先の全仏オープンと今大会で、錦織圭が練習相手に指名した16歳のジュニアが望月慎太郎だ。錦織は昨年も全米などでジュニアの田島尚輝と練習しており、後進を練習相手にするのが好きなようだ。そういえば、錦織自身、ジュニアで出場していた2006年の全仏…

先の全仏オープンと今大会で、錦織圭が練習相手に指名した16歳のジュニアが望月慎太郎だ。錦織は昨年も全米などでジュニアの田島尚輝と練習しており、後進を練習相手にするのが好きなようだ。そういえば、錦織自身、ジュニアで出場していた2006年の全仏で、ラファエル・ナダル(スペイン)の練習相手をつとめたことがある。ロジャー・フェデラー(スイス)との決勝の前日と当日朝の、大事な練習だった。

 もちろん、これはと見込んだ選手だから相手をさせるのだ。望月について錦織は記者会見で「将来が楽しみ。パワーに頼らず、いろんな方面からプレーできる。どう育っていくか、僕も楽しみ」と話している。  

 4回戦に勝利を収めた錦織は観客席の声援にお辞儀で応えたが、これも望月の影響だとか。錦織は「慎太郎が試合後にやっていて、えらいなと思って、自分もやってみようかなと。慎太郎からのインスパイアでした」と話し、会見場の雰囲気をなごませた。

 望月は13歳からフルタイムで米国のIMGアカデミーで腕を磨く。錦織とはアカデミーでも練習しており、「バックハンドはクロスでラリーしてもあまり負けてはいないかなと感じている。錦織選手のサーブは結構返せている」という。  

 全仏ジュニアではベスト4の好成績をおさめた。錦織の四大大会ジュニアでの最高成績は2002年全豪と同年全仏のベスト8だから、望月は初めて出場した四大大会ジュニアで早くもその実績を超えたことになる。だが、もちろん、プロの世界で先輩を超えるのが目標だ。

「錦織選手を抜かしたい。早くその舞台に立って、いろいろ歴史を塗り替えているかたなので、またさらに僕が抜きたいなという気持ちはあります」

 世界4位にのぼりつめた先輩を、到達可能な目標ととらえているのは頼もしい。  

 9日にはジュニア男子シングルスの2回戦を突破した。1、2回戦とも簡単な試合ではなかった。1回戦では相手のマッチポイントをしのいで、最終セット8-6で逃げ切った。2回戦の第2セットは快調なペースだったが、中盤にブレークを許して追いつかれ、タイブレークでなんとか勝った。

 第8シードが苦戦を続ける要因を探るのは難しくない。積極的にいったプレーがミスにつながっているのだ。この試合のアンフォーストエラーは42本に達した。ウィナーは38本。出入りは多いが、むしろ肯定的に見るべきだろう。アタックしすぎでは、と思うほど、積極的にプレーしている。身長175㎝、体重64㎏と世界では小柄な部類の望月は、それが自分のやり方、生きる道ととらえているのだろう。

 自身のプレースタイルについて、望月は全仏ジュニアでこう話している。

「ネットプレーとかドロップショットとか、いろんなことをやりながら攻める。前に行ったり、フォアハンドでしっかり攻めたり。でも、それだけでは勝てないのでディフェンスも練習している」

 ウィンブルドン前哨戦のノッティンガムでは失セット0で優勝した。攻め続けるスタイルは芝シーズンに移ってさらに進化したようだ。

 2回戦の第2セットのタイブレークは圧巻だった。奪った7ポイントのうち、ネットでの得点が5ポイント。10ポイントすべて、望月が攻め、相手は受け身に回った。大事なタイブレークでこんな戦い方ができる選手はなかなかいない。

 2セットのトータルで58回ネットを取って、39ポイントを得た。これも、あまり見ない数字だ。ネットでフィニッシュする形を理想としていても、それが作れない選手が大半なのだ。

 ベースラインのラリーでは、粘り強くグラウンドストロークを打つ相手がやや優勢だった。この相手を倒すにはこれしないと、望月は徹底して攻めた。ネットに出てパスを抜かれたり、強打のアプローチショットをミスする場面も目立ったが、それでも攻めて攻めて、結局、勝った。

 逸材が、どう育っていくか、楽しみでならない。

(秋山英宏)

※写真は2019年「全仏OPジュニア」の望月

(Photo by The Tennis Daily)