グランドスラムでの10代選手の活躍は、いつの時代もセンセーショナルだ。上位陣の盤石ぶりは頼もしいが、若手の躍進には胸が躍る。 全仏オープンの記録ブックには「最年少優勝」として、1989年の男…

 グランドスラムでの10代選手の活躍は、いつの時代もセンセーショナルだ。上位陣の盤石ぶりは頼もしいが、若手の躍進には胸が躍る。

 全仏オープンの記録ブックには「最年少優勝」として、1989年の男子シングルスに17歳3カ月で優勝したマイケル・チャン(アメリカ)と、1990年女子シングルスに16歳6カ月で優勝したモニカ・セレス(ユーゴスラビア=当時)の名前がある。

 今大会は女子の10代選手が二人、準決勝に勝ち進んだ。17歳のアマンダ・アニシモワ(アメリカ)と19歳のマルケタ・ボンドルソバ(チェコ)だ。

 6日に行われた準々決勝で、アニシモワは昨年の女王で第2シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)を破り、ボンドルソバに続いて4強に名乗りをあげた。二人の10代選手が全仏のベスト4に残ったのは、19歳のジュスティーヌ・エナンと18歳のキム・クライシュテルス(ともにベルギー)が勝ち残った2001年以来となる。

 アニシモワの17歳9カ月での準決勝進出は、ニコール・バイディソバ(チェコ)が17歳1カ月で4強入りした2006年以降の最年少記録となった。

 17年の全米ジュニア優勝、16年全仏ジュニア準優勝の逸材だ。昨年の花キューピットオープン(広島市)では、予選から勝ち上がり、初めてツアー決勝に進出、準優勝した。この4月にボゴタ(コロンビア)でツアー初タイトルを手にしたばかりだ。

 グランドスラム出場はわずか4度目。初めて四大大会に出場した17年全仏オープンでは、1回戦で奈良くるみに敗れている。

 その17歳が、5戦すべてストレート勝ちで、準決勝の舞台に駆け上がった。準々決勝でハレプに快勝すると、「これまでで最高の試合の一つ」と自画自賛。「自分のパフォーマンスに満足しています」と笑顔を見せた。

 動きの速さ、ボールの威力で昨年の女王を圧倒した。とにかく、スケールが大きい。回転量の多くないフラットに近い強打をサイドライン近くに打ち込まれたら、さすが俊足のハレプでも追い切れない。

 敗れたハレプは「彼女がいいプレーをするのは予想できたが、今日のプレーはすごかった」と脱帽した。

「そんなに力を入れて打たなくても、長く、深く打つことができる。試合に臨む心構えも素晴らしい。試合の状況も見えているのでしょう」と17歳を絶賛するハレプ。「今日のようなプレーをしたら、感情に左右されず、結果を考えずにプレーしたら、大きなチャンスがあります」と優勝の可能性にも言及した。

 当のアニシモワは、「まったく考えていません」と初の四大大会タイトルはひとまず頭の中から追い出している。

「これまでのことはうれしく思っていますが、次に起きることは考えないようにしています」 と次の一戦に集中するつもりだ。四大大会未勝利で臨み、いきなり4回戦進出を果たしたのが、今年の全豪。第11シードで優勝候補にも挙げられたアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)を3回戦で破り、「この大会で優勝したい。今すぐに」と宣言した。ところが、次の4回戦でペトラ・クビトバ(チェコ)に完敗したのが、苦い経験になったのだろう。

 それでも、「今大会はその時よりもかなり自信がついたし、自分のテニスも向上していると感じます」と手応えは十分だ。

 もし優勝すれば、1987年の全仏で17歳11カ月で優勝したシュテフィ・グラフ(ドイツ)を抜き、歴代3位の年少記録となる。上にいるのは最年少優勝のセレスと、1989年に17歳5カ月で優勝したアランチャ・サンチェス(スペイン)だ。

 自己最高のWTAランキングはこの5月にマークした51位にすぎない。四大大会でもほぼ実績のなかった新鋭が、偉大な3人の女王の間に割って入れるか。

(秋山英宏)

※写真は「全仏オープン」でのアニシモワ

(Photo by Clive Mason/Getty Images)