連日、日本各地で熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ。9月30日には日本代表と同じ予選プールAの対戦国、スコットランド代表(世界ランキング9位)とサモア代表(同15位)が兵庫・神戸市御崎公園球技場で激突した。スコットランド代…

 連日、日本各地で熱戦が繰り広げられているラグビーワールドカップ。9月30日には日本代表と同じ予選プールAの対戦国、スコットランド代表(世界ランキング9位)とサモア代表(同15位)が兵庫・神戸市御崎公園球技場で激突した。



スコットランド代表に完敗を喫し、ピッチに座り込むサモア代表

 ワールドカップ初戦、スコットランド代表がアイルランド代表に3-27で力負けしたのに対し、サモア代表はロシア代表に34-9と快勝した。日本代表は10月5日にサモア代表と、10月13日にスコットランド代表と対戦する。それだけに、このカードは大いに注目が集まった。

 両チームは前回大会も、予選プールで対戦している。その時はスコットランド代表がサモア代表の猛追をかわし、36-33で勝利を飾っている。

 バグパイプの音色が響くなか、27,586人の大観衆が集まった会場は熱気があふれていた。試合は開始早々に動き、8分にスコットランド代表がPG(ペナルティゴール)で先制する。しかし、その後はともにハンドリングミスが目立ち、なかなか試合は動かなくなった。

 ハンドリングミスが多かったのは、屋根付きスタジアムの密閉された環境で、かつ湿気も高かったのが理由かもしれない。サモア代表キャプテンのNo.8(ナンバーエイト)ジャック・ラムが試合後、「みんなが汗をかいて、(それが滑って)ボールが石鹸のようだった」と言うほどのコンディションだった。

 そんな環境のなかでも、格の違いを見せたのがスコットランド代表のBK陣だ。司令塔のSO(スタンドオフ)フィン・ラッセルはこう振り返る。

「汗でボールが滑りやすいコンディションだったので、キッキングゲームにしたほうがいいと思った」

 その判断が試合を動かした。前半、29分、SH(スクラフハーム)グレイグ・レイドローのハイパントキックを、大型WTB(ウイング)ショーン・マイトランドがキャッチしてチャンスを作る。さらに逆サイドへラッセルがハイパントキックすると、そのボールを確保するや再びラッセルがクロスキック。そのボールをWTBマイトランドがノーバウンドでキャッチし、サモア代表からトライを奪った。

 続く33分にも、ラッセルが起点となってトライが生まれる。ラッセルのパスダミーからFL(フランカー)ジェイミー・リッチーが抜け出し、それをレイドローが中央にトライ。前半終了間際にはFB(フルバック)スチュアート・ホッグが50メートルを越えるDG(ドロップゴール)も決めて、会場を沸かせた。

 前半残り10分ほどで、スコットランド代表が一気に試合を動かした。結果、20-0と大きくリードしてハーフタイムとなる。

 後半、意地を見せるサモア代表がフィジカルを前面に押し出してアタックを試みる。しかし、スコットランド代表のディフェンスも粘り強く、なかなかゴールラインを割らせない。

 すると後半16分、セットプレーで優勢だったスコットランド代表がモールを押し込み、相手のペナルティトライを誘って27-0。その後、4トライ以上のボーナスポイントを狙うスコットランド代表と、何とか1トライを返したいサモア代表がぶつかり合い、激しい攻防を見せる。

 そして迎えた34分、左サイドのWTBマイトランドがゴールライン手前から滑り込むようにしてトライを狙った。「(成功率は)フィフティー(50%)フィフティーだった」。ボールはマイトランドの手からこぼれたが、サモア代表WTBエド・フィドウの危険なタックルがなければトライだったとレフェリーは判断し、ペナルティトライの判定になった。

 最終スコアは34-0。スコットランド代表はサモア代表を零封し、さらに4トライ以上のボーナスポイントも加えて勝ち点5を獲得した。

 試合後、スコットランド代表のグレガー・タウンゼントHC(ヘッドコーチ)は、「(サモア代表の)大きな男たちに、情熱を持って何度もビッグタックルをした」と、ディフェンス面を手放しで褒めた。今後の日程は、中8日で10月9日にロシア代表戦、その4日後の10月13日に日本代表戦が控えている。「ふたつの試合を同時に準備して、日本代表戦に勝つ」と意気込んだ。

 一方、サモア代表は次の試合、中4日で10月5日に日本代表と対戦する。日本代表は中6日でサモ代表戦を迎えるため、日程的には日本代表が有利だろう。

 ラム主将が「日本について分析する時間はほとんどなかったが、スコットランド代表戦を振り返って、日本戦の作戦を練りたい」と言えば、サントリーやサンウルブズでもプレーしたSOトゥシ・ピシは「日本の選手はみんなクオリティが高い。中4日でそう変わることはないので、フィジカルとメンタルをケアしていきたい」と話すにとどまった。

 スコットランド代表戦でも見えたように、サモア代表のFWはフィジカルに長けているものの、攻守の切り替えは遅く、暑さのせいもあって足が止まるシーンが多かった。日本代表としてはボールを大きく動かし、キックで相手の裏を狙って何度も走らせ、相手FWの体力を奪いたい。

 日本代表に勝つために、ピシは「ボールを確実にキープする。持っておくことが大事」と言っていた。サモア代表はFWをしっかりと前に出し、ピシやFBティム・ナナイ=ウィリアムズがボールを運び、外のスペースからトライするのが狙いだろう。

 その流れを寸断するためにも、日本代表はアイルランド代表戦のような粘り強いディフェンス、激しいタックルが必須だ。そして、スクラムとモールで優位に立つことができれば、試合を有利に進めることができる。

 初戦のロシア代表戦でHO(フッカー)モトゥ・マトゥウとCTB(センター)レイ・リーローが危険なタックルを犯して3試合の出場停止となったために、サモア代表の主力ふたりは予選プールに出場できない。また、スコットランド代表戦でイエローカード2枚をもらって退場(レッドカード)となったエースWTBエド・フィドウも、次の日本代表戦は出場できない見通しだ。

 個の力で戦うシーンが目立ったサモア代表に対し、「ONE TEAM」をスローガンに掲げる日本代表がチーム一丸となって戦うことができれば、足もとをすくわれることはないはず。決勝トーナメント進出を考えると、サモア代表戦では4トライ以上のボーナスポイントも獲得しておきたい。

 サモア戦は10月5日の土曜日、19時30分から愛知・豊田スタジアムで行なわれる。