メジャー3000安打を達成したマーリンズのイチロー外野手は、50歳まで現役続行を表明しているものの、有資格1年目で殿堂入り確実と言われている。■41歳と同い年の2人が持つ共通点、圧倒的な成績と薬物使用疑惑の経歴 メジャー3000安打を達成し…
メジャー3000安打を達成したマーリンズのイチロー外野手は、50歳まで現役続行を表明しているものの、有資格1年目で殿堂入り確実と言われている。
■41歳と同い年の2人が持つ共通点、圧倒的な成績と薬物使用疑惑の経歴
メジャー3000安打を達成したマーリンズのイチロー外野手は、50歳まで現役続行を表明しているものの、有資格1年目で殿堂入り確実と言われている。長い歴史を誇るメジャー史で30人しか到達したことのない金字塔を越したのだから、当然の論調ともいえるだろう。一方、先日シーズン途中で引退したアレックス・ロドリゲス(ヤンキース)、今季限りの引退を表明しているデビッド・オルティス(レッドソックス)が殿堂入りする可能性はどうか。ニューヨーク地元紙「ニューズデイ」のデビッド・レノン記者が興味深いコラムを綴っている。
「アレックス・ロドリゲス、デビッド・オルティスを巡る殿堂議論が面白い」と題したコラムでは、今季で引退し、5年後に殿堂入りの資格を得る2人について検証している。
Aロッドとオルティスには、共通点が2つある。1つは、ともに殿堂入りに相応しい成績を残したこと。そして、もう1つは、MLBが2003年に行った運動能力向上薬(PED)の予備調査で、PEDに陽性反応を示していた事実があることだ。これまでラファエル・パルメイロやマーク・マグワイアなど、PED使用を公に認めた人物、PED使用の疑いが極めて濃厚な人物は、殿堂入りが認められていない。
現時点での2人の成績を簡単に紹介しておこう。Aロッドは、通算打率.295、3115安打、696本塁打、2086打点を記録。一方のオルティスは、通算打率.286、2429安打、531本塁打、1736打点の成績を残している。
■殿堂投票権を持つBBWAA会員は、時代の変遷とともに薬物に寛容になるか?
機密情報だった予備調査の結果がリークされて以来、2人が歩んだ道は大きく分かれた。レッドソックスで3度の世界一を獲得したオルティスは“ビッグパピ”の愛称で親しまれ、地元ボストンを象徴するヒーロー的存在になった。一方のロドリゲスはバイオジェネシスの薬物禍に関連し、2014年には162試合の出場停止処分を受けている。2人のイメージは正反対になったが、ここで記事が指摘しているのは、Aロッドは2014年の処分を受ける前に、薬物の陽性反応は示しておらず、関わった医師が残した書類を証拠に罰せられている事実だ。
記事では、2人の殿堂入りが叶うかもしれない2つの可能性について触れている。1つ目は、2人が有資格1年目となる頃には、殿堂入りを決める投票権を持つ全米野球記者協会(BBWAA)の会員たちが、時代の変遷とともに禁止薬物使用に関してより寛大になり、細かいことにこだわらなくなっている可能性だ。だが、BBWAA幹部のジャック・オコネル氏は「これは世代で変わる問題ではない」と、変化する可能性について否定的考えを示したそうだ。
■現行の投票ルールが変われば、殿堂への門戸は広がる?
もう1つは、投票ルールに修正条項が入る可能性だ。記事では、冒頭から「これはあり得ない」と否定的だが、現在の投票ルールでは「選手の記録、能力、高潔な品位、スポーツマンシップ、人格、チームや選手に対する貢献に基づき投票を行うべし」と明記されている文言を少し変えれば、殿堂への門戸がやや広くなるとしている。どの文言を変えるかというと「高潔な品位、スポーツマンシップ」の2つだ。投票者たちは、PED使用者たちを「品位がなく、スポーツマンシップに欠ける」人物と考える。そこで、この2つの文言を取り除き、純粋に成績だけを見れば、Aロッドやオルティスが殿堂入りする可能性も生まれる。だが、殿堂職員のジョン・シェスタコフスキー氏は「長らく現行ルールで問題なかった」とし、変更の可能性を否定したそうだ。
2人が有資格者となるまで5年の月日があるが、議論はすでにスタートしている。それだけ殿堂が権威と価値あるものと考えられている証拠だろう。こういった議論が沸く中でも、現役引退を宣言する前から殿堂入り確実と言われているイチローは、やはり別格だと言える。