「コービーが、私のボックスにいるなんて。しかもキャパニックも。昨年からしたら考えられないことで、奇妙な感じです。アスリートとしても、人としても、コービーのことを尊敬しています」1回戦とは違った戦いを見せて勝利した大坂なおみ ルイ・アームスト…

「コービーが、私のボックスにいるなんて。しかもキャパニックも。昨年からしたら考えられないことで、奇妙な感じです。アスリートとしても、人としても、コービーのことを尊敬しています」



1回戦とは違った戦いを見せて勝利した大坂なおみ

 ルイ・アームストロングスタジアムで大坂なおみの選手ボックスに、NBAバスケットボール元選手のコービー・ブライアントと、NFLアメリカンフットボール選手のコリン・キャパニックが座り、大坂がすばらしいプレーをするたびに拍手を送った。

 2人のスーパースターから応援される大坂もまた、紛れもなく世界的なスターであることを物語る一幕となった。

 USオープン(全米)2回戦で、第1シードの大坂なおみ(WTAランキング1位、8月26日づけ/以下同)は、マグダ・リネッテ(53位、ポーランド)を、6-2、6-4で破り、4年連続で3回戦進出を決めた。

「マグダとは以前対戦したことがあって、よく知っていたので快適に自分のプレーができました。今日はストレスとは無縁でしたね」

 1回戦ではプレーに硬さの見られた大坂だったが、2回戦ではリネッテに対して冷静に自分の作戦を遂行する女王のテニスを披露した。

「もちろん自分の思うようなプレーができない時間帯はあるけれど、何が間違っているのか理解して調整することができました」

 こう振り返った大坂は、フラット系でスピードのあるボールにリズムよく打ってくるリネッテに対して、トップスピンを強くかけたボールを打ち返してペースダウンさせ、ゆったりとしたラリーに持ち込み、ミスを誘う冷静な対応を見せた。サーブもスピードに頼らず、スライスやスピンの回転系を多用し、リネッテのバックサイドを狙ってリターンミスを誘発することに成功した。

 第1セットは、大坂が第4ゲームから2回のブレークに成功して5ゲーム連取。第2セットは、大坂が第2ゲームで一度だけブレークを許すものの、第4ゲームから再び2回のブレークに成功。5ゲーム連取をして勝負を決めた。大坂がパワーやスピードに頼らず、対戦相手によって柔軟に戦術を変える明晰な頭脳プレーが光った。

 今回の全米では、試合後にたくさんの子供たちが、世界1位である大坂にサインを求めてくる。全米開幕直前恒例イベントである”キッズデー”の時にも、大坂が公開練習を終えたあと、たくさんの子供たちが大坂のサインを求めてコートサイドへ集まっていた。

 そんな子供たちに、大坂は感謝とハッピーのメッセージを込めて、時間がある限りサインをして、一緒にセルフィーもしている。ときには、大坂に会えて感激した小さな女の子に優しくハグをしていた。

 大坂もまた、3歳から8歳までニューヨークに住んでいた時に、”キッズデー”にこの会場を訪れていた。

「キッズデーに来たことを昨日のことのように覚えています。お目当ての試合を見る時は、最前列を確保しようとしていました」

 3回戦で大坂は、ワイルドカード(大会推薦枠)で全米初出場のコリ・ガウフ(140位・アメリカ)と初対戦する。15歳のガウフは、今年のウインブルドンで予選から勝ち上がってグランドスラムデビューを果たすと、強敵を次々と倒してベスト16まで進出して一躍時の人になった選手だ。

「彼女(大坂)は驚くべき選手です。(全米の)ディフェンディングチャンピオンで、2回グランドスラムで優勝し、世界ナンバーワンです。まだ21歳。私たちは2人共とても若いけど、私の方が少し新顔ね。彼女に対してどれだけゲームを戦えるか、自分でも見てみたいし、もちろん勝ちたい。バトルを楽しみたい」(ガウフ)

 2017年全米ジュニアで準優勝した時、ガウフはわずか13歳。当時から天才少女の呼び声が大きかったが、「彼女は、本当に才能にあふれた女の子」と、大坂も自分より6歳若いガウフとの対戦を心待ちにしている。

 いま、大坂は、世界1位というポジションに執着せず大会に優勝することも考え過ぎないようにしている。そして、「ただ、いいテニスがしたい」という、シンプルなマインドで、頭をクリアにできている。この状態を維持できるのなら、ガウフに対してもベストなテニスを披露できるだろう。颯爽とプレーする大坂の姿は、世界中の子供たちのまぶたに焼きつけられるに違いない。