いなく大きな変化が起きるシーズンとなりそうだ。