甲子園で開催されている全国高校野球選手権は、日本では夏の風物詩となっている。日本の夏を彩るイベントは、多くのパ・リーグのスターたちが高校時代に成長を遂げてきた場所だ。■数多くのプロ野球選手を輩出する甲子園、米国では同等の大会は見当たらず… …

甲子園で開催されている全国高校野球選手権は、日本では夏の風物詩となっている。日本の夏を彩るイベントは、多くのパ・リーグのスターたちが高校時代に成長を遂げてきた場所だ。

■数多くのプロ野球選手を輩出する甲子園、米国では同等の大会は見当たらず…

 甲子園で開催されている全国高校野球選手権は、日本では夏の風物詩となっている。日本の夏を彩るイベントは、多くのパ・リーグのスターたちが高校時代に成長を遂げてきた場所だ。プロ野球で活躍する選手たちはもちろん、それを見守るファンにとっても、甲子園とは特別な意味を持つ舞台だろう。

 パ・リーグ、そしてメジャーリーグで活躍している選手も、高校時代に甲子園で全国にその名を轟かせた。北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手、中田翔選手、千葉ロッテマリーンズの涌井秀章投手、埼玉西武ライオンズの菊池雄星投手、そして海を渡ったニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手、テキサス・レンジャースのダルビッシュ有投手などなど、名前を挙げ始めたらキリがないだろう。
 一方、野球大国でもある米国では、高校生が競い合う甲子園のような注目度が高い全国大会は存在しない。米国では私の知る限り州大会、そして隣の州などを巻き込んだ大会は存在するが、「高校最強のチーム」を全国で決める大会はない。

 全国トップを決めるような大会がない代わりに存在するのが、「エリアコード・ゲームズ」と呼ばれるショーケースの場である。スポーツ用品メーカーが協賛となり、気候が温暖なカリフォルニア州で開催される。今年も8月10日から12日まで、ロングビーチでニューバランスが協賛するエリアコード・ゲームズが開催されていた。

■高校球児の実力発揮の場は、MLBスカウトが集まるショーケース

 エリアコード・ゲームズに参加するためには、まずMLBスカウトたちによる推薦でトライアウトに招待される必要がある。そして、各地でトライアウトが開催され、毎年3000人以上が参加する。そこで、8月に開催されるエリアコード・ゲームズに選出される200人ほどの枠を争うのである。

 このようなショーケースの場はいくつか存在し、メジャーリーグのスカウトや首脳陣たちにとっては次世代のメジャーリーガーを一度に見ることができる場である。そういった点では甲子園大会に似た要素はあるかもしれない。

 高校時代を共に過ごした仲間と目指す甲子園ではなく、個人が上の舞台を目指すために足を運ぶ。移動費などの費用はかかってくるものの、広い米国でスカウトの目にさえ留まれば、誰にでもチャンスが訪れる。各MLB球団が各地にスカウトを雇用する所以でもあるだろう。

 米国では高校スポーツは甲子園のような注目度の高い全国大会は存在しないが、大学スポーツにおいては国中が虜になる大会が存在する。それがNCAAバスケットボールトーナメント、俗に言うマーチ・マッドネスだ。毎年3月に開催されており、直訳すれば「3月の狂気」であり、そのすさまじさを物語る。この時期には多くのスポンサー企業がコマーシャルを制作したり、さらに大統領が全米放送のスポーツチャンネルで優勝予想を発表したりするなど、米国国内では大きな盛り上がりを見せる。

■大学全米No.1を決める「カレッジ・ワールドシリーズ」は全米中継

 この大会は州ではなく、各地域のトーナメントを勝ち抜いた大学、さらにはそのシーズンの成績や対戦相手の強弱をもとに組織委員会が定めた評価点数で残りの大学を選定し、合計68チームが出場する。対戦は甲子園のように完全なる抽選ではなく、シーズン中の成績が反映されたシードで決められる。全チームが平等な形でスタートしないからこそのドラマが生まれるのは、この大会の特徴でもある。規模が小さい大学が勝ち進むと、そのチームはたちまちシンデレラチームとして、全米で注目を浴びる。

 大学ではバスケットボールだけではなく、野球でもカレッジ・ワールドシリーズと呼ばれる大会が毎年開催される。毎年6月にネブラスカ州のオマハで開催され、今年も6月18~29日まで熱戦が繰り広げられた。カレッジ・ワールドシリーズもバスケットボールのマーチ・マッドネス同様、スポーツ専用チャンネルで全米中継される。高校時代には甲子園のような国内全体が注目する大会は少ないものの、大学レベルではプロスポーツに近い規模の大会がいくつか存在する。

 米国の高校では州で一番を決めることは大きな意味を持ち、国内全体を熱狂させるものはない。スポーツ大国である米国を見ても、高校生の大会で国全体を熱狂させる日本の「夏の風物詩」・甲子園は、かなり異質、そして際立つ存在であると言えるだろう。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」新川諒●文