今年で52回目となる日本女子オープン(10月3日~6日/三重県)。 練習ラウンド後に優勝スコアを訊ねられると、「余裕で20アンダーとかいきそうですね」と答えていた渋野日向子。2日目を終えたスコアは、通算7アンダーだった。 首位は、ペ・ヒギ…

 今年で52回目となる日本女子オープン(10月3日~6日/三重県)。

 練習ラウンド後に優勝スコアを訊ねられると、「余裕で20アンダーとかいきそうですね」と答えていた渋野日向子。2日目を終えたスコアは、通算7アンダーだった。

 首位は、ペ・ヒギョンで通算12アンダー。以下、大里桃子が通算11アンダー、ユ・ソヨンと畑岡奈紗が通算10アンダーで続くが、実際に優勝の行方は、通算20アンダーをめぐる争いの気配を見せている。



2日目を終えて通算7アンダー、9位タイの渋野日向子

 日本女子オープンと言えば、”ロースコアの争い”と決まっていたのは過去の話か。一昨年、畑岡が通算20アンダーで優勝すると、昨年もユ・ソヨンが通算15アンダーで頂点に立って、ハイスコアの争いに一転。今年もその流れが続いている。あるいは、さらに加速しているような感じだ。

 今年の会場、COCOPA RESORT CLUB 白山ヴィレッジゴルフコース QUEENコースは、ラフこそ浅くないが、フェアウェーは広大。2日目は、早朝に降った雨の影響で、グリーンも止まりやすい条件になっていた。

 ユ・ソヨン、畑岡という過去2大会の優勝者とともに、インの10番から朝7時21分にスタートした渋野は、いきなりそこでバーディーを飾り、スコアを6アンダーに伸ばした。幸先のいいスタートを切ったかに思われたが、続く11番でボギー。再び5アンダーに。

 以降、前半のスコアは伸び悩んだ。スコアを伸ばす同伴者に置いていかれそうになっていた。

「(同伴者2人との差は)一番はパッティングかと。私が何でもないところから3パットするところを、(2人は)OKパーにしたり、バーディーパットを入れてきたりしたので、そうしたところに(差を)感じました」とは、試合後の渋野の言葉だ。

 この日、イーブンで迎えたアウトの4番もそうだった。残り140ヤードのセカンドを6番アイアンで打った渋野は、6~7mの距離につけるも、3パットのボギー。バーディーパットを強く打ち過ぎてしまった感じだった。手堅くパーで収めたユ・ソヨンとは3打差、畑岡との差は5打差に開いた。

 この日のハイライトは、ここからだった。

 続く5番は、3人とも惜しいバーディーパット外しのパーも、迎えた2オンを狙える6番パー5で、それぞれがギャラリーを沸かせた。

 まず魅せたのは、海外メジャー2勝の実力者ユ・ソヨン。ピン手前に着弾した第2打は、一度ピン奥まで転がっていくも、傾斜に沿って戻ってきた。ボールはカップをかすめ、「アルバトロスか!?」とグリーンを囲む観衆から一瞬、歓声が上がった。結果は、難なくイーグルである。

 一方、負けじと2オンに成功し、イーグルパットを狙った渋野は、手堅く刻んだ畑岡とともにバーディーだった。

 7番パー4は、ユ・ソヨンと渋野がバーディー。差はなかなか詰まらない。

 ちなみにこの時、パーで終わった畑岡から「ナイスバーディー」と声をかけられた渋野は、「思わず『Thank You!』と答えてしまった」という。「アメリカでやっているような気分になってしまって……。あとで(畑岡には)『間違えた』と言いました(笑)」

 通算10アンダーの畑岡とユ・ソヨンに対して、渋野は通算6アンダー。7番グリーン脇に設置されたリーダーボードに表示されていたのは、通算7アンダーまで。渋野の名前は、そこに掲示されていなかった。

 畑岡、ユ・ソヨンの上には、さらに2人の名前が掲示されていた。ペ・ヒギョンと大里。ラウンド後の会見で、他の選手のスコアが伸びているのは気になっていましたか? と問われた渋野はこう答えた。

「気になってましたねぇ~。大里桃子の名前が一番に目に止まったのですが、それで『やべぇな、やべぇな』と思って(笑)。親友の名前がボードに上がっていると、自分も『がんばらなければ』と思いますし、(3日目に親友と)2サムで回れたら面白いんだろうなと思ってがんばったんですけど、全然届きませんでした」

 とはいえ、親友の好スコアに発奮したのか、続く8番のショートで、渋野はピン手前約1mにつけるナイスショットを放つ。この組、唯一のバーディーを決めて、通算7アンダーとした。

 3連続バーディーで迎えた最終9番ホールは、273ヤードと1オンが狙える距離の短いパー4だ。渋野の4連続バーディーなるか、期待がかかった。

 渋野がキャディーバッグから抜いたのは、ドライバーだった。刻まずに1オンを狙いにいったパー4と言えば、想起するのは、全英女子オープン最終日の12番だ。そこで、1オンを成功させたことで、渋野の勢いは加速することになった。

「この日はティーが前だったので(初日は328ヤードの設定)、1オンも狙えるホールで、やっぱり1Wしかないと。キャディーさんとも話が合ったので、迷わずドライバーを持ちました」

 結果は、グリーン手前。ボールは、ピンまで約10ヤードの地点に止まった。

「1オンしたかったですけど、あのピン手前の位置も悪くないので、寄せようと思えば、寄せられる距離ではありました」

 しかし、56度のウエッジで打ったアプローチは寄らなかった。

「あそこまで寄せていたら、『チップインは狙わないと』と思って。グリーンがちょっと下り傾斜だったので、それもわかっていて打ったんですけど、やっぱりパンチが入りましたね。1打であそこまで持ってきておきながら、そこから3打も打つか!? と……」

 結局、およそ3m弱のバーディーパットは入らず、渋野は2日間トータル7アンダー、9位タイでフィニッシュした。

「最終ホールを取れなかったのは、悔いが残ります。けど、残り2日間あるので、まだチャンスはあると思います。残り2日で、今日までのスコア以上のスコアを出さないとトップ争いできないと思うので、2日間、しっかり攻めていきたいと思います。すべてかみ合えば、爆発できるかとは思います」

 首位と5打差。優勝候補のユ・ソヨン、畑岡らとは3打差だ。しかし、渋野の表情に慌てた様子はなかった。ラウンド中も、世界的な実力者2人に負けないオーラを発していた。渋野の言葉ではないけれど、一瞬、アメリカツアーを見ているような錯覚にも陥った。

--アメリカツアー参戦は?

「現実的になるかもしれませんね。すぐとは言えないけど、『将来的には』と思うようになっています。最近、海外ツアーでもっと自分を強くしたいとか、やっぱり海外の選手ともコミュニケーションをとってみたりとか、英語も喋れるようになりたいし……。奈紗ちゃんが、海外に行って英語が喋れるようになったというのを聞いて、羨ましいと思ったし。

 あと、(9月の日本女子プロ)選手権のセッティングに、私が全然対応できなかった時に、海外で経験している奈紗ちゃんがすごく強かったので、そうした経験がないと『上位にはいけない』とすごく感じたし……。そういう意味では、奈紗ちゃんの存在は大きいと思います」

 畑岡vs渋野。3日目は別の組で、お互いは見えざる関係になるが、2人の争いにはとくと目を凝らしたい。