8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」。全国の予選を勝ち抜いた小学4、5年生で構成されるリトルリーグ16チームが、2日間にわたる決勝トーナメントを戦った。■日米両球界を経験して得た結論「アメリカの野球は、そんな敷…

8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」。全国の予選を勝ち抜いた小学4、5年生で構成されるリトルリーグ16チームが、2日間にわたる決勝トーナメントを戦った。

■日米両球界を経験して得た結論「アメリカの野球は、そんな敷居の高いものじゃない」

 8月5~7日に宮城県石巻市で開催された「MLB CUP 2016」。全国の予選を勝ち抜いた小学4、5年生で構成されるリトルリーグ16チームが、2日間にわたる決勝トーナメントを戦った。真剣勝負を楽しむ子供たちの様子を見守ったのが、元メジャーリーガーで巨人でも活躍した高橋尚成氏だ。野球教室やトークショーで子供たちと触れあい、同時に保護者や指導者たちにもメッセージを送った2日間。技巧派左腕として日米両球界を渡り歩いた高橋氏に、イベントを通じて子供たちに伝えたいメッセージ、そして逆転優勝を狙う古巣巨人について話を聞いた。

――MLBジャパンの主催で行われた「MLB CUP 2016」。こういったイベントが開催されることの意義、それに関わることが高橋さんにとってどんな意味を持つのか教えてください。

高橋尚成(以下、高橋):子供たちに「アメリカの野球はそう遠いものじゃないんだよ」っていうのを知らせるのには、すごくいい機会だと思いますね。日本人って、野球に限らず、アメリカの存在をすごく上に見ているような部分がある。でも、そうじゃないんだよ、と。日本もアメリカも同じ並びの中にあって、例えば、高校や大学から、直接アメリカに行くっていう選択肢もあるんじゃないか、と。そんなに敷居の高いものじゃないんだっていうことを、子供たちに知らせることができたらいいな、と思いますね。

――日米両方をご自身が経験したからこそ伝えられることでしょうね。

高橋:そうかもしれません。自分がメジャーに行って感じたのは、もっと若い時に行きたかった、ということ。実際に野球をやってみて、そんなに差はないと思ったんです。だからこそ、もっと若い時に行きたかったな、と。大人になってから行くのと、子供の頃に行くのでは、やっぱり感じ方が全然違うと思うんです。例えば、このMLB CUPで優勝したチームがアメリカ遠征に行けるとか、今後そういった形で広がっていくと、子供たちもより大きな目標を持つことができるでしょうね。

■重要なのは「teaching」ではなく「coaching」

――トークショーでは、保護者・指導者の皆さんに「子供たちにはteachingじゃなくて、coachingをして下さい」と呼び掛けていました。そのメッセージに込められた思いを教えて下さい。

高橋:上から物を言われたら、すごく嫌な思いをするのは、誰もが分かっていること。それは子供でも一緒だと思うんです。自分たちが子供の時に何ができていたかを考えた時、できることよりできないことの方が多かったはず。それを忘れて「こうやれ」「そうじゃないだろ」って頭ごなしに言うのは、果たして正解なのか分からない。

――確かに、子供だって嫌な思いはしますよね。

高橋:もっと大人になってから言うんだったら理解できると思うけど、まだ小学生のうちはね。頭ごなしに言うと、親の顔を見て野球をしたり、監督やコーチの顔をうかがいながらプレーするようになってしまうから、伸びるものも伸びなくなると思うんです。だからこそ、教えるteachingではなく、アドバイスするcoachingに徹してほしいですね。

――ここからは古巣・巨人について、お話を聞かせて下さい。開幕当初こそ苦戦が続きましたが、現在は逆転優勝を狙える2位につけています。7月は月間MVPを獲得した左腕・田口麗斗投手の活躍が光りました。4、5月に比べて投球内容が安定したように思えます。

高橋:一番に体力が付いたことでしょうね。4月や5月は、6回くらいになると一気にばたつく感じがあった。でも、オールスター明けから、それが見られなくなった気がします。

――若手選手は1年戦える体力がつけば、自然と安定した成績になるようですね。

高橋:そうですね。それに加えて、投げ方も少し工夫したように見えます。以前は投げる時に、左足の踵がギュッと高く上がっていた。でも、最近はその上がりが浅くなりました。踵が上がり過ぎると、フォームや軸がぶれる。そうすると、投げる球に直結して制球もぶれる。いい投手になるには、フォームの無駄を省いていかないといけないと思います。

――田口投手は無駄が少なくなったということですね。

高橋:やっぱり無駄のない投手にいい投手が多いと思います。無駄が少なくなれば、長いイニングを投げられるし、勝てるようにもなる。ちょうど打線もつながり始めたので、いい相乗効果になっているんでしょうね。

■巨人・田口ら若手の発憤に期待「考えないで野球しても成功しない」

――先発ローテーションの上位に定着することが期待される若手でもあります。

高橋:エースの菅野(智之)がいて、2番手を田口、高木(勇人)が投げるようにならないと。そして、4番手以降を内海(哲也)、大竹(寛)、マイコラスが投げるイメージでいると、すごく強いチームになるでしょう。監督やコーチも、そこを期待していると思います。

――内海投手や大竹投手といったベテランが先発ローテにいる意味は大きいですが、それ以上に若手の奮起が大事だと。

高橋:もちろん、2人の存在はすごく大きい。菅野の他に、勢いだけで投げるような投手だけではダメでしょう。ある程度、計算のできる投手は必要。でも、例えば、左の救援といえば山口(鉄也)にすべてを託してきたから、勤続疲労のような状態になってしまったと思うんです。ベテランの力は必要だけど、それ以外の力が育てば強くなる。それには、田口、高木、戸根(千明)、桜井(俊貴)といった若手が出てこないと。期待されても、出てこなければ意味がないですから。

――それには選手一人一人が能力を発揮するためにどうしたらいいか、考えていかなければいけない……。

高橋:考え方1つでしょうね。プロ野球選手になったんだから、実力は十分にある。それを発揮できるか否かは、選手個々が考えながら野球をしているかに掛かっている。考えないで野球をしても、やっぱり成功はしません。今、自分がどうするべきか、何をするべきか、そこを考える力を伸ばすことがカギになるでしょうね。

――ペナントレースが佳境を迎える時期、そういった若手選手の奮起に期待したいですね。

高橋:期待しましょう!