2017年「全豪オープン」以来の四大大会本戦出場はならなかった。添田豪(日本/GODAI)は予選1回戦を6-1、6-2の圧勝、同2回戦でも実力者のティーモ・デ バッカー(オランダ)を3セットで…

2017年「全豪オープン」以来の四大大会本戦出場はならなかった。添田豪(日本/GODAI)は予選1回戦を6-1、6-2の圧勝、同2回戦でも実力者のティーモ・デ バッカー(オランダ)を3セットで振り切った。しかし、予選決勝で自己最高36位、33歳の試合巧者シモーネ・ボレッリ(イタリア)に4年ぶりの全仏本戦への道を断たれた。

添田の勝ち上がりは素晴らしかった。もともと、相手の出方を見ながら試合を進め、たとえセットを落としても最後に笑うというタイプだ。ところがこの大会では、イメージを覆す積極的なテニスを見せた。

自己最高40位のデ バッカーとの予選2回戦は出色だった。ダウン・ザ・ラインへの展開がとにかく早かった。少しも躊躇もなかった。出方を見るどころか、相手のボールが少しでも甘くなるのを待ち構えた。

添田はモデルチェンジの背景をこう語る。「クレーコートでは、固定観念的に"つなげる"ものというイメージがあった。あまりクレーの経験も多くなかったので、そういうイメージを持っていたんですけど、今大会の前に出た中国のクレーの大会で、積極的にやっていかないとポイントが取れないというのをつかんだ。特にクレーだと、自分から打っていかないとどんどん押し込まれてしまう。ハードコートとかグラス(芝)コートより積極的にいかないといけないと思っていました」

固定観念と言うが、どちらかと言えば、これが一般的な考え方だ。粘って、一本でも多く返し、というのがクレーの古典的な戦い方。それを固定観念と切り捨て、「自分から打っていかないと」「ハードコートより積極的に」と見定めたというのが興味深い。

要は、自分自身のプレーにそれくらいドラスティックな変化を求めたのだ。 「積極的にいかないと勝てないというのもある。年齢的に、ロングラリーで勝っていくというのはあまり得策ではない。ポイントを早く取るという戦術を取り入れて、それがはまっている感じです」。

この9月で34歳になる。以前は粘り勝ち、体力勝ちをねらう試合もあったが、今はその選択肢はないと思っている。また、相手のプレーを読み解き、戦術を綿密に組み立てるような理詰めの試合運びは「昔ほどは」重視していない。

「相手と勝負というより、自分との勝負というか。その1ポイントの勝負に対してすごく集中できている。今まではどうやってポイントを取ろうとか、どうやって試合に勝とうとかと考えていたが、今は積極的にいったうえでの勝負を楽しんでいる。純粋にショットを楽しめている。純粋にテニスで勝つ、積極的に攻撃的に勝つというのが今のゲームプラン」

添田が言い切った。変われば変わるものだ。34歳のベテランがここまで変身できるものなのか。いや、ベテランだからこそ、過去のスタイルを封印し、新しい戦い方に挑む勇気と決断力を得たのかもしれない。

ボレッリとの予選決勝では、強力な片手バックハンドを持つ相手にラリーの主導権を握られる場面が多かった。それでも、第2セットは相手に一度もブレークポイントを与えず、互角の展開に持ち込んだ。5‐5からのリターンゲームで添田は初めてブレークポイントを握る。しかし、2度目のブレークポイントで、ウィナーをねらったフォアの強打は、わずかにラインを割った。

ブレークならず。結局、これが最初で最後のチャンスとなった。添田がこのショットを振り返る。

「つなげていても、あの体勢からだとカウンター食らっちゃうと思ったので、あそこはエースを取りにいくことしか考えていなかった。結果は紙一重(のアウト)でしたけど、あのショットはいい選択だったと思います」

「1ポイントの勝負」に敗れ、結果的に試合にも敗れた。しかし、戦い方には少しのブレもなかった。他のサーフェスでも、この方向性は変えるつもりはないという。

「コートが替わると展開も変わり、難しいところもあると思うんですけど、ただ、この姿勢は変わらずやっていきたい」

今の世界ランキングは201位。四大大会の予選枠にはぎりぎりの位置だが、ランキングには固執していない。ランキングポイントとのせめぎ合いは「もうやり尽くした」と思っている。 「いかに勝負を楽しむか、自分自身が本当に勝負できているか」。34歳の目はその一点を見据えている。(秋山英宏)

※写真は2018年「全豪オープン」予選の添田

(Photo by Robert Prezioso/Getty Images)