ホストカントリーのポルトガル相手に戦ったネーションズリーグの決勝戦は、オランダにとって苦いものとなった。 オランダ…

 ホストカントリーのポルトガル相手に戦ったネーションズリーグの決勝戦は、オランダにとって苦いものとなった。

 オランダは立ち上がりからポゼッションを高め、ボールを失ったらすぐにハイプレスをかけて回収しようとした。だが、ポルトガルの巧みなサイドチェンジにいなされて、やがてオランダの選手の足は止まった。

 その後は次第に、ポルトガルのワンサイドゲームになる。前半、ポルトガルの放ったシュートが11本だったのに対し、オランダはわずか1本しか打てなかった。



FWメンフィス・デパイの攻撃力は不発に終わった

 後半、オランダは交代策を使ってやや持ち直したが、60分にMFゴンサロ・グエデスのゴールでポルトガルに先制点を奪われ、窮地に追い込まれた。81分に長身ストライカーのルーク・デ・ヨングを投入し、ロングボールに一縷(いちる)の望みをかけたが、ビッグチャンスを創出するまで至らず。0-1というスコア以上の完敗を喫してしまった。

 決勝戦はどうしても、準決勝2日目の勝ち上がりチームがリカバリー不足で不利になる。しかもオランダはイングランドとの準決勝で延長戦を戦い抜いており、ポルトガルとの決勝戦が不利になることはわかっていた。

 それでも、ピッチの上にはいろいろ課題が落ちていた。そのひとつが、アタッカー不足だ。試合終了直後から、オランダの専門誌や全国紙は「オランダの課題はFW陣にあり」と辛辣に批判している。

 現在、オランダは「ゼロトップシステム」を採用している。そのキーマンがFWメンフィス・デパイだが、ポルトガル戦では連続してボールロストを犯してしまい、前線で起点をまったく作れなかった。

 ここ2年間のオランダ代表のゴールにおいて、デパイは高い確率で関与している。だが、ポルトガル戦のように彼が不振に陥ると、代わりにカバーする選手が見当たらない。

 ポルトガル戦ではFWライアン・バベルとFWステーフェン・ベルフワインが先発し、後半からFWクインシー・プロメスが投入された。だが、出来は全員、今ひとつ。試合後、オランダ代表を率いるロナルド・クーマン監督は「FW陣をなんとかしなければ……」とコメントしていた。

 現状ではデパイへの負担がかかりすぎ、彼が不調になれば、オランダは前線で何もできなくなってしまう。急ピッチでFW陣の成長を促すとともに、さらなる新星の登場も求められている。

 ただ、最後になってアタッカー陣への批判が湧き出てしまったものの、ネーションズリーグでのオランダの躍進は誰も予期してなかった。2014年ワールドカップ優勝国のドイツ、2018年ワールドカップ優勝国のフランスを倒して準決勝に進出し、2018年ワールドカップ4位のイングランドにも勝ったのだから、オランダは自分たちのことを誇りに思ってもいいだろう。

 ネーションズリーグ・ファイナルズを前に、オランダはKNVB(オランダサッカー協会)の施設で1次合宿を5日間、ポルトガル南部のラゴスで2次合宿を5日間行なった。その後、ベース基地をポルトガル北部のブラガに置き、ネーションズリーグ最後の2試合を戦った。

 これは、ワールドカップやユーロの事前合宿と同じ流れだ。オランダは2020年ユーロを念頭に置いて、ネーションズリーグの準備を行なったのだろう。また、決勝戦という大舞台を完全アウェーのなかでプレーできたのは、オランダの若い選手にとってかけがえのない経験となったに違いない。

 サッカーの世界には、「決勝戦で勝つためには、決勝戦で負ける必要がある」という格言がある。もちろん、なかには初の決勝戦で優勝する国・チームもあるが、今季のリバプールのように昨季の負けを糧(かて)にしてチャンピオンズリーグを制した例などを見ると、納得するところもある。

 今回のオランダは、1988年ユーロ以来のタイトルを狙ったが、残念ながら失敗した。だが、彼らは今回のネーションズリーグ決勝で負けを経験したことにより、近い将来、大きな大会の決勝戦で勝つ権利を得たのではないだろうか。