不妊に対する東洋医学の考え方不妊に対して考える前に、東洋医学的に妊娠をどのように考えているのか?と言う話が必要ですが、これは長くなってしまうので、別の機会にお話しさせて頂きます。不妊症という表現は、通常は女性に使う表現で、男性に対しては「不…

不妊に対する東洋医学の考え方
不妊に対して考える前に、東洋医学的に妊娠をどのように考えているのか?と言う話が必要ですが、これは長くなってしまうので、別の機会にお話しさせて頂きます。

不妊症という表現は、通常は女性に使う表現で、男性に対しては「不育症」と東洋医学では表現します。通常、大きな子宮筋腫がある、先天的に生殖に関係するホルモンに異常があるなど、器質的な疾患を持っていなければ、2・3年以内には妊娠すると言われます。「不妊」や「不育」には様々な状況が考えられますが、男性も女性も妊娠には、東洋医学的に「腎」の状態が大きく影響します。この「腎」の機能が正常に働くことができず、また、受精のタイミングなどが合わないと妊娠することができません。

【関連記事】腎臓内科医が教える「コレステロール値の注目ポイント」。大切なのは善玉と悪玉の比率

不妊と食生活
年齢的な問題以外で日本の不妊や不育で一番見かけるのが、食生活の不節制によるものです。当然、食べ物だけのせいにする訳ではないのですが、あまりにも飲食が良くないことが多いです。

良く見かけるのは、食養生の世界で言うところの「陰性」の飲食物を多く取り過ぎていることです。具体的には、ケーキ、スナック菓子、アイス、清涼飲料水、くだもの、豆乳など、食べたり飲んだりすることで、体が弛緩しやすいものや、冷えやすいものです。私個人の考えでは、これらのものを絶対食べてはいけないとは思っていませんが、摂りすぎの人が多いです。これらのものを摂りすぎると、東洋医学的な考えでは、男性では精子の活動性が落ちる、女性は精子を引きつける力が弱まり受精しづらくなるとされています。

男性不育
男性の場合、甘いものはあまり食べないと言う方も多いと思います。ただ、肉類などの「陽性」の強い食べものを食べ過ぎていると、反動で「陰性」のものを摂っていることが多く、本人はあまり自覚していなくても、コーヒーに砂糖をたくさん入れていたり、ビールやワインなどのお酒で「陰性」の強いものを摂っている場合があります。

そのため、男性の場合は味の濃い食べものや肉料理など、陽性の食べ物を採り過ぎないようにしていただくことをおすすめします。反動で食べたくなる「陰性」のものを気を付けるよりもやりやすいはずです。

食べ物などの生活習慣は大丈夫と言う場合は、東洋医学的な治療を考えてゆきます。前述した、「腎」の異常、それと過労などにより「気血」が不足している、そして過度なストレスなどから「肝」に異常が出ている場合などがあります。

女性不妊
女性の場合は、前述した「陰性」の飲食物を摂り過ぎの場合が圧倒的に多いです。まずは、思い当たる「陰性」の飲食物を控えることが大事です。
また、元々の体質的に「陰性」が強い場合もあります。この場合は「陽性」の食べ物を少し多めに摂るようにするのですが、簡単なのは毎日味噌汁を作って飲むことです。ここで使う味噌は、自然食品のお店で売っている有機大豆と天然塩で作っている味噌で、ダシは別にちゃんととります。このダシも自然食品のお店に売っています。ただ体質改善には時間を要しますので、あまり焦らないことです。

東洋医学的に治療を考える場合は、男性同様に「腎」の異常、「気血」の不足、そして「衝脈・任脈」の乱れなどがあります。
「衝脈・任脈」とは体に張り巡らされている経絡というものの一つで、生理や妊娠に大きく関わるとされているものです。

不育・不妊と鍼灸治療
鍼灸治療では、体の不具合や体質を判断して治療にあたってゆきます。多くの場合、冷えを伴うことが多いので(これは必ずではありません。人によっては逆に熱くなり過ぎている場合もありますので、やみくもに温めすぎるのはお勧めできません。)、下腹部や腰部を温める治療を併せて行って行きます。また、現在の体の状況から東洋医学的にバランスが取れていない臓腑を見極めて、鍼灸を使って治療にあたってゆきます。多いのは「腎」「肝」、そして女性の場合は「衝脈・任脈」を主体に鍼灸治療をおこなって行きます。

不育や不妊は薬物を使わない鍼灸治療がおススメです。薬物が絶対にいけないとは思いませんが、少ないのに越したことは無いので、上手に鍼灸治療を活用して欲しいです。

東洋医学用語説明
1)臓腑:東洋医学では、身体機能を発現させるための重要な要素を五臓六腑に集約して考えており、五臓とは「肝」「心」「脾」「肺」「腎」のことで、六腑とは「胆」「小腸」「胃」「大腸」「膀胱」「三焦」のこと。現代医学的な内臓とは東洋医学では少し解釈が異なる。また「臓腑」と省略して表現することもある。
2)肝:現代医学的な肝臓とは少し違い、東洋医学では心身共に適度な緊張感で機能するように調節する作用、全身各部へ必要な血液量を分配する機能、胆汁を作る機能を持つ主要臓腑とされる。
3)腎:現代医学的な腎臓とは少し違い、東洋医学では全身における水の調節機能、成長・生殖に関する機能を持つ主要臓腑とされる。
4)任脈:経絡の一つで身体前面の正中線上を走行する経絡である。「任」は「妊」に通じるとされ、特に女性には重要な経絡の一つとされる。
5)衝脈:経絡の一つで身体の前面、および体内を走行する経絡である。衝脈は血海とも呼ばれ、女性にとっては特に重要な経絡の一つとされる。

[文:蓬松(ほうしょう)鍼灸治療院]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

【関連記事】「こむら返り」は体からの危険信号

【関連記事】生活習慣病のトリプルリスクって知ってますか? 「高血圧」「高血糖」「高血中脂質」1つでも当てはまる方は要注意

【関連記事】まずは3キロ!2週間でダイエットを成功させるための4つの手順