専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第207回 前回、ゴルフ場の改造について触れましたが、今回はその続きです。 バブルの頃、日本独特の2グリーンは、欧米のような1グリーンへと改造する動きがありました。でも、予算不…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第207回

 前回、ゴルフ場の改造について触れましたが、今回はその続きです。

 バブルの頃、日本独特の2グリーンは、欧米のような1グリーンへと改造する動きがありました。でも、予算不足により、2グリーンのままにしたコースもたくさんあります。

 そんな、時代に乗り遅れた感のある2グリーンですが、今、追い風が吹き始めています。まずは、その謎を探っていきたいと思います。

 最初に気候変動の話から。

 現在の東京は地球温暖化の影響で、およそ30年前と比べると(ヒートアイランド現象も加味して)平均気温が2度ぐらい上がった、と言われています。それは、約30年前の宮崎県と一緒ぐらいだそうです。とすると、およそ30年前の東京と、今の仙台が同じぐらいの気候になる感じでしょうか。

 今思うと、昭和から平成にかけての東京では、学校の入学式の頃に桜吹雪が舞っていました。けど今は、東京で桜が咲くのは3月の終わり頃。だから、平成に入ってからの子どもたちの多くは、桜と言えば、卒業式を思い出すんですな。

 そうした地球温暖化の影響があって、1ベントグリーンに改造したコースは大変なことになっています。管理を誤ると、暑さのせいでグリーンの芝すべてを枯らしてしまうことがあるからです。

 たとえば、炎天下のゴルフ場で水まきをするとしましょう。その際、地表に出ているホース部分がたくさんあったら、ホースの中の水は相当に熱くなっています。それを知らずにスプリンクラーを回したら、そこから出てくるのはまさしくお湯。当然、芝は枯れてしまいます。

 実際、そんなうっかりミスをやらかしたコースを知っていますけど、その後の処置がもう大変でした。もし1グリーンに改造していたら、一定期間は休業せざるを得なかったでしょうね。

 そうなんです、運よくそのコースは2グリーンだったので、無事だったサブグリーンを使用して営業を続けることができたとか。2グリーンには、そういうメリットもあるのです。

 というわけで、2グリーンの再評価も踏まえて、昔の”日本式ゴルフ”も見直してみる”温故知新”に取り組んでみたいと思います。

 バブルの頃は、外国人設計家全盛で、新設のゴルフ場はほぼ1ベントグリーンを採用しました。そうなると、従来の2グリーンは「ニセモノだ」「恥ずかしい」などといった評価がなされ、しまいには「ゴルフ場ではない」みたいな扱いを受ける始末。その結果、1グリーンへの改造が加速しました。

 けど、すぐさまバブルが崩壊。2グリーンは”昭和の遺産”として、かなり残ってしまったのです。

 ただそれが、今となっては好都合でした。2グリーンは結構使いでがあって、逆に好評を得ているのです。以下、2グリーンのメリットを挙げてみます。

●管理が楽になる
 2グリーンあれば、片方のグリーンを休ませることができますから、メンテナンスが楽なんです。違うタイプの芝にも植え替えしやすい、というよさもあります。

●倍楽しめる
 2つのグリーンがありますから、グリーンが替われば、同じコースでも2つ、つまり倍楽しめるわけです。

 先日、福島の『スパリゾートハワイアンズ』のゴルフコースに行って、泊まりで2ラウンドしました。ここのコースは、27ホールの2グリーンです。ラウンド1日目は東と中コース、2日目は中と西コースと、中コースだけ2日連続のラウンドでした。

 けど、中コースの2日目は、使用グリーンが違っていました。「あれ、ここ昨日はワンオンしてパーだったのに、今日は(グリーンが)遠くなってて、OBじゃん、なんで?」ってことが起きて、悔しいやら、楽しいやら……って、どっちだねん。 

 昔のホームコース、鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)も36ホールあって、全部2グリーンでした。実質、72ホールあるようなものです。さすがに、すべてのグリーンの特徴を覚え切ることはできませんでしたね。

 でもその分、飽きないし、楽しめました。




2倍楽しめる双子の卵......いや、日本独自の2グリーンも悪くないですよね

●グリーンが小さいから難易度が高い
 2グリーンは、限られた土地の中に2つのグリーンを作るので、自ずとグリーンの大きさは限られてきます。要は、小さくて難しいのです。だから、2グリーンのコースで鍛えられると、アプローチの腕前が俄然アップします。

●2グリーンを合体させた1グリーン
 これは、2グリーンのメリットというより、2グリーンを無理やり1グリーンにしたコースの難点でしょうか。

 簡単に言うと、2つのグリーンの間もグリーンにして合体させ、1グリーンにしてしまったわけです。そんな、手抜きと思われる1グリーンが結構あります。

 こうなると、グリーンが異常にでかくて、乗ってから3パットが続出です。なんだかなぁ~……って思います。

 とまあ、2グリーンの再評価の流れで言えば、その他”日本式ゴルフ”も再評価してみましょう。すなわち”ディスカバージャパン”……って、古いなぁもう。まんま昭和じゃん!

 たとえば、こんなのがあります。

●お昼休み
 昔は、海外のようにスループレーで回って、さっさと帰るのがカッコよく感じる時期もありました。でも今は、お昼休みも大切だな、と思っています。

 だいたい最近はコースが混み合うので、スループレー自体、ほとんどできないようになっています。早朝や薄暮プレーでなければ、通常はコース側も「まだ午前スタートの組がすべて出ていないので、それを抜いてスタートすることはできません」と言ってきます。

 そこで昼休みを取るわけですが、そもそもハーフを回ってから、仕切り直したり、気分転換したりするための時間は必要です。さらには、コンペなどで初対面の人と交流するためには、昼休みが絶好の交流タイムとなります。

 日本人は、朝ご飯を食べて、昼飯を楽しみにハーフを回り、残りのハーフはお風呂を楽しみに回る――それで、いいのです。

●ラウンド後のお風呂
 ラウンドが終わって、大浴場に入り、キ○タマのシワを伸ばしてこそ男。日本人は、江戸時代からお風呂が好きですから、ゴルフが終わればお風呂、これでんがな。

 これこそ、日本が誇るテルマエ文化じゃないですか? シャワーだけ浴びて帰るなんて、楽しみが半減です。

●乗用カート
 乗用カートは、アメリカの偉大な発明です。本場イギリス人は、さほど好きではないようですが、これでなんぼ助けられたことでしょう。

 雨の日だって、炎天下の猛暑日だって、乗用カートに乗っていれば、なんとかしのげます。そうした寒暖差の激しさもあって、日本のコースはアップダウンが多いですから、乗用カートに乗ってラウンドするのが望ましいと思います。

 いまだ、ラウンドは「歩きのみ」と言っている名門コースもあります。でも、時代の流れか、そうしたコースでもオプションで乗用カートを導入しているのが現状です。やはり、お年寄りのメンバーさんから、リクエストが入るんでしょうね。

●おばちゃんキャディー
 アメリカはセルフプレー全盛、英国では男性キャディーが多いです。おばちゃんキャディーを大量に雇っているのは、日本だけかなぁ。アジアの他の国もキャディーは多いですが、男女同じぐらいいますからね。

 個人的にはセルフプレー派ですが、キャディー付きでも不満はありません。同伴メンバーに偉い人がいたりすると、キャディーさんをあてがえば、何かと楽ですし。

 おおよそ、偉い人はよくボールをなくします。そのつど、みんなで探すのなら、キャディーさんが”専属”で付いてもらったほうが助かります。

 あと、知らないメンバーと回る時に間が持つ、という利点もあります。キャディーさんと会話をしていれば、ピリピリしませんし。

 けど、キャディーフィーは平等に払いますから、本音を言えば、キャディーさんをたくさん使った者勝ちだな、と思いますね。

 どうです、”日本式ゴルフ”も案外優秀じゃないですか。この文化を大切に守って、後世に伝えていきたいですね。