専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第225回 ハンディキャップについての話は、これまでも何度か取り上げてきましたが、今回はプロとアマのハンデの違いを比べてみたいと思います。 そもそもプロにハンデはあるのか? で…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第225回

 ハンディキャップについての話は、これまでも何度か取り上げてきましたが、今回はプロとアマのハンデの違いを比べてみたいと思います。

 そもそもプロにハンデはあるのか? ですが、それは「ハンデゼロ」という意味ではあると思います。

 トーナメントプロの上位選手は、試合で1日3~4アンダーは出しますよね。もちろん、厳しいコースセッティングのプレーにおいて、ですよ。そうなると、通常営業のコースのレギュラーティーで回れば、18ホールで7~8アンダーぐらいは簡単に出るんじゃないですか。場合によっては、ふた桁アンダーもあり得るでしょうね。

 一方、トーナメントに出場できないような、さほど活躍していないプロは、業界のコンペなどに顔を出したりしますが、レギュラーティーで回って、75とか、76とか。ひどいと、80台だったりします。そういうのを目の当たりにすると、「おいおい、プロでしょ」と思ったりもします。

 同じプロゴルファーでも、シード権のあるトーナメントプロと、資格だけ持っているプロとでは、実力に相当な差があります。要は、同じプロでもプラスハンデ5くらいからハンデ9ぐらいまでの選手がいて、試合となれば、それをひと括りにして、「ハンデゼロ」扱いで戦っているのです。

 だから当然、コンペにプロがゲストで来た時は、ハンデゼロ(あるいはプラスハンデ)です。ハンデをもらうプロはいません。それが、プロのプライドなのでしょう。

 ところで、日本にプロゴルファーはどれぐらい存在しているのでしょうか。最近は、男女合わせて毎年50~70人ぐらいがプロになっており、ティーチングプロも含めると、全体で4000~5000人ぐらいいると言われています。

 その中で、QTなどに出てトーナメントの出場を目指しているのが、1500人前後。残りの3000人ぐらいのプロは、ほぼ現役引退状態にあるか、シニア入り待ちとか、レッスンプロであるとか、あるいはゴルフ関連の仕事に従事している、といった感じです。

 現役プロが1500人いても、トーナメントで名前が出るのは、男女それぞれ100人未満です。そもそもトーナメントでは、予選を通過しないと賞金がもらえませんからね。マジで、厳しい世界です。

 賞金が出るプロは、男女ともに毎試合60名ほど。5000人のプロがいるとして、およそ2%のプロしか賞金がもらえないのです。

 もちろんトーナメントの賞金以外にも、スポンサーをはじめ、イベントや営業、レッスンなど、さまざまな収入源がありますけどね。

 プロゴルファーの生活は厳しい反面、とんでもない問題を起こさない限り、永久に資格をはく奪されないので、その点は「いいな」とも思います。

 野球の場合、ドラフトや入団テストを経て、プロ野球選手になりますが、引退すれば、元プロという扱いですからね。

 実際問題、どうしてゴルフだけ、ず~っと「プロ」と名乗れるのか?

 それは、シニアツアーがあるからです。とくに現在は、シルバー人口が増えています。そうした状況にあって、昔活躍した往年の選手が50歳を過ぎたら、また活躍できる舞台が整っているのです。

 今後、さらなるシニアツアーの隆盛によって、PGA競技のグランドシニア(60歳以上)やゴールドシニア(68歳以上)の人気が高まって増えていけば、完全に死ぬまで「プロ」ですね。

 とまあ、プロの栄光と厳しさにも触れてきましたが、話を戻して、ここからはアマチュアのハンデの話に移ります。20年ぐらい前に、アマチュアのハンディキャップの表記基準が微妙に変わりました。

 アマチュアゴルファーでハンディキャップを取得している方は、おおよそどこかしらのゴルフ倶楽部に所属していました。だから当初は、ハンディキャップと言えば、ほとんどがクラブハンデでした。

 クラブハンデでは、JGA(日本ゴルフ協会)のハンデを参考にしつつも、月例競技などの成績を考慮して、「あなたは、今回の競技で優勝したので、2階級特進。ハンデ15を13とする」みたいなことがありました。

 また、たとえ競技で優勝したとしても、クラブのハンディキャップ委員が協議して、「いやいや、この人は成績にムラがある。ハンデを上げるかどうかは、もうひと場所、様子を見ましょう」って、まるで大相撲の横綱審議委員会みたいなことも行なわれていました。

 そういうクラブハンデは、一旦シングルになると、ハンデが下がることはなかなかありませんでした。

 それはなぜか?

 シングルプレーヤーは名誉ですから、誰もふた桁ハンデには戻りたくないわけです。そこで、シングルプレーヤーになると、多くの人がそれ以降、成績のいい時しかスコアを提出しなかったり、「調子が悪い」と言って競技にも参加しなくなったりして、その結果、ハンデが下がらなかったのです。

 ところが、そういう名誉シングルの在り方に疑問を呈する人が増え、20年ぐらい前から、「アマチュアゴルファーのハンデは、現在の実力を測るもの」とし、スコアを提出しない者は下がることになりました。クラブハンデも、JGAハンデと連動するようになって、流動的に判断すると決まったのです。

 ちょうどその頃、私はメンバーをやめるぐらいのタイミングで、ハンデが勝手にどんどん下がっていったのを覚えています。ハンデ12でAクラスだったのが、3カ月後にはハンデ13、さらに3カ月後にはハンデ14と落ちていきました。

 大きな競技で優勝したおかげでハンデ12になったので、燃え尽きてしまったのもありますが、最後は自分のハンデを見ていません。たぶん、ハンデ18ぐらいになっていたんじゃないでしょうか。

 さて、プロゴルファーの厳しさについて先に触れましたが、その際、ゴルファーは一旦プロになったら、永久に「プロ」を名乗れるという話をしました。じゃあ、「プロ」という永久称号と同じように、アマチュアも「最高ハンデ」という称号が欲しいですよね。

 私は、個人的に3カ月だけ9.7というシングルハンデになったことがあります。今は外見からしてヘボですが、元シングルだったことは間違いありません。そういうアマチュアゴルファーの長年の功績に関して、顕彰する制度があってもいいんじゃないか、と思うわけです。

 そうしないと、アマチュアは「ヘボに生まれて、ヘボで死ぬ」ことになります。それは、あまりにも寂しいです……。


アマチュアゴルファーにも最高ハンデ時の

「称号」とかあったらいいですよね...

 話は変わって、最近大きなコンペがあり、ハンデを提出する欄に、プライベートハンデ18で提出しました。最高時はプライベートハンデ9でしたけど、ハンデ9なんて書いていると、まったく入賞できませんから……。

 実はちょっと前に、知り合いがハンデを下げて15と書いて、堂々とコンペで入賞していたんです。その時は、「なんだよ、おまえはゴルファーとしてプライドはないのかよ」と憤慨したものです。

 そんな自分が、今度はハンデ18で申請するんだから、いやほんと面目ないというか……。ゴルフに対して、考えが変わったというか、プライドがなくなったと言いますか……。

 う~ん、アマチュアのハンデに関して、正直よくわからなくなりました。

「昔は、キャバ嬢をブイブイ言わせてモテた」と言うのは、年寄りの自慢ですかね? そう考えると、「昔は、シングルだった」と言うのも、年寄りの自慢になってしまいます。

 何はともあれ、外国の軍人さんは、勲章をもらって胸元に飾りますよね。それは、命をかけて祖国を守った証です。

 同様に、ゴルフにおいても、オヤジたちのバトルとして、戦った証があってもいいのではないでしょうか。

 とっくにメンバーをやめている鶴舞カントリー倶楽部の理事長杯で、決勝進出した時に頂いた記念のタグ。後世大事に、今もキャディーバッグにぶら下げています。

 男は、みんなソルジャーです。あのゴルフ場で戦った、活き活きとした自分の姿が忘れられないのでしょうね。