「3回 WBSC ベースボールワールドカップ in いわき」の予選リーグ4日目だった1日、侍ジャパンU-15代表はチェコと対戦した。日本は15-0と快勝したが、その中でも6番・サードでスタメン出場した鈴木琉晟がクリーンアップに負けず劣らずの…

「3回 WBSC ベースボールワールドカップ in いわき」の予選リーグ4日目だった1日、侍ジャパンU-15代表はチェコと対戦した。日本は15-0と快勝したが、その中でも6番・サードでスタメン出場した鈴木琉晟がクリーンアップに負けず劣らずの存在感を示した。

■チェコ戦では主軸に負けぬ2安打3打点「単打で1点でも多く取れるように…」

 「3回 WBSC ベースボールワールドカップ in いわき」の予選リーグ4日目だった1日、侍ジャパンU-15代表はチェコと対戦した。日本は15-0と快勝したが、その中でも6番・サードでスタメン出場した鈴木琉晟がクリーンアップに負けず劣らずの存在感を示した。

 1戦目オーストラリア戦以来のスタメン出場となった鈴木は、第1打席から魅せた。

 「3連勝してきて、全勝で決勝ラウンド進出を決めたかったので、チームのために長打ではなく単打で1点でも多く取れるように、コンパクトに振ろうと思いました」

 初回、ボークと内野ゴロの間に得点し、いきなり2-0とリードを奪った日本。2死三塁と追加点のチャンスで鈴木に打席が回ってきた。カウント3-1からの5球目、106キロの内角高め直球にバットを振り抜いた。単打を狙ったシャープなスイングで、打球は左中間を真っ二つ。この試合、侍ジャパン初のタイムリーヒットになった。

 8-0から2点を追加した5回は、1死満塁の絶好機にライトへ2点適時打。「追い込まれたので、チームで徹底している“追い込まれたらノーステップ”で遅い球を待ち、きっちり右方向意識で変化球に対応することができました」と、狙い通り外角チェンジアップを捉えた。この回7点を奪う猛攻をつないだが、「追い込まれる前のストレートをきっちり捉えていれば。ファウルにしてしまったので」と反省も忘れなかった。

■内外野から投手、捕手までこなす守備のスペシャリスト

 選手登録は捕手だが、オールラウンドプレーヤーだ。1戦目に続き、この日もサードでスタメンに名を連ねた。2回までサードを守り、3回裏の守備からレフトに就いた。「どこでもきっちりこなせるように練習してきたので大丈夫」と鈴木。グローブは投手用、内野用にキャッチャーミットとファーストミットを持参。カバンに入りきらず外野用は自宅に置いてきたため、この日はセンターを守る稲生賢二に予備のグローブを借りた。

 3試合連続でレフトのスタメンだった植田太陽が、31日の試合で右足に自打球を当てて欠場。その穴を埋める形となったが、鹿取義隆監督は「起用に応えて、サードからレフトまでやってくれたのでいろんなところで使えるのかな、という感じがある。植田選手が足を痛めていたので、良いところで活躍をしてくれてよかった」と労った。

 自宅はいわき市から車で約1時間離れた茨城県ひたちなか市にある。所属する勝田リトルシニアが開いた壮行会のお礼に約100着のオリジナルTシャツを作製。連日、家族や親族、知人が、お揃いのTシャツを着て声援を送る。チーム関係者に加え、普段通う勝田三中の先生など、多い日では40?50人の応援があったという。2、3戦目は出場機会はなかったが、応援をエネルギーに変えて、出場した2試合で6打数3安打5打点と結果を出している。

 姉と妹2人を持つ4人姉弟の長男。高校球児だった父・幹生さんは「4才くらいから、どうかな、と思って野球をやらせてみたら楽しんでやっていた」と話す。

 「これは、と思って、小学1年生の時に軟式と硬式を見せて、自分でどちらをやりたいか選ばせました」

■野球のために一家で引っ越し、期待に応えてU-12、U-15と連続代表入り

 リトルリーグに従兄がいたこともあり、硬式野球を始めた。ところが、同学年は鈴木を含めた2人だけ。チーム全体の人数も少なかったため、小学6年や中学1年の選手と同じ練習をしてきたという。しかも、小学3年の時に同級生が辞め、ついに1人になってしまった。家族会議の結果、茨城県大子町で生まれ育った鈴木は、ひたちなかリトルリーグでプレーするために家族全員でひたちなか市へ引っ越した。

 自ら意欲的に練習に励み、小学6年時にはU-12日本代表入り。そして、U-15を目指してきた。「練習は毎日やらないと気が済まない子。熱があってもやるくらい。38度を超えなければ、走りに行ってしまいます。『ちょっと走ってくる』と出て行くと1時間半くらいは帰ってきません」と母・恵さん。学校では陸上部に所属し、800メートルでは茨城県大会で5位になった実績も。県選抜入りもした俊足が自慢でもある鈴木は、植田太陽とともに2013年のU-12に続く侍ジャパン入りを果たした。

 2、3戦目と出番がなくても、きっちりとチームに貢献した鈴木。父・幹生さんは「自分から声をかけてチームを盛り上げ、チャンスをもらった時には活躍できるよう、集中してやってもらえれば」とエールを送る。母・恵さんも「ベンチでスタンバイしている選手も、試合に出ている選手も、役割があると思うので、与えたらお仕事をこなせればいいですね。欲をいえば、U-12の時はブロンズメダルだったので、銀……、いや、ゴールドメダルは欲しいなという気持ちはありますね」と期待を込めた。

 両親の思いを一身に受けた鈴木は「予選リーグは大差で勝つことが多かったので、またここから気を引き締めて、全勝でスーパーラウンドに行けるように。まずは目の前の明日の試合をしっかり勝ちたいと思います」と健闘を誓った。

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi