そろそろドラフト会議の話題が出るようになった。今年は佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)と2人の高校生が注目の的になりそうだ。2人ともプロ志望届を出した。

 現在のドラフト制度では1位指名選手だけが各球団の入札となっている。2位以下は下位球団から指名するウエーバー制だ。

 毎年、1位指名が重複した選手は「くじ引き」で交渉権を得る球団が決まる。ドラフト制度は様々に変化したが、「くじ引き」は1965年の導入年から行われていた。

 ドラフトといえば「くじ引き」という印象も強いが、これは日本だけの風景だ。

 MLBのドラフトは完全ウエーバー制で、前年の下位球団から順番に選手を指名していく。先に指名した球団に交渉権があるから、「くじ引き」はありえない。そもそも「会議」といっても日本のように12球団代表が一堂に会するのではなくオンライン会議だから、くじなど引けない。

「くじ運」を高めるためにお参り。

「くじ引き」は、「運」で決まる。人智ではどうしようもないはずだが、日本では「くじ運」を高めるために球団幹部が揃って神社にお参りに行ったり、「くじ運」が強い人をわざわざ連れてきたりする。

 評論家の中にも「パ・リーグばっかり当たりくじを引き当てる」と、なにか裏でもあるかのような言い方をする人もいるが、本当にそうなのか、調べてみた。

 現在のように、高校、大学、社会人の区別なく一括で選手を指名するようになったのは2008年からだ。それ以降、昨年まで11回のドラフトでの1位指名が重複した際のくじ引きの勝敗である。ハズレ1位以降でのくじ引き結果も含むが、ハズレ1位以降で単独指名になった結果は含まない。

近年で最も強運・不運なのは……。

1位:千葉ロッテマリーンズ
8勝4敗 勝率.667
◯獲得
伊志嶺翔大、藤岡貴裕、松永昂大、石川歩、平沢大河、佐々木千隼、安田尚憲、藤原恭大
●ハズレ
斎藤佑樹、藤浪晋太郎、田中正義、清宮幸太郎

2位:埼玉西武ライオンズ
3勝2敗 勝率.600
◯獲得
菊池雄星、大石達也、増田達至
●ハズレ
東浜巨、田嶋大樹

3位:中日ドラゴンズ
5勝4敗 勝率.556
◯獲得
野本圭、高橋周平、小笠原慎之介、柳裕也、根尾昂
●ハズレ
菊池雄星、松井裕樹、高橋純平、中村奨成

4位:東北楽天ゴールデンイーグルス
6勝8敗 勝率.429
◯獲得
藤原紘通、塩見貴洋、森雄大、松井裕樹、安楽智大、辰己涼介
●ハズレ
野本圭、菊池雄星、大石達也、藤岡貴裕、平沢大河、村上宗隆、清宮幸太郎、藤原恭大

5位:広島東洋カープ
3勝6敗 勝率.333
◯獲得
大瀬良大地、中村奨成、小園海斗
●ハズレ
大石達也、増田達至、森雄大、有原航平、佐々木千隼、田中正義

6位:北海道日本ハムファイターズ
4勝9敗 勝率.308
◯獲得
斎藤佑樹、菅野智之(入団せず)、有原航平、清宮幸太郎
●ハズレ
菊池雄星、岩貞祐太、柿田裕太、松井裕樹、小笠原慎之介、高橋純平、佐々木千隼、田中正義、根尾昂

6位:横浜DeNAベイスターズ
4勝9敗 勝率.308
◯獲得
松本啓二朗、柿田裕太、山崎康晃、上茶谷大河
●ハズレ
大石達也、松本竜也、藤岡貴裕、東浜巨、松井裕樹、有原航平、佐々木千隼、柳裕也、小園海斗

8位:阪神タイガース
4勝12敗 勝率.250
◯獲得
藤浪晋太郎、岩貞祐太、高山俊、馬場皐輔
●ハズレ
藤原紘通、松本啓二朗、菊池雄星、大石達也、柿田裕太、大瀬良大地、山崎康晃、有原航平、安田尚憲、清宮幸太郎、辰己涼介、藤原恭大

9位:福岡ソフトバンクホークス
3勝9敗 勝率.250
◯獲得
東浜巨、高橋純平、田中正義
●ハズレ
大田泰示、斎藤佑樹、杉浦稔大、松井裕樹、馬場皐輔、安田尚憲、清宮幸太郎、辰己涼介、小園海斗

10位:東京ヤクルトスワローズ
3勝11敗 勝率.214 
◯獲得
山田哲人、杉浦稔大、村上宗隆
●ハズレ
菊池雄星、塩見貴洋、斎藤佑樹、高橋周平、藤浪晋太郎、大瀬良大地、安楽智大、高山俊、清宮幸太郎、上茶谷大河、根尾昂

11位:読売ジャイアンツ
2勝8敗 勝率.200
◯獲得
大田泰示、松本竜也
●ハズレ
菅野智之、石川歩、佐々木千隼、田中正義、村上宗隆、清宮幸太郎、辰己涼介、根尾昂

12位:オリックス・バファローズ
1勝7敗 勝率.125
◯獲得
田嶋大樹
●ハズレ
山田哲人、伊志嶺翔大、大石達也、高橋周平、松永昂大、藤浪晋太郎、小園海斗

 パ・リーグ通算では25勝39敗、勝率.391、セ・リーグは21勝50敗、勝率.296。確かにパのほうがくじ運が強いように思える。

 また、西武や中日のように競合が予想される選手をあまり指名しない球団も確率が高いようだ。

各球団の「競争率」を見てみると。

 もう少し踏み込んで見てみよう。各球団が獲得した選手の「競争率」の平均を出してみる。2球団が指名すれば2倍、3球団なら3倍だ。

1.西武 4.67倍(3人 14球団)
2.日本ハム 4.25倍(4人 17球団)
3.ソフトバンク 3.67倍(3人 11球団)
4.広島 3.00倍(3人 9球団)
5.楽天 2.83倍(6人 17球団)
6.ロッテ 2.75倍(8人 22球団)
7.中日 2.60倍(5人 13球団)
8.阪神 2.50倍(4人 10球団)
9.ヤクルト 2.33倍(3人 7球団)
10.DeNA 2.25倍(4人 9球団)
11.巨人 2.00倍(2人 4球団)
11.オリックス 2.00倍(1人 2球団)

 西武は競争率6倍の大石達也と菊池雄星を見事引き当てた。日本ハムは7倍の清宮幸太郎と4倍の有原航平、斎藤佑樹の交渉権を得た。またソフトバンクも3倍の高橋純平と5倍の田中正義の当たりくじを引いている。

ロッテは倍率が低めだったりする。

 それぞれのリーグの競争率を見ると、パは3.32倍(25人/83球団)、セは2.48倍(21人/55球団)だった。

 ロッテのように指名が重複しそうな選手を避けて、倍率が低めの選手を指名しているチームもあるが、倍率で見てもパのほうが優勢だ。

「交流戦でパが強いのは、ドラフトのくじ運がいいからだ」なんていう評論家もいる。ドラ1選手だけで試合をしているわけではないから、牽強付会だとは思うが、現時点でパのくじ運が強いのは間違いない。

 こうして、くじ引きで取れなかった選手の顔ぶれを見ているとため息が出てくる。各チームのファンはこの顔ぶれを見渡して、「あの選手も、この選手も、うちのチームに入る可能性があったんだ!」と思うことだろう。

くじで獲得→活躍確定ではない。

 もう1つ注目すべきなのは、くじ引きまでして獲得した選手が、必ずしも活躍するわけではないこと。

 巨人はここ11回のドラフトで、くじ引きで獲得したのは、2008年の大田泰示(東海大相模)と、2011年の松本竜也(英明)の2人だけ。大田は巨人では芽が出ず、今や日本ハムの主力選手、そして松本は野球賭博事件で退団した。

 西武では6倍の競争率で引き当てた大石達也も先ごろ戦力外になっただけに、入団以降の活躍まではなかなかわからないものである。

 佐々木朗希、奥川恭伸も重複指名になるだろうが、高倍率をかいくぐってどの球団が引き当てるのだろうか?
 

(「酒の肴に野球の記録」広尾晃 = 文)