2日目を終えて、首位と5打差の通算7アンダー。「すべてが噛み合えば爆発はあるかも」と述べていた渋野日向子は3日目、1番のパー5で幸先よくバーディーを奪う。見る側に、”すべてが噛み合うかもかもしれない”との淡い期待感を抱かせる好スタートを…

  2日目を終えて、首位と5打差の通算7アンダー。「すべてが噛み合えば爆発はあるかも」と述べていた渋野日向子は3日目、1番のパー5で幸先よくバーディーを奪う。見る側に、”すべてが噛み合うかもかもしれない”との淡い期待感を抱かせる好スタートを切った--。



3日目を終えて、通算9アンダー、6位の渋野日向子

 日本女子オープン3日目。舞台となるCOCOPA RESORT CLUB 白山ヴィレッジゴルフコース QUEENコース(三重県)には、10月だというのに真夏を思わせる熱い日差しが容赦なく照りつけていた。それでも、1万人を超える大ギャラリーにとって幸いしたのは、コースにほぼ一日中、強風が吹き続けたことだ。日差しを遮る場所が少なく、逃げ場のない環境のなかで、この風は救いだった。

 反対に、選手には災いした。全体のスコアを眺めれば、スコアは大方伸び悩んでいた。この日、イーブンで回った選手の順位は上がる傾向にあった。

 渋野も、3番のパー3で風の影響を受けることになった。ピンに向かっていったショットはグリーン左に流されて深いラフへ。そこをボギーとすると、続く4番(パー4)もバーディーパットを打ちすぎて、返しのパーパットをショートしボギー。早くもスタート時のスコアを凹ますことになった。

「3番(のボギー)は攻めた結果なので、ある程度納得していますが、4番(のボギー)は……」と、渋野にとって、まさに痛恨の連続ボギーだった。

 さらに、前日(2日目)はイーグル逃しのOKバーディーを奪った6番パー5でもボギー。渋野の名前は、リーダーボードから消えた。

 7番パー4では、セカンドをピンハイ1.5mにつけるも、再びバーディーパットを打ちすぎ。パーを獲るのが精一杯だった。そして、8番(パー3)も同様のパターンでパー。 

「前半パットに苦しんで、まあイライラしていましたね。1mぐらいのバーディーパットもことごとく外して……。『なんでやねん』と、ひとりでぶつぶつ言いながらプレーしていました」

 転機になったのは、1ピン強の距離から、キツいフックラインをジャストタッチでカップインさせた13番(パー4)のバーディーだ。

「難しいラインだったんですけれど、距離感バッチリで入ってくれたんで、そこで本当に気分が変わりました。ホッとしたし、ひと安心できたし、気持ちを切り替えることができました」

 勢いに乗って、続く14番のロングホールもバーディーを奪った。

 渋野のイケイケモードが全開になった理由は、まだある。14番のグリーン脇に設置されていたリーダーボードに、6アンダーになった自分の名前が再掲示されたこと。自らの目前で名前が入れ替わると、俄然やる気が湧いたに違いない。

 その時、トップは大里桃子で通算14アンダー。ユ・ソヨン、畑岡奈紗、岡山絵里、ペ・ヒギョンの4人が通算11アンダーで、それを追う展開。連続バーディーを奪ってスタート時の7アンダーに戻した渋野は、大西葵らとともに7位タイ集団を形成していた。

 トップとの差は、スタート時の5打差から7打差に広がったが、順位は9位タイからじわりと上昇。コースの状況に対応できている選手の数が少なくなっていることを、それは意味していた。

 渋野がこの日、”今日イチ”というべきシーンを披露したのは、およそ3mのバーディーパットを外し、ギャラリーの大きなため息に包まれた15番グリーンの次だ。

 16番パー3。高い弾道を描いたティーショットは、ピンに真っすぐ向かっていって、ドスン。ピンの根本、約20㎝のところに鈍い音を立てて着弾すると、グリーンを囲む大ギャラリーが沸いた。151ヤードの距離を、6番アイアンで狙ったショットだった。

 ピンに結びつけられた旗はこの時、激しく靡(なび)いていた。旗が引き千切られそうな勢いで。それほどの強風がビュービューと吹き荒れるなか、ボールがピンの根本に止まる、その静と動。そのコントラストには、高級感があふれ出ていた。

「(ホールインワンには)もうちょっと、でした。どうせなら、『入れよ!』という感じでしたけど、キャディーさんと『パターが入らないならショットでがんばろう』と話をしていた矢先に生まれたショットなので、本当によかったな、と」

 通算8アンダーで迎えた最終18番は、500ヤードのパー5。驚かされたのは、渋野のティーショットだ。風に乗ったせいもあるかもしれないが、勢いよく放たれたドローボールは、(ここまでは飛んで来ないだろうと設定されている)ギャラリーがコースを横切る道の、その先まで飛んでいった。

 しかも、そのすぐ横には池が張り出していて、飛ばす行為には大きなリスクを伴っていた。しかし、渋野はそれをもろともせず、果敢にドライバーを振り抜いた。2オンさせて、イーグルを奪うために。

 セカンドショットは、グリーンのカラーだったものの、2オンには成功したも同然だった。イーグルパットが決まれば、ついにふた桁アンダーに届くところまできた。

「ボギーを打ち続けていても、ショットは悪くなかったので、このスコアで上がれたのだと思います」とは、ラウンド後の渋野の言葉。そのとおり、ショットは上々で、グリーンをきっちり捉えていた。あとは、パットが決まれば、つまり噛み合えれば、前日のコメントどおりの爆発は可能だった。

 18番のイーグルパットもそうだ。なんと、ショートしてしまったのである。

「カップをオーバーさせたかったのに……。それは『情けない』と思いながらも、最後はバーディーを奪えて、明日につながるゴルフはできたかな、と。(最後のイーグルパットは)もちろん入れたかったですよ。あれ、入れたらカッコよかったですよね。明日(最終日)に残しておきます」

 渋野は、少なくとも見ているこちらよりも楽観的だ。日本女子オープンという大一番なのに、必要以上にがっかりせず、朗らかでいられる--そういうところが、渋野の魅力である。

 自信のほども垣間見える。通算15アンダーまで伸ばした首位の大里と畑岡とは6打差。通算13アンダーとした昨年の覇者、ユ・ソヨンとは4打差。

「嚙み合えば、(逆転可能な)それぐらいのビッグスコアが出そうなコースではありますが……。まあ、上位の顔ぶれが顔ぶれですからね……」

 さらなる強風が吹いても、実力派の2人、畑岡とユ・ソヨンが自滅することはないだろう。渋野は自分でいくしかない。攻めるのみ、である。

 最終日、1番のバーディー発進はマストになる。