世界一流コーチのメソッドで解消するアマチュアゴルファーの悩み(1)――ドライバー編  若き日よりアメリカに渡った吉田洋一郎氏は、「世界ナンバー1のゴルフコーチ」とも称されるデビッド・レッドベター氏ら、およそ100名以上の一流インストラク…

世界一流コーチのメソッドで解消する
アマチュアゴルファーの悩み(1)
――ドライバー編

 若き日よりアメリカに渡った吉田洋一郎氏は、「世界ナンバー1のゴルフコーチ」とも称されるデビッド・レッドベター氏ら、およそ100名以上の一流インストラクターに最先端のゴルフ(レッスン)メソッドを学んできた。

 レッスンのプロが100人いれば、100通りの理論があるのが、ゴルフというスポーツ。本連載では世界のトップゴルファーが取り入れている技術、思考法、トレーニング法を、吉田氏が日本のアマチュアゴルファーのために特化して、伝授する――。

◆レッスン1:ラウンドの前の準備
スルーしがちな朝の練習を欠かさず、
その日の”クセ”をチェックしよう!

 ゴルフ場に到着して、練習をせずにコースに飛び出していくゴルファーは多いのではないでしょうか。しかしながら、世界のインストラクターの中で、ラウンド前の練習を「不要」とアドバイスする人なんていません。

 ひとカゴを打ったぐらいでゴルフが劇的にうまくなることなんてありませんが、準備として身体を温めることは大事ですし、その日、どんな球が出るのかは確認したいところです。

 体調によって、スイングの軌道も、ボールの軌道も変わります。ラウンド前に、20球〜30球を打つことで、その日の自分の”クセ”を把握するのです。

 では、何本のクラブを手にするべきか。私は、できるだけ少ないほうがいいと思っています。スイングの確認をするためのクラブと、気になる(苦手意識のある)クラブ。最長のドライバーや最短のウェッジを含め、計5本もあれば十分でしょう。

 練習場であろうと、コース上であろうと、100%の力を込めてスイングすることは絶対にありません。目一杯の力でクラブを振ろうとすると、どうしても上半身主導のスイングとなってしまいます。

 感覚的には、すべてのショットをだいたい70%〜80%の力で打ちます。ヘッドを走らせるためには、ダウンスイングの際に手の動きを減速させる必要があります。力を込めて、100%の力で打とうとすると、手元が先行することでクラブが遅れ、いわゆる”振り遅れ”となってしまうのです。

 アメリカのLPGAツアーで活躍する畑岡奈紗プロが、ショットの前に2、3回、ジャンプをすることがあります。彼女のようにジャンプすることで重心が下がり、下半身を意識することができるようになります。そうすると、上半身の力が抜け、緊張が和らぎ、本来の力を発揮しやすくなります。

 アマチュアは、どうしても上半身の動きばかり気にして、下半身への意識がおろそかになります。ショットの前に、畑岡プロのようにジャンプしてみるのもいいでしょう。



下半身を意識するため、ショットの前にジャンプするのは効果的

◆レッスン2:ドライバーショットの準備(理論編)
ティーショット(ドライバー)前の素振りでは、
“テーブル払い”で軌道と重心移動の確認を!

 ゴルフを始めたばかりの初心者や、そこそこラウンドしているのに、なかなか「100切り」を達成できないゴルファーにとって、”天敵”となっているのが、ドライバーショット時のスライスではないでしょうか。

 初心者はスイング時、上半身主導で動いてしまいます。すると、クラブ軌道が高いところから低いところへ急激に動く”アウトサイドイン軌道”となり、フェース面が開いた状態で当たってしまうため、スライスとなってしまいます。クラブの軌道とフェースの向きによって、ボールが横回転になってしまうのです。

 ティーショットを曲げて林にでも入れてしまったら、パーオンどころか、ボギーオンすら難しくなり、大叩きにつながります。朝イチのショットで「ファー」と叫ばざるを得ない結果となれば、なんとも滅入った気分のスタートとなってしまいます。その日、最初のドライバーショットこそ、真っ直ぐフェアウェーに運びたいものです。

 初心者にとって最大の悩みであるスライスですが、朝起きたらいきなり治っていた、なんてことは絶対にありません。ただ、ショット前の素振り次第で、避けやすくすることは可能です。

 目の前にテーブルをイメージし、その上をクラブで掃いていくように、フラット(水平)に振ります。決して、机を叩いてしまわないように。スライスしてしまうのは、クラブの軌道がアウトサイドインになっているからです。それを防ぎ、インサイドアウトにクラブが下りてきやすくするための素振りがこの”テーブル払い”です。

 もちろん、水平にクラブを振るこのスイングは、実際にボールを打つスイングの軌道とは異なりますが、それを気にする必要はありません。たとえば、アメリカのPGAツアーで活躍するマット・クーチャーは、ティーショット前の素振りは、インサイドアウトではなく、あえてアウトサイドインに振っています。振り遅れて過度なインサイドアウト軌道になりやすい傾向のあるクーチャーは、あえて自分の悪い癖とは逆のスイングをすることで、本番でやってはいけない動きを意識から消すのです。

 そして、テーブル払いの動きに足を連動させるのが、応用編です。まずはゆっくり、右足をヒールアップし、足踏みをしてバックスイング。次に左足をヒールアップして、踏み込むと同時にクラブをダウンスイングしていきます。足踏みすることによって、動きの順番が適切になり、クラブが加速しやすくなります。

 この時、体重移動や腰の回転など、難しいことを考える必要はありません。二足歩行をしている時に、重心移動や身体の軸を意識することはありませんよね? それはゴルフのスイングでも同じで、両足の動きを連動させることによって、そういったことは自然と生まれるものなのです。

 ポイントは、足の踏み込みと、腕の動きは同時ではなく、必ず足踏みしてから腕を動かすことです。こうした動きを繰り返すことで、スライスの要因となっている上半身主導の動きを割け、下半身主導の動きを身体に覚えさせるのです。

 世界のトッププロであるヘンリク・ステンソンやブルックス・ケプカを指導するピート・コーウェン氏は、「スイング時の重心移動は空手の瓦割りと同じ」と表現しています。左正拳突きがバックスイング、右正拳突きがダウンスイングの動きです。

 スライスに悩むゴルファーも、アウトサイドイン軌道を直さなければいけないことは理解しています。頭では理解していても、なかなか実践できるものではありません。まずは正しい身体の動きを覚えましょう。すると、クラブは自然と適切な軌道で下りてきやすくなるのです。

 ティーショット前のアドバイスをもうひとつ。ショット前の素振りを、実際に打つボールの真横で行なう人が多いと思います。その行為について、私はあまりオススメできません。

 さまざまな技術的なチェックポイントは、打席に入る前に終了して、実際の打席に近い位置では、ルーティンやターゲットに集中したほうがショットの成功率は高まります。

 そして、できることならショット時は無心でありたい。そのためにも、技術的なことを考えて素振りをする際は、そのエリアを別に決めておくことをオススメします。

◆レッスン2:ドライバーショットの準備(実践編)
スイングの基本は上半身主導ではなく、
下半身主導であることを忘れずに!

●テーブル払い


目の前にテーブルをイメージし、その机の上を払うようなイメージで、素振りを繰り返す。スライサーはアドレスに入る前にこの素振りをしよう。ラウンド後半になればなるほど、悪癖は顔を出すので、ランチ休憩後のバックナインこそ、素振りを大事に!

●横から見ると……


ポイントは、必ずクラブは水平に振るということ。この軌道だと、自然とインサイドからクラブがボールをとらえる軌道になる。

×


神主のお祓いのようなスイング軌道は、アウトサイドインの軌道で、これではスライスしやすい。

●足踏みしながらテーブル払い


足踏みをして、両足を連動させながら素振りする。下半身主導のスイングを体得したい。慣れて来たら前方に歩きながらこの素振りをするのもあり!


●悪いパターン


腰が横に逃げるような動きはNG。

●イメージは空手の瓦割り



空手の瓦割りをやってみると、下半身主導の動きをつかみやすい。

◎ワンポイントアドバイス=ボールを凝視しない
 ボールを凝視する必要はない。正しいアドレスと、正しいスイングの軌道ができたら、ボールは見なくても打つことが可能。凝視してしまうと、ボールを点で捉えようという意識が働き、ボールにヘッドを当てにいってしまいます。また、ボールを凝視しすぎると、首が固定され、体の回転に制限がかかることもあります。軌道でボールを捉える感覚を身につけることができたら、ボールの存在は薄まっていき、自然と凝視しなくなるはずです。