コパ・アメリカ準決勝の第1試合、ブラジル対アルゼンチンの一戦は「スーペル・クラシコ」として大きな注目を集めた。だが…

 コパ・アメリカ準決勝の第1試合、ブラジル対アルゼンチンの一戦は「スーペル・クラシコ」として大きな注目を集めた。だが、第2試合のペルー対チリも、「クラシコ・デル・パシフィコ(太平洋クラシコ)」と呼ばれる伝統のライバル対決だ。



チリの猛攻をストップし続けたペルーのGKガジェセ

 試合当日のブラジル紙を開いてみても、さまざまな表現で太平洋クラシコのことが紹介されていた。

「19世紀後半に戦火を交えた遺恨は、太平洋海域の領有権を巡る紛争などで現代にも残っている」「ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイに次ぐ南米の実力国を争う対決として、昔から火花を散らしてきた」「ラテン・アメリカ太平洋岸の王者を決める一戦」

 両国の対戦は、チリが40勝14分22敗と大きくリードしている。

 チリにとって今回のコパ・アメリカは、2018年ワールドカップ出場を逃した悔しさを晴らす場だった。

 地元開催の2015年大会、アメリカで開催された2016年のコパ・アメリカ・センテナリオ(100周年大会)を2年続けて優勝し、2017年のコンフェデレーションズカップでも準優勝。勢いに乗るチリは、ロシア・ワールドカップで世界制覇を企んでいた。だが、地域予選で敗れてしまった。

 また、昨年10月の親善試合ではペルーに0-3で敗北。今回の直接対決では、その雪辱も晴らしたかった。

 そのペルーは近年、調子がいい。コパ・アメリカでは2011年、2015年と連続で3位。2016年のセンテナリオでは上位進出こそならなかったが、グループリーグではブラジルを1-0で下している。そして2018年には、ワールドカップに36年ぶりの出場も果たした。

 それでも、今回のコパ・アメリカのグループリーグでブラジルに0-5と完敗した傷跡は深い。ペルーのリカルド・ガレカ監督は「うちのチームは逆境に強い」とリベンジに胸を秘めて、この太平洋クラシコに臨んできた。

 8分、チリは左サイドの崩しからチャルレス・アランギス(レバークーゼン)がフリーになるビッグチャンスを生かせず、試合はペルーのペースで進んだ。試合会場となったグレミオ・アレーナはピッチ状況が悪く、チリはボールの処理に四苦八苦しているようだった。また、鋭いペルーのプレッシングに、チリは1対1のデュエルでも劣勢となった。

 そして21分、ペルーがCKの2次攻撃からチャンスを掴む。クリスティアン・クエバ(サントス)のクロスを中央でアンドレ・カリージョ(アル・ヒラル)が頭で反らし、最後はエディソン・フローレス(モナルカス・モレリア)が鮮やかなボレー。見事な連係プレーで先制した。

 さらに38分にも、ペルーは加点する。CBのカルロス・サンブラーノ(バーゼル)がロングフィードを蹴った瞬間(本人はミスキックと思って頭をかいていたが)、カリージョが右サイドでボールに追いついてクロス。これを、ジョシマール・ジョトゥン(クルス・アスル)が胸トラップからシュートして2-0とした。

 アレクシス・サンチェス(マンチェスター・ユナイテッド)、アルトゥーロ・ビダル(バルセロナ)、エドゥアルド・バルガス(ティグレス)、マウリシオ・イスラ(フェネルバフチェ)……。おそらくチリのほうが、個々の力ではペルーより上なのだろう。だが、チーム力はペルーが上回っていた。

 2点のビハインドを負い、攻撃するしかないチリは、後半に入ると圧倒的な勢いで攻め続けた。一方、ペルーにも疲労が見え始め、ボールホルダーに対してアプローチが甘くなる。チリは68分にジャン・ボーセジュール(ウニベルシダ・デ・チレ)のボレーがペルーゴールを襲ったのを皮切りに、さらに猛攻を強めた。

 75分、アランギスがGKと1対1。76分、イスラが強烈なミドルシュート。81分、ビダルがゴール正面からフリーでヘッド。82分、サンチェスがミドルシュート。しかし、いずれもペルーからゴールを奪うことはできなかった。

 そのチリの猛反撃をストップし続けたのが、守護神のペドロ・ガジェセ(アリアンサ・リマ)だ。

 グループステージでブラジルに大敗した試合、ガジェセはロベルト・フィルミーノ(リバプール)にフィードをブロックされて失点し、エベルトン(グレミア)のミドルシュートに反応が遅れてゴールを許すなど、散々な出来だった。

 それでも、後半アディショナルタイムにガブリエル・ジェズス(マンチェスター・シティ)のPKを見事に止めたことで、マインドリセットができたのだろう。準々決勝ではウルグアイを零封し、PK戦ではルイス・スアレス(バルセロナ)のシュートを鮮やかにストップし、ベスト4進出の立役者となった。ジェズスのPKストップから生まれたいい流れはチリ戦でも続き、ブラジル戦とは別人のような堅い守備を見せた。

 また、ペルーのフィールドプレーヤーたちも健闘した。SBルイス・アドビンクラ(ラージョ・バジェカーノ)とウイングのカリージョは、右サイドでダイナミックゾーンを作った。逆サイドではSBミゲル・トラウコ(フラメンゴ)とサイドハーフのフローレスが、ボールの落ち着きどころを作った。

 そして中央では、1トップのパオロ・ゲレーロ(インテルナシオナル)の周りをトップ下のクエバが衛星のように動き回り、チリの守備網を撹乱した。今大会で一番いい動きを見せたクエバは守備でも健闘し、ボールホルダーの懐(ふところ)に入ってボールを突っつき、ボールを奪ったりミスを誘ったりした。

 89分、チリはCBギジェルモ・マリパン(アラベス)を下げ、FWのニコラス・カスティージョ(クラブ・アメリカ)を入れてきた。その結果、ピッチ全体にスペースが生まれ、「オーレ! オーレ!」の歓声のなか、ペルーはボールを回して時間潰しを始めた。

 そしてアディショナルタイム、ペルーはゆったりとしたパス回しからボランチのレナト・タピア(ヴィレム)が突然ギアを上げて鋭いスルーパスを放ち、ゲレーロと相手GKが1対1になるシチュエーションを作り出す。百戦錬磨のゲレーロは落ち着いてGKをかわし、3-0として勝負を決めた。

 2015年のコパ・アメリカ開催中、チリの新聞で、「ペルー人はゴールさえなければ世界一うまい」と書いてあるのを読んだ。世界一はさすがに言いすぎかと思うが、たしかにペルーの選手たちの技術の高さには、昔からうならされる。昨年10月に続いて「太平洋クラシコ」を制したペルーは、とうとう44年ぶりにコパ・アメリカ決勝に進出する。アンデスの赤襷(あかだすき)は歴史を記した。

 ブラジル代表より休みが1日少なく、移動距離も長い。完全アウェーのペルーには不利な条件だ。それでも、ペルーのプレーを見ていると、「すべてが可能だ」という気持ちが湧いてくる。