練習で笑顔が見えていた錦織圭 錦織圭が、20代最後のウインブルドンに臨む--。 ただ、これまでとは違って、前哨戦であるドイツのハレで開催されるATPノベンティオープンを右腕上腕部の回復の遅れで欠場。そのため、ぶっつけ本番でウインブルドンに臨…



練習で笑顔が見えていた錦織圭

 錦織圭が、20代最後のウインブルドンに臨む--。

 ただ、これまでとは違って、前哨戦であるドイツのハレで開催されるATPノベンティオープンを右腕上腕部の回復の遅れで欠場。そのため、ぶっつけ本番でウインブルドンに臨むことになった。これまでのキャリアで、グラスの前哨戦を戦わずにウインブルドンに挑戦するのは初めてのことだ。

 グラス(天然芝)でのエキシビションマッチを1試合だけ消化して、ウインブルドンに入った錦織だが、2週間の休養のおかげで右腕上腕部の炎症は無事に回復。29歳の錦織が、健康を最優先に考えるのは当たり前のことであり、ノベンティオープンの欠場も賢明な判断だったと言える。

「(ハレに)出ないと決めた時はすごく不安がありました。痛くても、出た方がいいのかなという気持ちが強かったんです。今回は痛みがすごくあったので、無理はできないという前提がありました。(前哨戦)なしで(ウインブルドンに)来ても、そんなにプレーは悪くない。(4月の)モンテカルロからの疲れもかなり溜まっていたので、この2週間でしっかりリフレッシュできて準備としては問題なくできています」

 ウインブルドンで錦織は、ラファエル・ナダル(2位、スペイン)やリシャール・ガスケ(46位、フランス)といった強豪選手と練習をこなし、右腕上腕部の問題なくグラスでのテニスの調子を上げてきている。

 錦織のツアー遠征に帯同しているダンテ・ボッティーニコーチも、グラスでの調整が順調なことに安堵の表情を浮かべた。

「圭は、月曜日(6月24日)にグラスで初打ちをしました。ものすごく早くグラスにアジャストできているので驚いています。グラスでもう10年以上プレーしていますから、すでに習慣を身につけているというか、何をすべきかわかっているようです(ウインブルドン初出場は2008年)」

 全仏では、錦織の一番の武器であるフォアハンドストロークのいい感覚が戻っていたが、クレーからグラスにコートサーフェスが変わっても、その好調をキープできているようだ。

「練習でも、先日のエキシビションでも、ストロークの感覚がすごくよかった。(グラスでは)焦り過ぎないで、それでも攻撃的なプレーはしなければいけないですが、そのメリハリもできていたと思います。ボールがしっかり飛んでくれていたので、調子はいいかなと思います」

 錦織は現在ATPランキング7位(6月24日づけ、以下同)だが、今回のウインブルドンでは第8シードになった。これは、過去2年間のグラス大会の成績を加味して決めるウインブルドン独自のシード決定方法によるもので、昨年ウインブルドン準優勝のケビン・アンダーソン(8位、南アフリカ)が第4シードに繰り上がった。

 錦織の1回戦の相手は、予選から勝ち上がったチアゴ・モンテイロ(115位・ブラジル)で、今回が初対戦となる。勝ち上がった場合、2回戦では、デニス・イストミン(109位、ウズベキスタン)とキャメロン・ノーリー(49位、イギリス)の勝者と対戦する。イストミンとの対戦成績は、錦織の1勝0敗で、ノーリーとは過去対戦がない。

 3回戦からはシード選手同士の対戦が始まり、相手は第25シードのアレックス・デミノー(29位、オーストラリア)の可能性が高く、錦織の1勝0敗。

 4回戦では、第9シードのジョン・イスナー(12位、アメリカ)との対戦が予想され、錦織の2勝1敗。34歳のイスナーはビッグサーバーで、昨年のウインブルドンで初めてベスト4に進出した。

 ちなみに、そのイスナーが戦った昨年の準決勝は6時間36分におよぶフルセットの死闘となり、選手への負担があまりにも大き過ぎたため、これをきっかけに2019年から大会のルール変更が行なわれた。ファイナルセットで12オールになった場合、7ポイント先取のタイブレークが採用されることになったのだ。

 そして準々決勝では、順当であれば第2シードのロジャー・フェデラー(3位、スイス)と当たることになり、錦織の3勝7敗。37歳のフェデラーは、ウインブルドンで男子史上最多の8回の優勝を誇り、グラスを得意としている。グラスでの錦織との対戦は、2014年ATPゲリー・ウェバー・オープン準決勝で、フェデラーがストレートで勝っている。直近の対戦では、2018年のATPファイナルズで、こちらは錦織がストレートで勝った。

 ツアーでは屈指のフットワークのよさを武器にしている錦織だが、グラスではより多くのストップ&ゴーがあるため、足を使うことに難しさを感じている部分があった。

 そのため錦織には、ハードコートやクレーコートと比べ、グラスコートへの苦手意識があった。だが、昨年のウインブルドンでベスト8に初めて進出できたことで、その意識にも変化が生じてきている。

「嫌いというイメージは、もうまったくなくなりましたね。(グラスでは)動けないというか、動きづらさがやっぱりあるので、そのやりにくさが他のコートと比べると若干ありました。(グラスではバウンドしてから)ボールが伸びたり、ウイナーが取りやすかったり、力だけでなく、駆け引きというか、頭の勝負だったりするので、そういうところが芝は面白いかなと思います」(錦織)

 ボッティーニコーチは、錦織のグラスでの順調な仕上がりを見ても、先を見過ぎないで、いつもどおりの落ち着いた姿勢で錦織のサポートをする。

「たしかに圭への期待は高いですし、楽しみにしています。でも、どの大会でも同じように、一試合一試合が勝負です。もちろん昨年よりさらに良い成績が残せたらいいですね」

 錦織の1回戦は、大会2日目の7月2日に行なわれる予定だ。果たして、グラスでの苦手意識を払拭した”ニュー錦織圭”が、テニスの聖地でどんなプレーを見せてくれるのか楽しみだ。