選手のために。 日本のバスケ界のために。 自らが先頭に立ち、熱い情熱を持って道を切り開く。 女子バスケ界のレジェンド、元日本代表の大神雄子氏(36)。 現在トヨタ自動車アンテロープスのアシスタントコーチとしてチームを支えながら3人制のバス…

選手のために。
日本のバスケ界のために。
自らが先頭に立ち、熱い情熱を持って道を切り開く。

女子バスケ界のレジェンド、元日本代表の大神雄子氏(36)。
現在トヨタ自動車アンテロープスのアシスタントコーチとしてチームを支えながら3人制のバスケットボール3×3(スリーエックススリー)日本代表のサポートコーチを務めている。

東京で新たな歴史を刻んだ3×3

2020年東京五輪の新種目となっている3人制のバスケットボール3×3。その国際大会のひとつ、「FIBA3×3ウーマンズシリーズ東京大会2019」が9月21日と22日にMEGAWEBトヨタシティショウケースMEGASTAGEエリアで行われた。この国際大会が日本で開催されるのは初の試みだった。

世界5カ国が出場、日本からはA代表(馬瓜ステファニー・三好南穂・篠崎澪・内野智香英)とU-23代表(東藤なな子・尾崎早弥子・関ななみ・山本麻衣)の2チームが戦いに挑んだ。共に予選リーグを通過、決勝トーナメントへ駒を進めた。

FIBA3×3ウーマンズシリーズ東京大会 多くのお客さんが訪れた

22日の準決勝ではU-23がオランダと対戦、両者譲らず一進一退の攻防が続いた。残り10秒で日本は2点差まで追い上げる粘りを見せたが惜敗。A代表もオーストラリアと対戦し21-14、高さで上回る相手を抑えることができず残念ながら準決勝敗退となった。

A代表として大会に出場した馬瓜ステファニー選手(トヨタ自動車アンテロープス)

試合後、選手達は一様に「もちろん試合に負けたことは悔しいです。でもいつも海外でやっているアウェイ感は全くなくこんなにも日本の応援に後押しされながらプレーをすることができて本当に楽しかったです」充実感を口にした。

今大会のA代表(写真左から馬瓜ステファニー選手・内野智香英選手・三好南穂選手・篠崎澪選手)

こういった気持ちを選手たちに感じてもらえる「機会」を作りたい。実はこの国際大会を東京へ招致したのがサポートコーチを務める大神雄子氏だった。「気持ちだけで始めた大会だった」と大神氏は振り返ったがその熱い思いは確実に形に結びついた。

今大会のオーガナイザー兼代表サポートコーチを務めた大神雄子氏

全ては選手のために

2018年3月に選手を引退しコーチとして新たな扉を開いた時、貫きたい思いがあった。

「選手に寄り添うことだけは絶対に忘れたくない」

3人制のバスケットボールはまだ歴史が浅く、国際大会の数が世界で見ても少ないという現状がある。東京五輪で、日本は開催国枠として出場が決定しているがその代表選手として出場するには国際大会に出場しポイントを取ることが必要不可欠となってくる。「もう少しポイントを取りたい。3×3をもっと多くの人に知ってもらいたい」選手と会話をする中で感じた思いが大神氏を突き動かした。

常に選手たちの気持ちを考える

競技自体が広く認知されていないということもあり、3人制は準備もままならないまま本番の大会を迎えることも少なくない。5人制であればしっかりと逆算をして遠征や合宿が組まれる一方で3人制は2日前に集合し準備期間がないまま、結果を求められるという現実があった。

“選手だけが悔しい思いをしているのではないか、選手だけの責任にするのは可哀想だと思う。誰がその機会を作ってあげるのか、どこが作るのか”

自分が動く。

今年6月にオランダで開催されたワールドカップを見てそう決意したという大神氏。そこから約3ヶ月、調整や交渉を重ね続け、何とか大会招致にこぎつけた。肩書はFIBA3×3ウーマンズシリーズ東京大会オーガナイザー兼日本代表サポートコーチ。

「今流行りの二刀流みたいですね」

さらりと本人は振り返ったが大会当日、朝からコートの設営やスタンドのイス並べまで自らが積極的に動いた。試合の合間もトランシーバーを片手に大会がスムーズに進むよう尽力する姿が見られた。

バスケ界の発展を願って

2020年東京五輪。
新種目として出場が決定している3×3、その可能性は無限に広がっている。
3人制だけをやっている選手もいれば5人制から挑戦してきている選手もいたりとその形は様々だ。

「5人制からくる選手は日常をぶっこわしてくるからものすごい挑戦だと思うんですよね。こういった機会を作ってあげれば選手たちの恐怖心も取り除いてあげられるのではないかと思います」

小さな大会でも積み重ねていくこと、それこそがバスケットボール界全体の発展にも繋がっていくと大神氏は話す。

今回東京へ招致できたことは大きなステップのひとつにしかすぎない、これからが大事だと自らの気を引き締めた。挑戦の歩みを止めない。これからも大神氏は選手のことを思い、バスケ界の新たな扉を開き続ける。