昨季限りで引退するまで32年間の現役生活を送り、数々の記録を打ち立ててきた元中日の“レジェンド左腕”山本昌氏は、菅野について「(現在のNPBで)力は抜けている」と高く評価する。■レジェンド左腕が高く評価、菅野は現在のNPBで「力が抜けている…
昨季限りで引退するまで32年間の現役生活を送り、数々の記録を打ち立ててきた元中日の“レジェンド左腕”山本昌氏は、菅野について「(現在のNPBで)力は抜けている」と高く評価する。
■レジェンド左腕が高く評価、菅野は現在のNPBで「力が抜けている」
巨人の菅野智之投手は今季、開幕当初から圧倒的な投球を見せた。降板後に同点に追いつかれることや援護に恵まれないことも多く、勝ち星は思うように伸びなかったが、10試合目の登板となった5月27日の阪神戦を終えた時点では防御率0.56と圧巻の数字をマーク。6月17日のロッテ戦まで防御率0点台をキープした。
その後、同24日のDeNA戦での9失点や登録抹消での再調整もあり、ここまで20試合登板で7勝5敗。防御率は1.70となっているが、それでもリーグトップの数字(2位は広島ジョンソンの2.37)。菅野が現在の日本球界をリードする存在であることは確かだ。
昨季限りで引退するまで32年間の現役生活を送り、数々の記録を打ち立ててきた元中日の“レジェンド左腕”山本昌氏は、菅野について「(現在のNPBで)力は抜けている」と高く評価する。さらに、野球日本代表「侍ジャパン」のエースになるべき存在だと断言。「今、日本から海外(MLB)に強力なピッチャーが何人か行ってますけど、そういう投手たちが(侍ジャパンに)入ってきても今の菅野なら、ヒケを取らない」。能力、実力だけでなく、精神面の充実ぶりも、褒め称える理由の一つだ。
「非常に責任感が強くて、考え方も立派です。春にインタビューさせてもらいましたけど、春の時点でナンバーワンと僕は断言してましたから。話を聞いてもしっかりしてますし、自覚もありますから」
■春季キャンプで菅野を視察、3球投げた時点で「なるほど。もういいや」
春季キャンプ中の投球練習の視察は「3球で終わりましたね」と笑う。「凄いなと思いました。見る必要ないなと思いました」。それだけ圧倒的なボールを投げていたという。
「球がすごかったので。その日は菅野と内海のインタビューがあったのですが、『これは菅野凄いや』と思って。(キャンプの時点で)ちょっと内海は心配だったので、(ブルペンでは)内海の方を少し多めに見たんです。菅野はキャッチボールからずっと見ていて、どうかなと思ったら、ブルペンに入ったら良くなったので。『なるほど。もういいや』と」
わずか3球で“レジェンド”を唸らせるほど、ブルペンの内容は際立っていた。
では、何が変わったのか。昨年も防御率1.91の好成績を残した右腕だったが、10勝11敗と負け越しに終わった。その経験が、さらなる成長に繋がったという。現在は春先より数字を落としているものの、昨季から防御率をさらに向上させる可能性は高い。再び0点台に近づいていけば、黒星先行でシーズンを終わることはないだろう。
「去年も素晴らしい防御率なんですけど、おそらくあの防御率で勝ち越せてないというのは、大事なところで打たれていると。そういうところを非常に本人も反省したんじゃないかなと思いますね。(今季は)指の強化をしている。それ自体が直接、今年の活躍につながったかどうかというのは分かりませんけども、(昨季の)あの防御率で2桁勝った中で、何が必要かをしっかり考えて、自分で取り組んでいる姿勢というのは素晴らしいなと思いますね。そういう意識があるだけで、他のものもついてくるんじゃないかと私は思いましたので」
■「ストレートの格がまた1つ上がり、さらに平均点が上がった」
防御率1.91という数字は、投手として満足感を覚えてもおかしくない数字だ。しかし、菅野は違った。自身の投球を突き詰め、さらなる成長を目指した。その向上心こそが、最大の武器なのかもしれない。「指の強化が今年の活躍につながったかは分からない」と話した山本氏だが、その効果は実際に見て取れるという。
「力は出ていると思いますね。変化球のキレは元々いいですし、『これ』といったボール、『これが決め球』というのではなくて、すべてが90点以上の投手と見えます。何かが100点の投手ではなくて、すべてを90点以上、平均点が高い投手と見えます。そういう面でストレートの格がまた1つ上がったと思うので、さらに平均点が上がったということだと思いますね」
巨人は23日から始まった首位・広島との3連戦で初戦に勝利。7ゲーム差は、まだ追いつける数字だ。菅野は、連勝したい24日の第2戦で先発する。エースがチームを勝たせる投球を続けることで、大逆転Vへの可能性は間違いなく膨らんでいく。ここから真価が問われる。