専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第223回 その昔、植木等主演の『日本一のホラ吹き男』(東宝映画/1964年公開)という映画がありました。 植木等演じる主人公の初等(はじめ・ひとし)は、陸上でオリンピック候補…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第223回
その昔、植木等主演の『日本一のホラ吹き男』(東宝映画/1964年公開)という映画がありました。
植木等演じる主人公の初等(はじめ・ひとし)は、陸上でオリンピック候補の有力選手だったが、アキレス腱を切ってその夢を断念。しかし、実家で静養中に先祖の自伝を目にし、「ホラ吹き」と言われながら出世した話に影響されて一念発起。ある日、大企業の社長がゴルフをしているところに無理やり押しかけて、にわかレッスンを開始。それが、偶然功を奏して社長に気に入られ、あの手この手でどんどん出世していく――という痛快なストーリーです。
1964年と言えば、東京オリンピックが開催された年です。その開会式が行なわれる4カ月前の公開ですから、世の中、イケイケどんどんだったのでしょう。
というわけで、来年は2度目の東京オリンピックが開催され、景気も上向きになることでしょう。そこで、”夢よ、もう一度”ということで、ゴルフの持っている底力を再認識してもよろしいかと思います。
ゴルフは社交性があり、出世した男の嗜みとも言われ、オヤジ界では非常に重要なアイテムになっています。そのゴルフで出世する伝統は、現代でも通用するのか、検証してみたいと思います。
(1)オヤジ界ではゴルフが唯一無二の存在
日本の大企業の重役たちは、現在50~60代。「ゴルフ直球世代」みたいなもので、ゴルフ雑誌も50~60歳の読者がメインの購買層になっています。だから、ゴルフを中心とした社交界はいまだ健在です。たとえば、「専務主催のコンペに呼ばれた」などといった、派閥の結束を深める材料としても、ゴルフはまだまだ十分な効力があります。
ゴルフをしている人が少ない40代以下でも、一部社会で成功した人たちは、先人たちの行動を学習して、ゴルフをやっています。ゆえに、ある一部の若者の間では、ゴルフ文化が浸透しているのです。
出世したからって、いきなりヨットに乗る人は珍しいですよね。お金が無茶苦茶かかりますから。でも、ゴルフなら「そこまでお金をかけなくても簡単にできそう」と思って、始めるんですな。そういう意味では、まだまだゴルフが通用する時代なんです。
(2)コンペで人脈作り
人脈作りをしすぎて、失脚したタレントがいましたが、そういうことはほどほどに、ですね。それはそれとして、現在社会においても、いくらIT関連が活況になっているとはいえ、生の人間が触れ合うゴルフコンペは、人脈作りの最適なツールになっています。
主催者側には、「社長と一緒に回らせて」というリクエストがたくさん届きます。そういう情報を整理して、誰と誰を組ませれば、今後のビジネスが円滑に運ぶか――それを見極めて、最適な組み合わせを決めるのが、幹事の腕の見せ所です。
芸能人やスポーツ選手と、新興のIT社長との出会いなんて、業界のコンペじゃあ、頻繁に見られる光景です。実際、何人もコンペで知り合った人を見ています。
そうした場合、もちろん新ビジネスに発展したケースもありますが、ただの遊び友だちになって、IT社長が飲み代を払って、「オレはタレントの○○とマブダチや~」と、自慢して終わっている場合もたくさんあります。これぞ、”闇友だち”なのかなぁ~?
世の中、有名になると、有象無象の人々が近寄ってきます。そういう著名人の名前を利用しようと近づいてくるんですね。そのネームバリューを使って、「なんか儲け話が作れないか」と思っているわけです。
業界のゴルフコンペは、人脈製造機みたいなもので、いろんな人が集い、核分裂して、物凄いパワーを放つこともあります。そう考えると、人脈作りの”ブラックホール”なのかもしれません。
(3)接待ゴルフは「直球勝負」
今は少なくなりましたが、取引先に出した企画が通るか、通らないか。あるいは取引先への営業や提案がまとまるか、まとまらないか。そうしたことが微妙な時、接待を仕掛けることがあります。つまり、「どうしようかな」と迷っている相手側に対して、「誠意を見せよう」と。それが、接待となります。
ゴルフは基本、「接待交際費」という名目で、経費で落とせる場合がほとんどです。だから、ゴルフのみなら、出費の痛手は少ないのです。
あとは、加算されるオプション次第です。贅沢をすれば、きりがありません。ハイヤーの送迎をつけて、プレー後は銀座のクラブで打ち上げまでしたら、ゴルフの何倍もの予算になります。
ただ、仕事の成否にかかわらず、丸一日取引先とゴルフをすると、相手の性格も把握できます。「怒りやすい」「わがまま」「独善的」……って、大方のVIPはそうですが、それにプラスして「平気でズルをする」とか「シモネタが好き」とか、または「押しに弱い」「義理人情に厚い」とか、一緒にラウンドするといろいろなことがわかるので、営業などにおける次の戦略作りに役立てることができます。
(4)ゴルフ部出身の若者
ゴルフ人口が減っている現在だからこそ、ゴルフをやっている若者は貴重な存在です。おかげで、体育会ゴルフ部出身の若者は、就職してから頭角を現しやすいと言われています。幹部連中がゴルフをやるので、接待要員として、需要があるのです。
会社って、見栄もあるから、うまいメンバーもひとりぐらい入れておきたいのです。これが、女子でシングルの腕前なら、もうそれだけで重宝されます。おそらく、連日接待ゴルフに駆り出されるでしょうね。あと、コーチとしての役割もあって、早々に出世コースに乗れるのではないでしょうか。
とはいえ、それは会社の幹部がゴルフをやっている場合のみ、ですよ。社長がゴルフ嫌いで、もっぱら釣りとなったら、釣り好きが重用される……って、漫画『釣りバカ日誌』(小学館)みたいですね。
就職前の学生にとって、そこら辺のマーケットリサーチは重要です。せっかく覚えたゴルフの腕前ですから、志望する会社でゴルフは盛んなのか、そこを調べておくのは大事だと思いますよ。何事も、求められているところで、実力を発揮させましょう。
(5)安倍首相&トランプ大統領の影響
現在の社会においては、日本の安倍晋三首相とアメリカのドナルド・トランプ大統領がゴルフをやっている影響はデカいと思います。
そもそも日米の歴代首脳は、総じてゴルフをやっています。ゆえに今後も、社会で成功した人の嗜みとして、ゴルフは残っていくんじゃないですか。
最近は出世に興味のない人も多いようですが、出世したいなら、今でもゴルフは大きな
「武器」になるかもしれませんね...
何事も、イメージというのは大事です。
苦労して社長になったのだから、「夏は軽井沢でゴルフをする」――そういうことをしたいわけです。ここまでは世間も見慣れた範囲なので、許容範囲です。
ただ、社長になったからって、月旅行するとか、サバゲーやるとか、地下アイドルの応援に行くとか……って言うと、世間から変な注目を浴びるのは確か。
まあ、個人の趣味ですから、こちらからクレームを出すことはありませんけど、それらに比べてゴルフのほうが、座りがいいのは間違いありません。世間にもよく理解され、浸透しています。経費や接待でゴルフをする絵柄が社長キャラにハマるので、安定した人気があるんですな。
令和になって、またゴルフブームになっています。これから、自分の子どもたちにゴルフを教えるのもいいんじゃないですか。教育や素養、趣味ではなくて、”投資”としてゴルフを教えましょう。20年後、大きなリターンが返ってくるかもしれません。
プロを目指すまでもなく、嗜む程度でも、社会で絶大な人気を得られるはずですから。