専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第215回 ゴルフというのは長い歴史があり、世界中でプレー人口が何億人もいるメジャースポーツです。それを、単なるオヤジの道楽で「100を切ってよかった」程度の扱いにしておくのは…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第215回

 ゴルフというのは長い歴史があり、世界中でプレー人口が何億人もいるメジャースポーツです。それを、単なるオヤジの道楽で「100を切ってよかった」程度の扱いにしておくのは、もったいない気がします。

 たとえば、ゴルフ全体を鉄道マニアと比較してみてはいかがでしょう。

 鉄道は、各分野にマニアがいて、細分化されています。「乗り鉄」「撮り鉄」「スジ鉄(時刻表のマニア)」「駅弁鉄」「模型鉄」「廃線鉄」……など、際限なくジャンルがあって、それぞれ小宇宙を形成し、その集合体を総称して「鉄道マニア」と言っているのです。

 同様にゴルフも、実はさまざまなジャンルが確立されています。

 ということで、これを機会に複眼的にゴルフを見つめて、より広い知識や、他者を認めるダイバーシティ的ゴルフ観を養ってみてはいかがでしょうか。

 それでは、具体的にゴルフのマニアチックなジャンルはどのようなものがあるのか、紹介していきましょう。

(1)競技マニア
 アマチュアゴルフ界の達人たちが、凌ぎを削る世界です。この上級者たちを「マニア」呼ばわりしていいか疑問ですが、実際は相当な”マニア”ですよ。多くの方は仕事そっちのけで、人生の大半をゴルフに費やしていますからね。

 競技マニアはだいたいシングルハンデ以上で、地区の小さな競技会や予選を経て、全国規模の大会出場を狙います。大きな大会の入賞経験のある方は、「トップアマ」という称号を得ます。ゴルフ雑誌にもしばしば登場し、数々のトロフィーや楯を手にします。

 そういう方々は、おおよそ倶楽部に所属し、そこでクラブチャンピオンを目指したり、クラブ代表に選ばれて挑むクラブ対抗競技に精を出したりします。

 さらに腕が上がると、県アマや、新聞社、雑誌社などが主催するメディア競技に参加して頭角を現します。そうして、関東月例などのトップアマ競技にも参加できるようになり、いつかは日本アマチュア選手権に出場するのが夢、といった感じでしょうか。

 誰もが憧れのトップアマと言えば、なんといっても中部銀次郎さんでしょう。大洋漁業の御曹司、つまり育ちのいいお坊ちゃんですが、ロングヒッターではなかった、というところに惹かれます。

 1964年、愛知カンツリー倶楽部で行なわれた日本アマの決勝。勝負どころとなる14番ロングホールでは、飛ばし屋はティーショットで「アパッチ砦」と呼ばれる右側にある小高い丘越えを狙います。その丘を越えれば、2オンのチャンスがあるからです。

 しかし、そこを中部さんは、あえて左のフェアウェーのとおりに刻み、3オン作戦で見事に優勝を手繰り寄せました……って、もうぉトップアマの伝説自慢ですかぁ~。こういう話、私は大好きですねぇ~。

(2)マスターズマニア
 米ジョージア州のオーガスタナショナルGCで毎年開催される、PGAツアーのメジャートーナメントのマニアですね。このマニアは、おおむね2タイプに分かれます。

 ひとつは、毎年観戦に行くマニアというか、仕事としても行く人です。こういう人は多数いて、おおよそ選手関係者か、スポンサー筋やメーカー関係者、そしてジャーナリストです。いろいろな関係者が「マスターズだけは別格」と言って、毎年現地に訪れるのです。

 古参のジャーナリストになると、もう30回目とかですね。そりゃもう生き字引みたいなもので、初出場の選手に対しては「ようこそ」って感じになりますなぁ~。

 けど、もっとすごいのが、もうひとつのタイプです。一度も現地観戦をしたことがないマニアな人たちです。案外ね、こういう人たちのほうが恐ろしいほどの知識を持っていますから、話を聞くと、ぶったまげますよ。

 私レベルでも、聞きかじりのネタを持っていますよ。

 歴代大統領の中で、最も多くオーガスタナショナルGCでラウンドしたのは、アイゼンハワー大統領であるとか。同大統領は、コース内に「アイゼンハワー・キャビン」と呼ばれる住居を構え、そこで政務もこなしていたそうですよ。

 また、同大統領はスライサーで、17番ホールにある1本の大木が邪魔で「切り落とせ」と指示を出したとか。けれども、大統領のその要請をコース側は断固拒否した、といった逸話もあります。それにちなんで、その大木は「アイゼンハワーツリー」と命名されました。

 そのアイゼンハワーツリーは、数年前に大雪で折れてしまいましたが、その遺伝子を受け継ぐ苗木は今でも大切に残してあるとか。いつか、復活するんじゃないですかね。

 とまあ、あとはみなさんで、好きにマスターズを語ってください。ついでに言うなら、4大メジャーに詳しいマニアはものすごくいます。彼らが集まったら、もはや語り尽くせません……。

(3)女子プロマニア
 女子選手はビジュアル的にも美しく、絵になりやすいですからね。また、飛距離も飛ばし屋のアマチュアレベルとあって、親近感が沸きます。

 しかも、最近の女子プロは新人や若手の台頭に目覚ましいものがあり、見ていて本当に楽しいです。ネタが尽きないのが、最大の魅力かもしれません。

(4)ゴルフ漫画マニア
 漫画には、麻雀や野球など根強い人気のジャンルがあります。同様に、ゴルフも勝負事における駆け引きがあり、心理戦のドラマがあるため、安定した人気を誇ります。

 さらに、ゴルフ雑誌には必ず1、2本、ゴルフ漫画が掲載されており、漫画好きとゴルフ好きの両方から支持されています。ただ、最近は日本男子ゴルフの人気低迷もあって、ダイナミックなゴルフ漫画は減りました。

 スターが小粒なのか、需要がないのか、その辺はよくわかりませんが……。どちらにせよ、ゴルフ漫画のテーマ作りにおいて、業界内が試行錯誤しているのは事実です。

 そんななか、現在実験的に、等身大のアマチュアゴルファーを主人公とした漫画の原作を私が担当しています。週刊パーゴルフの『黄昏ゴルフ倶楽部』という作品で、監修は弘兼憲史さん。”黄昏感”満載ですよ、暇な時に読んでみてくださいね。

(5)ギアマニア
 知り合いにも結構います。ラウンドする前に工房にこもり、ラウンド時間と同じぐらいクラブをいじっているんですな。

 何がどうなるのか、まったくわかりませんが、そうやっていじっている時間がその人にとって、至福の時なのでしょう。出来上がったクラブを見て、うっとり。翌日のラウンドを忘れてしまいそうです……。

(6)グッズマニア&ラウンドマニア
 これは、鉄道マニアで言えば、「乗り鉄」でしょうか。とにかく、日本に2000以上あるコースを、できるだけ多くラウンドしたい、という方々です。

 そして、そのラウンドついでに、ゴルフ場のマーカーやスコアカード、ティなどを記念に持って帰るわけですね。そうやって集めたものは、お家のどこかにきれいに並べてコレクションにしているんですな。

 しかしまあ、年間50ラウンドして、40年で2000コースですか。がんばれば、日本のゴルフ場は制覇できるかもしれませんね。達成された方がいたら、ぜひ教えていただきたいものです。

 さすがにそれは無理だとしても、知り合いを頼って、自らが行けないコースのグッズを持って帰ってくるように依頼したり、同じマニア同士でグッズを交換したり、そういうのが楽しいのでしょう。

 あと、有名コースにはオリジナルグッズが売っているため、「ポロシャツ&キャップマニア」とかもいますね。



アマチュアゴルファーの中には、いろんなマニアがいるんですね...

 その他、「ルールマニア」「(ゴルフ場の)お風呂マニア」とか、どのコースのレストランにも必ずカレーはあるので、「レストランのカレーマニア」とかもいます。ほんと、調べればキリがありません。

 アマチュアゴルファーって、長い人生のなかでのスコアの変動って、だいたい70台後半から110ぐらいまででしょう。そこで、一喜一憂するのもいいですが、いつしか飽きますし、腕前のピークというものがありますからね。何かしらの”マニア道”に邁進するのもありかな、と。

 個人的には、地方でゴルフに行く時の、「夜の19番ホールマニア」ですかね。別にネオン街がなくても、麻雀をやるか、カラオケをやるか、地元の自慢の食事を味わうとか、それでいいんです。それが、最近「楽しい」と思う年齢になりました。

 ゴルフにおいては、サブ的な趣味やマニアチックなテイストを持っていると、ゴルフ人生の幅が広がる――そんな気がしますね。