昨年は58試に登板して2勝4敗、防御率1.92で新人最多記録の37セーブを記録。セ・リーグを席巻したプロ2年目の右腕は、なぜ苦しんでいるのか。どんな“壁”にぶち当たっているのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野…

昨年は58試に登板して2勝4敗、防御率1.92で新人最多記録の37セーブを記録。セ・リーグを席巻したプロ2年目の右腕は、なぜ苦しんでいるのか。どんな“壁”にぶち当たっているのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「ボールの質の問題」と指摘する。

■2年目の不調にあえぐ山﨑、原因は「ボールの質の問題」

 DeNAの守護神・山﨑康晃投手が厳しいシーズンを送っている。シーズン前半から3者凡退に抑えることができず、ルーキーイヤーの昨年のような絶対的守護神とは言えなかったが、何とか成績をキープ。しかし、8月に入ってから急降下。7月終了時点で1.69だった防御率は、12日の広島戦で3.77まで低下した。8日ぶりの登板となった21日の中日戦は打者2人を7球で仕留めてセーブを記録したものの、ここまで45試合登板で2勝5敗27セーブ、防御率3.71となっている。

 昨年は58試に登板して2勝4敗、防御率1.92で新人最多記録の37セーブを記録。セ・リーグを席巻したプロ2年目の右腕は、なぜ苦しんでいるのか。どんな“壁”にぶち当たっているのか。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜の4球団で捕手としてプレーした野球解説者の野口寿浩氏は「ボールの質の問題」と指摘する。

「真っ直ぐが走らない。スピードガンも出ないし、バッターも手元で速さを感じていない。ツーシームも変化量が少ないです。ツーシームも、もちろん低めにしっかりコントロールできれば問題ないのですが、高めからくる機会も多いですし、あの落差しかないと、打者からすればチャンスボールになります。去年の変化量があれば別ですが…。対戦(相手)が慣れた、ということも理由としてはあると思いますが、全体的にボールの質(の問題)だと思います」

 課題は山﨑康自身にあると分析。実際に、あるセ・リーグの打者は野口氏に「今年の山﨑は真っ直ぐも速くないし、ツーシームも良くないから嫌じゃないです」と話していたという。「全体的に、昨年ほど相手に対して恐怖感を与えられていないのは間違いないです」と言い切る。

■阪神との相性の悪さはCS進出への不安要素に?

 変化は投球フォームにも現れているという。最大の特徴であった「クロスステップ」が、去年とは違うというのだ。

「出始めの頃、クロスステップがどうこうと言われたのですが、今年の投げ方を見ていると、昨年ほどのクロスステップではなくなっています。修整しようとしたのか、もしくは他の理由でそうなっているのかは分かりませんが。それが、投げづらさに影響しているのかもしれません。真っ直ぐが走らないことを考えると、本人にしか分からない細かいところがずれているのだと思います」

 怪我をしやすいと言われるクロスステップだが、山﨑康が意図的に修正してきたのならば、調子を取り戻すためにはさらなる調整が必要になるかもしれない。

 DeNAは現在、クライマックスシリーズ(CS)進出圏のリーグ3位につける。4位の阪神とは3.5ゲーム差。だが、このライバルに6試合登板で0勝2敗3セーブながら防御率15.00と打ち込まれている。Aクラス入りへ、今後の不安要素の1つとなりかねない。

「特に阪神打線は、山﨑のことをカモにしています。中でもゴメスは、4打数4安打2本塁打と完璧に打ってます。ゴメスは山﨑が出てきたらラッキー、と思うでしょうし、阪神戦ではラミレス監督も山﨑の起用方法を考えなければならないかもしれません」

 疲労もあるだろう。野口氏は「去年、新人で開幕直後から抑えとして起用され、夏場に少し休みましたが、ほぼフルシーズンを戦い抜きました。そして2年目の今年も、同様に起用されています。ルーキーイヤーから連続でクローザーをしている選手はほとんどいません。こういう重責を担っているのですから、体もメンタルも負荷は高いと思います」と言う。

■新人から2年連続での活躍は難しいが…「ラミレス監督も簡単には休ませられない」

 過去の例を見てみると、1990年に西武でデビューした潮崎哲也は、鹿取義隆とともにダブルストッパーを務め、43試合登板で7勝4敗8セーブ、防御率1.84の好成績を残した。2年目も45試合登板で10勝3敗5セーブながら、防御率は4.48と大きく数字を落としている。また、同年に中日で50試合登板、4勝5敗31セーブ、防御率3.26でセ・リーグの最優秀救援投手に輝いた与田剛は、2年目は29試合の登板(0勝3敗2セーブ、防御率3.18)に終わった。さらに、2003年に広島で40試合登板、3勝3敗25セーブの成績を残した永川勝浩も、2年目は22試合の登板に終わり、3勝4敗4セーブ、防御率7.99と苦しんだ。

「そういうことが要因で、自分で思ったような真っ直ぐが行っていない可能性も十分あります。また、去年は夏場に中畑監督が少し休ませましたが、今年はチームが3位争いをしているので、ラミレス監督も簡単には休ませられないと思います」

 山﨑康晃が必要不可欠な戦力だからこそ、チームとしても悩ましいところだ。

「このシーズンの善し悪しが来年につながれば、これから先もクローザーとしてやっていけると思います。体も大きいタイプではないですし、頑張ってほしいですね」

 この苦しみを乗り越えれば、チームにとっても、そして山﨑康自身にとっても、明るい未来が待っている。まずは今季のCS進出へ、「小さな大魔神」の完全復活が待たれる。