「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月26日~男子9月8日・女子7日/ハードコート)大会第2日は男子シングルスで波乱が相次いだ。第8シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)がアンドレ…

「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月26日~男子9月8日・女子7日/ハードコート)大会第2日は男子シングルスで波乱が相次いだ。第8シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)がアンドレイ・ルブレフ(ロシア)に敗れると、第4シードのドミニク・ティーム(オーストリア)がトーマス・ファビアーノ(イタリア)に敗退。番狂わせの連鎖は止まらず、第9シードのカレン・ハチャノフ(ロシア)もバセック・ポスピショル(カナダ)に敗れてしまう。

25歳のティームと21歳のチチパス、23歳のハチャノフは、22歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)と並んで次の盟主を争う存在であり、ショッキングな初戦敗退だった。

チチパスは今シーズン、全豪で初の4強入りを果たした。4回戦ではロジャー・フェデラー(スイス)を破る番狂わせを演じた。2月にはマルセイユで、4月にはエストリルで優勝、マスターズ1000のマドリードではA・ズベレフとラファエル・ナダル(スペイン)を連破して決勝進出(ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に敗れ準優勝)と、春先まで破竹の勢いだった。ところが、全仏の4回戦敗退以降、失速気味だ。

ウィンブルドンは1回戦でファビアーノにフルセットの敗戦。USオープンシリーズに入るとマスターズ1000のモントリオール、同シンシナティと初戦敗退が続き、今大会で3大会連続の初戦負けとなってしまった。もっとも、ルブレフはノーシードとはいえ、17年全米で19歳にして準々決勝進出を果たした実力者であり、この1回戦も互いに力を出し尽くす大熱戦だった。

試合時間3時間54分、総獲得ポイントはルブレフの176に対しチチパスが167と、わずか9ポイント差。チチパスは終盤、リスクの高いショットを連発し、ウィナーは相手の51本を大きく上回る65本にのぼった。リスクを負って攻めたのは、脚にけいれんを起こしたからだ。第4セットは足を引きずりながらの試合となったが、最後まであきらめなかった。4−5と相手に王手をかけられても、ブレークバックで追いつく粘りも見せた。ただ、チチパスが今季、躍進した選手だけに、早い敗退は残念だった。

「もう少し成績を安定させなくてはいけない。今年は最高のスタートが切れた。(全豪は)準決勝だった。今はそれがどれだけ難しいことか理解しているし、こうして負けてしまってがっかりだ。全豪で準決勝、全仏で4回戦、そしてウィンブルドンと全米では1回戦だった。もっといい成績を収めることができたはずだし、来年は、四大大会を通して良いプレーができるように自分を向上させ、大会ごとの成績が大きな曲線を描かないようにしたい」とチチパスは率直に反省を言葉にした。この試合では、タイムバイオレーションの警告を巡って主審とやり合う一幕もあった。試合後の記者会見でも主審への不信感を言葉にした。闘志は一級品、しかし、21歳は試合運びが思うようにいかなくなったときに気持ちを整えるすべをまだ持っていない。

この8月には自己最高のATPランキング5位をマークした。しかし、四大大会では今年の全豪の4強を別にすれば、4回戦進出が2度あるだけ。全米ではまだ3回戦に進んだことがない。素晴らしい才能の持ち主だが、四大大会で力を発揮してこそ「本物」と言える。その数時間後には第4シードのティームが敗れた。ファビアーノはウィンブルドンでも1回戦でチチパスを破った大物食いで、ティームはハードコートが不得意だが、それにしても全仏準優勝者の1回戦敗退は意外だった。彼の成績もチチパスに似ている。全仏では昨年に続く準優勝と力を出しきったが、ウィンブルドン、全米と1回戦敗退が続いた。

A・ズベレフはフルセットで辛勝したが、ハチャノフも敗退。トップを追う2番手グループには受難の日となった。男子テニスはBIG3対「ティーム〜ズベレフ世代」という対立軸で語られることが増えてきたが、四大大会では後者の頼りなさが目立つ。

錦織圭は前日の会見で「あの3人(ジョコビッチ、ナダル、フェデラー)はいまだに違うレベルにいると感じる」と話した。本来、20代はツアーの主軸となるべきだが、30代の「3人」の壁があまりも厚いのも事実だ。とはいえ、錦織世代、さらに「ティーム〜ズベレフ世代」の反抗も見たいものだ。

(秋山英宏)

※写真は左から「全仏オープン」でのティーム、「全豪オープン」でのチチパス、「ATP1000 トロント」でのハチャノフ

(Getty Images)