「ATP1000 マドリード」(スペイン・マドリード/5月5~12日/クレーコート)で、現役最後の戦いを終えたダビド・フェレール(スペイン)。試合を終えたその顔には清々しい笑顔と涙が見え、偉大…

「ATP1000 マドリード」(スペイン・マドリード/5月5~12日/クレーコート)で、現役最後の戦いを終えたダビド・フェレール(スペイン)。試合を終えたその顔には清々しい笑顔と涙が見え、偉大な選手との別れを惜しむ地元の多くのファンからは、盛大な拍手が贈られていた。

ATP(男子プロテニス協会)公式サイトによると、試合後にフェレールは「とても感動的な夜でした」と現役最後の時を振り返った。

「これまで経験してきたどの重要な瞬間とも、全く違っていました。私はそうなるとは予想もしていませんでした」

試合は現地の22時少し前に開始。それでも満員の観衆で埋め尽くされた会場は、フェレールコールでまるでサッカースタジアムのような熱気であふれていた。フェレールは次のように話した。

「今日のような形でお別れができるとは全く思っていませんでした。昨年の間ずっと、高いレベルでプレーしようとしていました。明日は仕事なのにも関わらず、みなさんが私を応援するためにここに居てくれました。このことは私の心の中に残り続けるでしょう。私は決して忘れません」

「私は試合に負けてしまったのだけれど、あまり悲しくはありません。これまで試合に負けた時はいつも、とても残念でした。今日はそうではない。今日を楽しみたいし、今日のような日を楽しむことができてとても嬉しいです」

フェレールはこの試合、次世代No.1候補のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)を相手に、第1セットは途中ゲームカウント4-1とリード。しかし次第に足が動かなくなり第1セットを落とすと、第2セットも挽回はならなかった。それでもフェレールは、最後のポイントまでボールを追い続ける姿勢を見せた。

フェレールは「自分がプレーしたいレベルでは、フィジカル的に2試合連続以上はできないというのが現実です。そしてそれが、テニス選手としての人生が終わろうとしていることを告げた兆しの一つでもありました」と明かした。

「でも私は、引退する場所と時を選ぶことができ、私の大好きな人たちと共有できたことは本当に幸運でした」

2000年にプロ転向したフェレールは、2019年4月で37歳に。これまで約19年にわたってトッププロとして活躍してきた。キャリア通算734勝377敗、ツアータイトル27個を獲得、キャリア最高順位は世界3位だ。

身長175cmと、男子プロテニス選手の中では小柄な方だが、どんな球も諦めずに追いかけるその不屈の闘志で、世界中の多くのテニスファンに愛されてきた。

「マドリードでは優勝できませんでした。ローランギャロス(全仏オープン)でも優勝はできなかった。ぜひとも勝ちたい大会で優勝できませんでした。トロフィーは家にあるけれど、それらは単にトロフィーであり、モノなんです」「私が本当に得たものは、みなさんが私に示してくれた愛です。いつも私の心の中に。本当にありがとうございました」

スタンディングオベーションで見送られるなか、偉大な選手がテニスコートを去った。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000 マドリード」でのフェレール

(Photo by Alex Pantling/Getty Images)