文と写真◉KTa☆brasil(ケイタブラジル)   スポチュニティー読者には、野球観戦の愛好家も多くいらっしゃるかと思いますが、どのリーグ・どのチーム・どの選手を、どんな風に、またどんな気持ちで観戦・応援していらっしゃいますか? 野球ファ…

文と写真◉KTa☆brasil(ケイタブラジル)
 
スポチュニティー読者には、野球観戦の愛好家も多くいらっしゃるかと思いますが、どのリーグ・どのチーム・どの選手を、どんな風に、またどんな気持ちで観戦・応援していらっしゃいますか?

 

野球ファン以外にも広がる人気

不動のプロ野球(NPB)人気ですが、近年の人気ぶりやその変化には目を見張るものがあります。各球場に観戦に行くと、子供〜元気な高齢者まで幅広い年齢層が一堂に会している様子、特に女性ファン数の急上昇がやはり目立ちます。
 
「カープ女子」(広島)、
「オリ姫」(バッファローズ)、
「ドラ女」(中日)、
「虎ジョ」(阪神)、
「浜ジョ/浜っ娘」(横浜)他、女性ファンの急上昇から呼び方も色々生まれています。
 
そしてカップル、子連れのファミリーファンも増加している事にも気付きます。今なき後楽園球場、川崎球場、または各球団の以前の球場〜昭和時代から野球観戦をしている筆者には当然の事ではありますが、球場内の雰囲気に様々な変化・改善を感じます。
 
例えば“野球自体にはそんなに関心が無かった層への人気・動員の広がり”がその一つ。中には“野球のルール自体をまだあまり知らない人”も足を運んで楽しんでいる事が珍しくなくなってきました。これには正直驚きましたが“そこまでコアなスポーツファンではない層”に、広い裾野のある人気→動員→売上と繋がっている事はシーンとして重要な事だと思います。

2019年シーズンから横浜スタジアムのライト後方に大幅増設された「ウィング席」からの眺め。向かってレフト側にも増設予定とのこと。

 

移り変わる人気と観客スタンド

不動・普遍のタイガースとジャイアンツの人気。強豪として人気定着のホークス、そして埼玉のライオンズ。根強いこだわりファンの多い千葉のマリーンズや大阪のバッファローズ、北海道に限らずファンの多いファイターズや東北の心が集うイーグルスはパ・リーグの人気を担っています。全球団の伝統的な応援団と現場をリードし盛り上げる応援歌の存在は球団・球界の大きな宝とさえ言えるのではないでしょうか。そして、女子ブームの先駆け広島カープはもとより、日ハム・ファイターズの男女に分かれた怒濤のコール応援、さらに横浜DeNAベイスターズの人気急上昇を感じる人が多いのでは? 
 
1998年の最後の優勝から20年が経過した横浜ではスタジアム周辺の各駅や地域各沿線まで“周辺地域と連動した大掛かりな演出と企画”とが年々(球団史上初)拡大し、ブームとさえ言えるベイスターズの人気ぶりを感じずにはいられません。新たなウィングスタンドが増設されたとは言え、今やハマスタのチケットをとる事は以前の様に気軽な事ではなくなっています。横浜ベイスターズの前身=(川崎/横浜)大洋ホエールズ時代から、“地元球団”というだけのシンプルな理由で気軽に応援して来た神奈川県のファンや、当時珍しかった「スタジアム」の名で親しまれた頃から、またはハマスタがガラガラだった「ベイスターズ暗黒時代」を知るファンには近年の変わり様に少し戸惑っている人も少なくありません。もちろん人気球団となり、強くなった事は嬉しい事ですが。

光や花火を用いたダイナミックな演出で人気の横浜スタジアム

人が出会い、繋がり、表現し、笑顔や心を交わす現場

各球団・球場は花火や照明、音楽、ダンス、観客参加型のアトラクション、ウェアやアイテムの開発、オープニング/エンディングのショウアップなどに余念がなく、派手な演出やファンサービスにこれまでになく力を入れています。もはや、球場はアミューズメントパーク顔負けの内容のエンターテイメントで人気を集める時代になっています。
 
各球場/球団によって差異はありますが、大型バックスクリーンを用いたダンス合戦やゲーム、ファンが参加できるピッチングやフライキャッチなど、場内全体を巻き込んだ、観客主体の楽しさが数多く用意されています。中でもMCがスタンド内に行って回の間に観客インタビューをしたり、両軍ファン対抗のジャンケン大会を行なう神宮球場のヤクルト・スワローズ。鉄壁の大人気を誇る阪神タイガースの甲子園ではノリの良い名物ラテンダンス合戦が。または千葉ロッテ・マリーンズの名物ウグイス嬢:谷保恵美さんを筆頭に、各球場のMC/ウグイス嬢の個性豊かな活躍も楽しみのポイントです。

ヤクルト・スワローズのマスコット「つば九郎」の日本的な個性とパフォーマンスは予測不能で大人気。

 
また、球団を越えた人気を誇り、ブログまであるスワローズの「つば九郎」をはじめ、個性豊かな球団マスコットによるパフォーマンスもこれまでになく進化しています。ベイスターズの「スターマン」や「つば九郎」に負けじと活躍する「ドアラ」が人気の中日ドラゴンズも、ファン参加のアトラクションに力を入れ、「夏の竜陣祭」など、名古屋らしさ、昔ながらのドラゴンズの復活と新時代への革新を強めています。
この様に、一部だけをみても、球団/球場によって個性・地域性がある所も面白く、TV中継などには映らない“LIVE感あふれる球場・現場ならではの人気”があります。

神宮球場は1926年(大正15年)に開場され、90年を越える歴史がある。スタンドのどこからも試合が見やすく、野球ファンに人気だが、立て替え計画が控えている。

 
しかし、なんと言っても球場観戦の醍醐味は世代を越えたファン同士が出会える事です。特に話しかけたりしなくても、一緒に盛り上がったり、幅広い世代・層のファンを観ているだけでも楽しいものです。スマホやネットによる社会の細分化/分断/面と向かったコミュニケーションの減少が進む昨今、球場はとても貴重な社会的友愛を感じられる機能も果たしていると思います。ベテランファンからは温故知新を、若いファンからはピュアでフレッシュな気持ちを思い出させられます。各球団の旧いユニフォームの復刻も近年の特徴と言えるかもしれません。今年で創立15周年を迎えた、東北楽天ゴールデンイーグルスは2011年の東日本大震災を乗り越え、2013年に日本シリーズ制覇した伝説は記憶に新しいところ。地域や人が繋がり、元気の素となるシンボルとして、楽天イーグルスはまさに大きな役割を果たしている事を証明しました。

平塚球場での日本ハム・ファイターズと横浜DeNAベイスターズの2軍戦。

野球観戦の原風景、ファーム観戦の魅力!

昔からファーム(2軍・3軍)にも通っている熱烈なファンの方々はいますが、上記ベイスターズを筆頭に、昨今のプロ野球の人気はファームにまで広がっています。
 
かく言う筆者も、地元周辺に各プロ球団のファーム球場/練習場がたまたま近所にあったり、歴代選手も近所に住んでいたため、本拠地球場と別にある“地域とファーム・球団の関係性”を垣間みて来ました。そして2軍戦の試合や1軍の練習風景、選手引退後の野球教室や連動する地域のバッティングセンターにも親しんで来ました。

「当日フラリと行けば入れる、気軽な観戦」を求めファームへ!

ファームでの試合は各球団のホーム/ファーム球場だけでなく、年間日本各地の球場と遠征地で開催されます。
 
今シーズン、筆者はハマスタの満員大フィーヴァーぶりに少し気後れしつつ、神奈川県南部、湘南平塚にある平塚球場での2軍のイースタン・リーグに足を運びました。横浜大洋ホエールズ時代からの準本拠地として、また高校野球県大会の舞台としても親しんで来た地元県の球場です。北海道日本ハム・ファイターズ対、横浜DeNAベイスターズの一戦を観戦。内野席は満員の人気・動員ぶり。リトルリーグチーム〜昭和の野球オヤジまで幅広い世代と毛色のファームならではの雰囲気は格別でした。ファイターズの清宮選手やベイスターズの倉本選手の活躍も観ました。2軍戦は1軍を目指す若い選手、不調や故障などで1軍から来て復調を目指す人気ある中堅・ベテラン選手の姿を間近で観る事が出来るのも大きな魅力です。
 
【ファームの魅力:まとめ】
 
1:良い意味で草野球の様に気軽に観られる雰囲気がある
2:値段が安い(1,000円程度、阪神タイガースは入場無料!)
3:球場の作り〜選手との距離が近く臨場感が高い
4:野球が好きな、熱いファンが多い
5:鳴りものや応援団がなく、独特な雰囲気が面白い
6:ファーム2軍・3軍を含めた、1軍〜チーム全体像を楽しめる

球場/球団によっては飲食の販売が無かったり、酒類の持込が出来ない場合もありますが、ハイパーに盛り上がる一軍試合には無い、野球観戦の原風景がそこにあります。試合開催地域の活性化、飲食や物販の可能性もまだまだ大いにある事に気付きます。穴場感があるのもその魅力ですが、ファームの人気がもっと上がれば、ファーム戦のある地域を含め、野球界全体の活性化、盛り上がりに繋がる事も大いに想像できます。
 
ファーム未体験の方はぜひ試合スケジュールと球場をチェックして、足を運んでみてはいかがでしょうか。
 
http://npb.jp/farm/2019/

ライターのご紹介

KTa☆brasil(ケイタブラジル)
https://keita-brasil.themedia.jp/
東京うまれ、神奈川育ち。Newsweek誌が「世界が尊敬する日本人100」に、UNIQLO初の世界同時展開広告「FROM TOKYO TO THE WORLD」に選出。パリコレ〜F1GP〜W杯〜本場リオのカルナヴァルまで、世界各地で活躍するミュージシャン、DJ、サッカー関係者、打楽器指導者。ブラジル代表ユニフォームのマークでおなじみの“CBF”=ブラジルサッカー連盟による公式番組“CBF TV”が、“外国人でありながら“80年代前半以来、ブラジルの歴代サッカー選手やクラブチーム、サッカー界と長く深く関わる人生”を番組特集した(現在唯一の日本人)。今年も南米リベルタドーレス杯番組や、CBFブラジル杯公式プロジェクトに招集されている。ブラジルとのご縁は幼少より約35年。10代より両国を往復し続ける活動は2018年で22年目。ブラジル政府各省/リオ市観光局事業公式実績者。サンバ応援の本場:リオの名門クラブチームC.R.Vasco da Gamaの名物応援団サンバ打楽器隊員を経て、スタヂアム殿堂刻名の現上級会員。同クラブの様々な公式プロジェクトに招集され、東日本大震災発生時には南米で一番早く企画・実行された救援プロジェクトの一員でもある。 日本でもTV/FM/新聞/雑誌/WEBなどのメディアではサッカーや音楽を中心にブラジルや欧米ラテン諸国のプレゼンターとして活躍。TBSスーパーサッカー、スポナビ、NIKE FOOTBALL、SONY FOOTBALL、JTB、excite公式ブログ・・・様々な現場とメディアでレポーター、MC、コラム寄稿を歴任。Jリーグ、Fリーグの選手や関係者との関わりも深い。リオ五輪では日本政府のパビリオンJAPAN HOUSEでの音楽イベントを11本プロデユース。命名した共著書「リオデジャネイロという生き方」(双葉社)他、寄稿も数多い。