シニアデビューから2年。目指していた平昌五輪代表を逃し、変化を求めた昨季も成績が振るわなかった本田真凜は、新たな環境を模索しながら、正念場のシーズンを迎えることになる。全日本フィギュアシニア強化合宿に参加した本田真凜 2018年4月に…

 シニアデビューから2年。目指していた平昌五輪代表を逃し、変化を求めた昨季も成績が振るわなかった本田真凜は、新たな環境を模索しながら、正念場のシーズンを迎えることになる。



全日本フィギュアシニア強化合宿に参加した本田真凜

 2018年4月に、幼少時から指導を受けていた濱田美栄コーチのもとを離れ、ネイサン・チェンら世界のトップスケーターを指導するラファエル・アルトゥニアンコーチに師事するためアメリカに拠点を移したが、今オフからは日本とアメリカを往復することになるという。
 
「学校のこともありますけど、今年はたくさん試合に出たいなと思っています。日本での試合が増えてくるので、やはり試合前後で教えてもらえる先生では本田武史先生がいいなと思い、お願いしました。今回(の日本滞在中)はずっとレッスンしていただいています。

 オフはいつもよりも早めに新しいプログラムを作ったので、それをアイスショーで披露してきて、いまの自分に必要なのは試合に慣れることだと思うので、今年は日本の試合、地方の試合にもたくさん出たいなと思っています」

 ジュニア時代はそこそこの練習をすれば結果が出たというが、やはりシニア転向後はそうはいかなかった。レベルが高く、かかるプレッシャーも違ってくるシニアの試合は、今までと同じやり方では通用しなくなった。

「ジュニアやノービスの時代は、練習よりも試合が楽しみで、試合だけ頑張ろうという感じだったんですけど、シニアに上がってからは、練習と試合で気持ちの部分がすごく違っていて、試合であまりいい演技ができなくなってしまったので、いまはそれを変えていきたいと思っています。お客さんの前で滑ることだったり、試合に出る機会を増やして、演技に自信を持てるようにできればいいなと思っています」
 
 昨季はグランプリ(GP)シリーズのスケートアメリカ8位、フランス杯6位。起死回生を狙った全日本選手権でも課題のジャンプが崩れて自身ワーストの15位に終わった。自信を喪失しながらも、まだまだやるべきことがあると前向きに捉え直したという。アルトゥニアンコーチからは、ジャンプの修正や練習の取り組み方の意識改革には時間が必要だと諭された。

 日本スケート連盟の強化選手からいったんは外されたものの、7月24日の理事会で強化選手Aに復帰。そんな彼女が奮起してどんな成長を見せるのか、注目度は高い。

「練習でうまくいっていないから試合でも駄目だった昨季でしたが、今季は昨季より練習でもうまくいっているので、それを試合で出せるようにして、大きな試合でしっかり発揮できるように、いろいろな試合に出て鍛えていきたいと思います」

 出場試合数を増やすという取り組みが功を奏すかどうかは本人次第だが、やはり課題のジャンプを見てくれるコーチが近くにいる必要がある。そこで頼ったのが、髙橋大輔や宇野昌磨のジャンプコーチでもある本田武史コーチだった。報道陣に公開された7月15日のシニア強化合宿の氷上練習時では、リンクのそばで本田氏からアドバイスをもらう真凜の姿が見られた。

「8月の真ん中くらいまで日本で練習しますが、日本にいる期間は本田武史先生に習っていきます。(昨季は)日本にいる間、いつもコーチなしで練習環境があまりよくなかったんですけど、今は朝6時くらいから関大(のリンク)で滑っていて、いい練習もできていますし、サポートしていただけています。今後の拠点は、アメリカと半々ぐらいになると思います」

 メインコーチは変わらずにアルトゥニアンコーチだが、本田コーチが見る機会が増えることは間違いないようだ。なぜ、本田コーチにジャンプを見てもらうことにしたのか。それは彼女自身が、課題克服には第三者の目が必要だと思ったからだ。

「ジャンプの跳び方をラファエルコーチに習っているなかで、日本にいる間に、自分の(以前の)跳び方にちょっと戻りかけてしまうことがありました。アメリカに帰ってジャンプを直して、日本に来てまたちょっと元に戻ってしまって、またアメリカで直して……ということを繰り返していたんじゃないかなと思ったので、武史先生にお願いしました。同じ言語というのもありますし、すごくわかりやすいし、いま自分がどうなったら跳べないとか、どうなったら跳べるということも伝えながら、今年は半分くらい、見てもらえるようになるんじゃないかなと思っています」

 一方で、多くの試合に出場するということは、それだけの体力と忍耐力が必要になる。一昨季の五輪シーズン、平昌五輪代表になった坂本花織が、10試合近くの試合に出場することで自らを磨き、試合でのメンタルコントロールができるようになったのは記憶に新しいところだ。

「昨季はアメリカにいたので、移動をできるだけ少なくしたいということで、大きな試合にポンポンって出る感じでした。でも、やはり練習と試合では気持ちの部分ですごく違うし、同じ演技をしていても、精神面であまり強くないことを感じました。それを変えるには試合に出て強くするしかないと思うので、個人的にはたくさんの試合に出たいなと思っているんです。出られる限り、全部頑張ります」
 
 今季のプログラムはショートプログラム(SP)が昨季と同じ『セブン・ネーション・アーミー』(振り付けはシェイ=リーン・ボーン氏)で、新しく作ったフリーはローリー・ニコル氏が手がけた『ラ・ラ・ランド』だ。鮮やかなブルーの衣装を身にまとった彼女が、夢を追う主人公のように明るく前向きな姿は、見どころのひとつとなるだろう。

「自分自身も好きな映画で、楽しい音楽のプログラムなので、ひとつひとつのストーリーを感じてもらえるように滑りたいというのと、そこにジャンプをしっかりはめたいというのが今季の目標です。完璧な演技をして、完成したプログラムというのを何回もできるようにしたいなと思います。

 早めにプログラムを作ることができたので、いつも以上に滑り込めていると思うし、ジュニア時代と違って、練習から試合をイメージした意識でやっているので、試合での気持ちを想像して、精神的にいいコンディションで臨めるようにできたらいいなと思っています。楽しいなという気持ちは変わらないですけど、試合では不安な部分もあるので、うまくすべてがはまる時が早く来るように頑張っていきたいです」

 ジャンプの自信を取り戻した暁には、本田真凜本来の滑りのよさが際立ってくるはず。そんな「はまった」演技が1日でも早く見られることを願うばかりだ。