ワールドカップを開幕目前に控え、アルゼンチン、ドイツ、チェニジアと3試合の親善試合を行なった日本代表。そこから見えた日本のストロングポイントとウィークポイントとは? 少しの不安とその何倍もの期待を抱かせる3試合だった。 アルゼンチン戦…

 ワールドカップを開幕目前に控え、アルゼンチン、ドイツ、チェニジアと3試合の親善試合を行なった日本代表。そこから見えた日本のストロングポイントとウィークポイントとは?

 少しの不安とその何倍もの期待を抱かせる3試合だった。 



アルゼンチン戦、ドイツ戦の2試合で活躍した八村塁

 8月22日に対戦したアルゼンチンは、世界ランキング5位、2004年のアテネ五輪では金メダルを獲得している古豪だ。

 そんなアルゼンチンを相手に日本は食らいつく。この日の日本は、特段好調だったわけではない。オフェンスはどちらかといえば単調で、ディフェンスでも安易にシュートを打たれるシーンが多かった。これまでの日本代表なら、すぐに二桁点差、20点差と引き離され、試合序盤で戦意喪失してもおかしくない展開だ。

 光ったのは、やはり八村塁(ワシントン・ウィザーズ/SF)。

 八村はチームハイの23得点を記録。しかも大量得点を狙ってシュートを連発したわけではなく、2Pは13本中8本(61.5%)、3Pは3本中1本(33.3%)成功と高確率でシュートを沈めての23得点だ。

 日本はほかにも、渡邊雄太(メンフィス・グリズリーズ/SF)が13得点、馬場雄大(アルバルク東京/SF)が17得点、ニック・ファジーカス(川崎ブレイブサンダース/C)が15点、田中大貴(アルバルク東京/SG)が12点と、5選手が二桁得点を記録。現在の日本代表のエースは八村であってもワンマンチームでは決してない。

 散見した不安点は、大黒柱のひとりファジーカスのウィークポイントが目についた点か。

 過去の日本代表は、外国勢に高さで圧倒され、なす術なく敗れることが多かった。211cmの高さでリバウンドをもぎ取り、圧倒的なスキルで得点を量産するファジーカスは間違いなく日本代表に不可欠な存在だ。しかし、機動力が弱点のファジーカスがディフェンス時にアウトサイドに釣り出されると、オフェンスにイージーな3Pを打たれ、さらにドライブを許してしまうことにつながる。

 オフェンス時も、ファジーカスがインサイドのポジション取りに固執すると、八村や渡邊、馬場らのドライブするスペースを消してしまうシーンが見受けられた。八村とファジーカスの住み分けは課題のひとつだ。

 最終的に、アルゼンチン戦は第4Q残り2分8秒に93-99の6点差に日本が詰め寄るも、そこからアルゼンチンに9連続得点を許し、93-108で敗北。

 八村は、そこに世界との差があると試合後に語った。

「アルゼンチンは、チームも選手も、監督を含めて勝ち方を知っていた。決めるとこを決める。彼らは決めたが、僕たちは決められなかった。この差は経験の差。他の差はそれほどない。これから経験を積んで、学んでいかなければいけない。そして、今日のような試合を忘れてはいけない」

 アルゼンチン戦から2日後のドイツ戦。

 中1日の日本と、前日にチュニジアと戦っていた連戦のドイツとで、コンディションの差や、ワールドカップを控え、勝敗よりも内容を重視するべきタイミングであることを加味しても、過去、ヨーロッパ勢に1度も勝ったことがない日本が世界ランク22位のドイツを86−83で破ったことは快挙でしかない。

 そしてこの試合も、八村がモンスターパフォーマンスを披露。まずは第1Q、日本の16点のうち八村だけで12点を稼ぎ出す。

 八村の勢いは最後まで止まらず、最終的に両チーム最多の31得点を記録。しかも、2Pは16本中10本(62.5%)、3Pは3本中2本(66.7%)という超高確率だった。さらに第4Qの勝負どころで相手エース、デニス・シュローダー(オクラホマシティ・サンダー/PG)のシュートを叩き落とす、値千金のブロックまで決めている。

 ドイツに勝利したものの、より浮き彫りになった課題は日本の3Pへの対応だろう。

 近代バスケにおいて、3Pの重要性は以前よりも増している。これは、成功率50%の2点シュートを決めるよりも、得点が1.5倍の3Pシュートを33%以上の確率で決める方が効率的という考えがベースにある。

 ドイツ戦、日本は15本しかスリーポイントを打てていないが、ドイツは39本のスリーを打っている。これは、「もっとディフェンスのプレッシャーを強めればいい」といった単純な話ではない。どのチームも、いかに3Pを効率よく打つかということを念頭に、オフェンスをデザインし、3Pを打つためのスペースを作るボール回し、スクリーン、シューターの質といった部分で、諸外国の方が一日の長がある。

 3P対策に光明を放ったのが、ドイツ戦翌日のチュニジア戦だった。この試合、八村と篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)/PG)が「チーム状況とコンディション不良」により欠場。篠山の不在もあり、これまで出場機会の少なかった安藤誓哉(アルバルク東京/PG)にプレータイムが与えられることになった。

 この試合、24秒オーバータイムを何度も奪うなど、日本のディフェンスが最も効果的だったのが、安藤誓、田中、馬場、竹内譲次 (PF/アルバルク東京)、竹内公輔 (PF/宇都宮ブレックス)の5人、センター抜きのスモールラインナップだった。

 5人中4人がBリーグ2連覇中のアルバルク東京の選手なため、ディフェンスでのコミュニケーションが成熟していた。

 3Pの重要性と、もうひとつ近代バスケのキーワードになるのが、”スモールラインナップ”だろう。センターを外し、高さで劣るものの機動力のある選手を起用し、スピードとシュート力で相手を凌駕する戦術で、とくにステフィン・カリー(PG)、クレイ・トンプソン(SG)らを擁し、15年から5年連続でNBAファイナルに進出したゴールデンステイト・ウォリアーズのスモールラインナップは”デスラインナップ”と呼ばれ、相手チームの脅威となった。

 前述したアルバルク東京の4選手+竹内公のラインナップに、八村、渡邊を組み合わせることで、機動力に特化したメンバー構成となり、相手チームの3P対策、さらにはアップテンポなリズムにチェンジして、勝負も可能な”ジャパン・デスラインナップ”なる可能性を秘めている。

 日本は、この3試合を1勝2敗の成績で終えたが、ストロングポイントとウィークポイントが明確になったことを考えれば、得たものは限りなく大きい。