1回戦が47分終わり、次戦に向けて体力の温存ができた錦織圭 今季グランドスラムの最終戦であるUSオープン(全米テニス)の1回戦で、第7シードの錦織圭(ATPランキング7位、8月26日づけ/以下同)は、マルコ・トルンゲリティ(205位・アルゼ…



1回戦が47分終わり、次戦に向けて体力の温存ができた錦織圭

 今季グランドスラムの最終戦であるUSオープン(全米テニス)の1回戦で、第7シードの錦織圭(ATPランキング7位、8月26日づけ/以下同)は、マルコ・トルンゲリティ(205位・アルゼンチン)と対戦。

 トルンゲリティが1-6、1-4で途中棄権したことにより、錦織が勝利をおさめ、2年連続で2回戦進出を決めた。トルンゲリティは、第1セット1-4の場面で、左の肋骨辺りに違和感を覚え、メディカルタイムアウトをとって治療を受けたが、プレーを続行することができなかった。

 夏の北米ハードコートシーズンの前哨戦で1勝も挙げられなかった錦織は、ニューヨークでどれだけのプレーができるかという不安が残っていたが、それを拭い去る会心のプレーといっていいテニスを披露した。試合時間はわずか47分で、調子がよかっただけに、錦織からは「もう少しプレーを続けたかった」という本音も漏れた。

「ほぼ全部よかったですね。ストロークに関してはあんまり悪いところがなかった。ちょっと微調整を加えればいいかな、ぐらいだった。コート上での感覚はすごくよかったです」

 ただ、錦織のファーストサーブの確率は57%で、ダブルフォールトが4回あり、サーブに関してはそれほどいいできではなかったものの、ファーストサーブでのポイント獲得率は90%と非常に高かった。逆に、トルンゲリティのセカンドサーブのポイント獲得率はわずか21%で、錦織がリターンから優位に立ってポイントにつなげ、ゲームを支配した。

 USオープン開幕前、錦織は2つの不安要素を抱えていた。

 8月中旬に2年4カ月ぶりとなるトップ5に返り咲いた錦織だったが、USオープンの前哨戦では1勝も挙げることができなかった。

 その原因のひとつが、ウィンブルドン以降、断続的に繰り返されたという右ひじの痛みだ。

 前哨戦では右ひじにサポーターをしてのプレーとなり、錦織らしくないグランドストロークのミスが非常に多かった。現在も右ひじの不安は、完全には取り除かれてはいない。

「ひじにはまだ(不安が)ありますね。なかなか完璧には治っていないので、まだ試行錯誤している途中です」

 もうひとつは、シンシナティで錦織が息苦しさから、ドクターを呼んで点鼻薬を使う場面があったことだ。体調に関しては、「たぶん大丈夫だと思います」と、回復していることを強調。フロリダの厳しい暑さの中で2時間練習しても症状は出なかった。

 1回戦は体調がよく、右ひじにサポーターをすることもなく、フォアのウィナー7本を含む14本のウィナーを決め、開幕前にあった不安要素によるプレーへの悪影響は幸いにもなかった。

 今回USオープンの出場は10回目になる錦織だが、実は2008年にUSオープンに初出場してから、”奇数年に結果を残せない”という不思議な記録を残してきた。

 09年と17年は、けがで不出場。11年と13年と15年は、いずれも1回戦負け。つまり、奇数年のUSオープンでは、19年大会で初めて1回戦を突破したということになる。

 もちろん記録に関心のない錦織が知る由もなく、人から伝えられて「本当ですか(笑)」と目を丸くした。

 奇数年の呪縛などまったく意に介していない錦織だが、今夏のUSオープン前哨戦の成績が悪かったことからもポジティブな側面を見つけようとしている。18年も、夏の前哨戦では振るわなかったが、USオープンではベスト4に進出して大きな結果を残した。そのポジティブな経験を、今年の戦いにも活かそうとするのは、錦織流のサバイバル術だ。

「昨年の方が調子は悪かった。昨年と同じような入り方なので、今年も大丈夫かな。自信こそ、そこまでなかったですけど、気楽に1試合目に入れた。もちろん緊張感はありました」

 そして、今一番必要なものが何かを錦織は理解している。

「今、一番欲しいのはやっぱり自信」

 確固たる自信は、今後ラウンドを重ねて強敵に勝つことで、再びついてくるだろう。

 2回戦では、ブラッドリー・クラン(108位、アメリカ)との初対戦が決まった。試合は大会3日目の8月28日に行なわれる予定だ。