今年の全米オープン(6月13日~16日/カリフォルニア州、ペブルビーチ・ゴルフリンクス)は、激戦必至。ハイレベルな大混戦になると思う。 誰が主役になっても不思議ではない。マスターズで優勝を飾って完全復活を遂げたタイガー・ウッズ(アメリ…

 今年の全米オープン(6月13日~16日/カリフォルニア州、ペブルビーチ・ゴルフリンクス)は、激戦必至。ハイレベルな大混戦になると思う。

 誰が主役になっても不思議ではない。マスターズで優勝を飾って完全復活を遂げたタイガー・ウッズ(アメリカ)は、この大会でメジャー通算16勝目、サム・スニードの記録に並ぶ米ツアー通算82勝目がかかっている。そして、そのウッズのライバルとなるフィル・ミケルソン(アメリカ)も、これに勝てば、キャリアグランドスラムを達成となる。それぞれチャンスはあり、快挙達成への期待は日増しに高まっている。

 また、前週のRBCカナディアンオープンで、最終日に1イーグル、9バーディー、2ボギーの「61」をマークして圧勝したロリー・マキロイ(北アイルランド)も有力候補。世界ランキング3位へと浮上し、圧倒的な強さを見せた2011年大会に続く2度目の全米オープン制覇を狙う。

 そんななか、大本命はブルックス・ケプカ(アメリカ)だ。5月の全米プロ選手権で見事に連覇を達成。さらに今大会では、3連覇に挑む。もしそれが成し遂げられれば、114年ぶりの快挙となる。

 これらの選手たちを軸にして、今年のゲームは展開されていくだろうが、全米オープンは誰もが勝ちたい大会。ここに向けて、技術面も、メンタル面もピークに仕上げてやってくる。

 日本期待の松山英樹も、そのひとりだ。



ペブルビーチで開催される全米オープンに挑む松山英樹

 松山は2週間前のメモリアルトーナメントで、3日目に「64」をマークして優勝争いに加わった。最終日はパープレーに終わって、残念ながら6位にとどまったが、浮上のきっかけは間違いなくつかんだはずだ。

 同大会の最終日でも、流れは悪くなかった。けれども、終盤の競り合いのなかで、精神的に前のめりがあったと思う。松山自身、試合後のインタビューでこう語っていた。

「(久しぶりの優勝争いで)気持ちがかなりたかぶっていた。今はだいぶ悔しいけれど、『あともう少しだな』という感じです。紙一重でよくない方向にいってしまったけれど、これ(優勝争いのなかでのプレー)を続けていくことが大事だと思う」

 そして松山は、同組のパトリック・カントレー(アメリカ)が、最終日に「64」をマークして優勝したことについては、「トップに立ってからも淡々とやっていた。(自分も)ああいうプレーができないと……」と語った。

 その松山にとって、ペブルビーチGLで開催される全米オープンは初。大会前週には2ラウンドを消化したという情報もあるが、おそらく松山は、メモリアルトーナメントで勝つために走る”レール”を見つけ出したと思う。それは、技術面だけでなく、メンタル面でのゲームの運び方だ。

 松山には、悩みや迷い、ショットの不安などを、どうしても自分の中に閉じ込めてしまう傾向がある。それが、いい方向にいくこともあるけれど、むしろ今は、それによって粘りの限界を小さくしてしまいがちだ。

 そうしたことが、メモリアルトーナメントでの出来事をきっかけにして好転したと思うのだ。その試みが成功すれば、つまり見つけ出した”レール”にうまく乗ることができれば、松山のゴルフは”王者のゴルフ”に変身する。

 手強い相手たちが立ちはだかる今年の全米オープンは、4日間、見逃すことのできない72ホールとなるに違いない。

 そもそも全米オープンというのは、イーブンパーを分水嶺にして優勝争いが繰り広げられてきた。3日間、54ホールまで淡々とゲームが進んでいって、最終日の前半9ホールを終えて、いよいよクライマックスに突入。その時点から、優勝争いが熾烈になる。

 そこから、強靭な精神力と技(ワザ)の戦いが始まる。ゆえに、誰もが「本当の戦いは、そこから始まる」と口にした。そうして、スコアボードに掲示されたアンダーパーを示す赤字がどんどん消えていくなか、赤字のまま生き残った選手が勝利を収める、というのが常だった。

 その”常識”を覆したのが、ウッズだった。米国屈指のリンクスコース、ペブルビーチGLが舞台となった2000年の全米オープン。ウッズは、2位に15打差をつける通算12アンダーであっさりと優勝してしまったのだ。

 その時から、全米オープンの”常識”が変わった。それが、選手たちの姿勢だけでなく、全米ゴルフ協会の、コースセッティングのスタッフたちの姿勢まで変えてしまった。

 そのスタッフたちは今年、ケプカ、ウッズ、マキロイら異次元の選手たちを、どうねじ伏せようとしているのだろうか。それも興味深い。しかし、あくまでも主役は難コースに挑み、戴冠を目指す選手たちである。

 もちろん、松山もその主役となり得るひとりである。今の状態ならば、ペブルビーチGLを攻略できるだけのポテンシャルが十分に備わっているからだ。

 松山の他に日本からは、今平周吾、堀川未来夢、市原弘大が参加する。今平は2年ぶり2度目。堀川、市原は初挑戦となる。彼らのプレーぶりにも注目したい。