「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月26日~男子9月8日・女子7日/ハードコート)大会12日目、男子シングルス準決勝で、第5シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)が世界78位のグ…

「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月26日~男子9月8日・女子7日/ハードコート)大会12日目、男子シングルス準決勝で、第5シードのダニール・メドベージェフ(ロシア)が世界78位のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)と対戦。

メドベージェフが7-6(5)、6-4、6-3のストレートで勝利し、自身初となるグランドスラムの決勝進出を果たした。

勝者メドベージェフは、試合後の記者会見で以下のように話した。

Q:多くの方があなたを悪役として見るようになりました。プロレスを見て育ちましたか?もしそうであれば、そのことが影響したと思われますか?

「おもしろいね。よく覚えていないけれど、6〜7歳の時にプロレスは好きだったんだ。本当の闘いだと思っていたからね。両親からは"なんでこんなものを観ているの?ただのショーなのに"と言われたけど、それでも僕は本物だと信じてたんだ」

「プロレスを見て育ったことが、最近の騒動に関係しているとは思わない。

前にも言ったように、数日前の自分よりも良い人間になりたいと思っているだけだよ」

Q:これだけ数多くの勝利をおさめてきた今、大事なポイントの時にはどのように感じているのでしょうか?特に今日の試合の、1セット目では、グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)はあなたより良いプレーをしていたように見受けられましたが、大事な場面ではあなたがその場を制していましたよね?

「その通りだと思うよ。大事な局面では、"自信"が重要になってくる。特に最初のセットでは、彼のほうがいいプレーをしていた。セットをとれたことは、正直ラッキーだったと思う」

「あの後に、流れが逆転したんだ。その後の2セットは、僕の方がいいプレーをしていた。僕らは高いレベルの戦いをしたと思うよ」

「今日の1セット目の様な、大事な場面でのポイントについて言うと、こういったクレージーなセットや試合を勝ち抜く強さが、今の僕には備わっているように思うんだ。2ヶ月前の僕だったら負けていたと思う。"ウィンブルドン"でダビド・ゴファン(ベルギー)に負けた時のようにね」

「あの試合は、今回と同じ様な戦いだったけれど、あの時は負けたんだ」

Q:「全米オープン」前までの北米での大会で勝ち進んだ時と、「全米オープン」決勝までの戦いに何か違いを感じますか?

「もちろん別物さ。グランドスラムだからね。グランドスラムは5セットマッチだという部分も大きいよ。決勝にたどり着くまでに、より多くのセットを勝たなければならないから。今大会で勝ったセット数は、この前の3大会で買ったセットの合計数くらい戦っている感じがするよ」

「精神的にもとても苦しい。今まで自分に足りなかった部分はそこだと思う。今まで4回戦がグランドスラムでの最高の成績だった。とにかく5セット試合を勝つのがすごく難しいんだ。正しい方向に向かっているのは分かっていたけれど、とにかく全てのセットの、すべてのポイントを戦い抜かなければならない。以前はそれができていなかったんだ」

「だけれど、今週は全てがうまくいっている。何試合も、4セットで勝つことができている。精神的にも体力的にもうまくいっている現れだと思うよ」

Q:「以前はそれができていなかった」と仰いましたが、どのようにしてできるようになったのですか?

「"正しい方向に向かっている"と言ったけれど、何かが足りないとも感じていて、探し続けたんだ。どうやって見つけたかは分からないよ」

「もしかしたら、今年2回厳しい5セットマッチを負けたことが関係しているかもしれない。"全仏オープン"では2-0でリードしていたのに、5セット目をとられてしまった。"ウィンブルドン"でも5セット目をとられて負けてしまったんだ。でも、負けた試合ではあったけれど、それを繰り返してはいけないと思えたことが、大きな経験になった」

Q:数日前、あなたは問題行為で罰金を科されたりしましたが、率直に、より良い人物になりたいと思いますか?

「コート上であっても、コート外であっても僕は大丈夫だと思うよ。(笑)」

Q:私からはあなたはリラックスしていて、笑顔が素敵だと思います。あなたの人物像をご説明頂けますか?

「正直、自分が良い人とか優しい人だとは思わない。穏やかな人間であるとは思うよ。なぜテニスをしている時に、自分の中の悪魔が顔を出すのかは分かない」

「ジュニア時代は特にコート上での態度が悪かった。失格を受けたりはしなかったけれど、ゲームペナルティはしょっちゅう取られていたよ」

「でも、変わろうと努力してきたんだ。何かコート上で間違いを起こした際には、自分自身を見つめる様にしたんだ。実際の自分はこんな人間ではないはずで、なぜこんなことを起こしてしまうのかと自問自答をした。こんなことをする自分では居たくないと言い聞かせたんだ」

「こうした努力はずっと続けているし、だいぶ成長したとも思っている。たまに問題はあるけれど。1週間くらい狂ったことを僕にし続けるくらいのことをしなければ、プライベートでの僕を怒らせることはできないと思うよ。例えば、7日連続で毎朝6時に僕のホテルのドアをノックするとかね。そうした少しは怒るかもしれないけど、普段の僕は穏やかな人間なんだ」

Q:特にあなたの年齢で今年の夏に経験していることを考えると、人生が目まぐるしい早さで展開しているように感じていると思いますが、これまで達成してきたことを振り返る時間はありましたか?またこれまでの成功が、今後のご自分のテニス人生をどのように導いていくとお考えですか?

「まだだね。今年の夏はあっという間に過ぎたようにも、とても長かったようにも感じる。長く感じるのは、多くの試合をしたから。早く感じるのは、あなたが言った様に、落ち着いて"今年はよくやったなあ"と振り返る時間をまだ持てていないからだね」

「できたら日曜日の後にそういう時間が取れるといいと思う。米国での夏の最後の試合になるからね。もちろん奥底では、この4週間で成し得たことが、それまでの功績を上回るくらいに素晴らしいことだということは理解しているよ」

「もう1つ付け加えると、ここで留まりたくないんだ。より良くなる為に、僕は常に頑張るし、毎日ベストであるために努力するつもりだよ」

Q:「観客からブーイングを受けたここ2試合で、あなたがしたことは周知の事実ですが、あなたは観客を味方につけてきているようにも思います。もし、日曜日にもブーイングをされたらどう思いますか?

「驚くと思うけれど、それでもそれをエネルギーに変えてプレーするしかない」

「前にも言ったように、自分がしたことは誇れることではない。2度とやらない様に努力をしている。シンシナティやモントリオールでも言ったように、問題を起こしてしまうこともある。“なんでこうなったんだろう?”と自問自答し、答えは色々あるけれど、とにかく2度とこういった問題を起こさないように努力を続ける」

Q:1セット目と2セット目、3~4回、フットフォールトがありました。あなたは線審を見ることもなく、気にしていないようでしたが。どうやって前に進んだでしょうか?

「今回の"全米オープン"は不思議なんだ。もしかしたら、精神的な疲れがたまっているのか、それとも、ただ集中できていないだけなのか、よく分からない。あなたが言った様に、とにかく試合を勝つために進んでいるだけさ。この2週間で、僕のテニス人生のほとんどのフットフォールトを取られたように思うよ」

「最初の試合で5回くらい取られたのが始まりだ。スタン・ワウリンカ(スイス)との対戦が一番多かったかな。太ももを痛めていて、ラインに集中していなかった。基本的に集中してラインは見てなくても、越えた時は分かる。ワウリンカとの試合では、15回くらいとられたと思う」

Q:(フットフォールトは)キャリア中、常に問題だったのですか?

「いや、それはないと思う。今までの線審がフットフォールトをとりたくなかったのか、この数週間だけなのか?とにかく、前進するしかない。“またやってしまった。次はしっかりとやらないと”と思いながら、セカンドサーブに挑むのさ」

Q:今日はマッチポイントの後ですら、感情をほとんど見せていませんでしたね。こうして感情をコートに持ち込まないスタイルが理想ですか?

「そうだね。でも良い感情は出したと思うよ。"カモン!"とチームを見たりね」

「今シーズン、良い感情も押さえることで、悪い感情も出てこなくなることに気付いたんだ」

「試合終了後の反応に関しては、シンシナティから始めたと試合後のインタビューでも言ったけれど、これが僕のスタイルになるかもしれないね。自分にとってはおかしなことなのだけれど、あまり感情を出さず、"よし、勝った。終わったぞ"という気持ちでチームを見るんだ」

後半記事に続く

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「全米オープン」のメドベージェフ

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images)