J1第10節、ベガルタ仙台は川崎フロンターレとアウェーで対戦し、1-3で敗れた。試合終盤に一矢報い、なおも反撃を試…

 J1第10節、ベガルタ仙台は川崎フロンターレとアウェーで対戦し、1-3で敗れた。試合終盤に一矢報い、なおも反撃を試みたものの、J1王者相手に3点も先行されたのでは、敗戦は当然の結果だろう。

 多少の欲目を加えれば、勝敗の差は紙一重、と見ることも可能な試合ではあった。

 試合序盤の前半13分に早くも先制を許した仙台だったが、前半から「ボールを握る(保持する)ことをコンセプトにやっている」(DF永戸勝也)という攻撃は悪くなかった。

 最終ラインからパスをつなぎながら、2トップがDFラインの背後やサイドのスペースをうまく使い、深く攻め込む。そんな形が何度も作れていた。

 そして、敵陣でボールを失ったあとは、すぐに守備に切り替えることもできていた。高い位置でボールにプレッシャーをかけ、パス攻撃を得意とする川崎のミスを誘う。そんな場面も見ることができた。



フロンターレにも劣らぬ攻撃を見せたベガルタだったが...

 それだけに、前半37分の川崎の追加点が痛かった。と同時に、不運でもあった。

 それは、川崎の武器である、緩急自在のパスワークから生まれた流麗なゴールだった。だが、映像を見直すと、右からのクロスをゴール前で合わせたMF長谷川竜也は、オフサイドポジションにいた。本来なら、ノーゴールのはずである。

 たられば、ではあるが、このゴールがなかったら……。あるいは、追加点を許す前に、チャンスを生かして同点に追いついていれば……。いや、追加点までは仕方がないとしても、前半のうちに1点を返していれば……。

 どこかひとつでも状況が変わっていれば、勝負はどう転んでいたかわからない。実際、シュート数は川崎の11本に対し、仙台は9本。CKの数では4本と、川崎の3本を上回った。数字のうえでも、仙台が川崎に大きく見劣る試合をしたわけではないことが示されている。

 とはいえ、それは仙台側の視点に立ち、前向きな要素を拾い上げての話である。あくまでも中立的に試合を俯瞰すれば、結果は妥当。それどころか、よく3失点で済んだ試合だと言ってもいい。

 渡邉晋監督が、「守備の部分で、我々が一番やりたいことをなかなかやれない前半だった」と振り返ったように、仙台の最大の敗因は、間違いなく守備の緩さにあった。渡邉監督が続ける。

「後ろに重心がいってしまい、下がらざるを得なくなってしまった。その時間が長くなってしまい、押し込まれる時間が増えたのはもったいなかった」

 指揮官の言葉どおり、仙台の守備は立ち上がりから積極性を欠いていた。どこからプレッシャーをかけ、どこでボールを奪うのか。そんな基本的なことがチーム内で共有されていないかのように、パスをつなぐ川崎に易々と前進を許した。

 その結果、DFからボランチ、ボランチからサイドへと面白いようにパスをつながれ、しかも、バイタルエリアでさえボール保持者にプレッシャーをかけられないため、最終的にはDFラインの裏へもパスを通されてしまう。永戸が振り返る。

「川崎は両サイドバックが高い位置を取ってくるけど、そこに(仙台の両サイドハーフが)ついていくのか、MFの4人のラインとDFの4人のラインがバランスを保つのかが、はっきりしなかった。(後者を選択し)バランスを保れていれば、もっと前からプレッシャーをかけられたと思う」

 センターバックのDF常田克人も、「(川崎に下げさせられたというより)自分たちで下がってしまった。2、3mでもラインを上げられれば、違っていたと思う」と振り返ったが、チーム全体として、ただただ川崎のパスワークを見ているだけの状態になってしまった以上、DFばかりを責められない。

 繰り返すが、仙台の攻撃は悪くなかった。一度敵陣まで押し返すことができれば、自分たちのリズムで試合を進めることもできていた。0-1の段階で同点に追いつく可能性はあったし、0-2になってからは、むしろ川崎以上に攻勢の時間を作った。

 だが、その一方で、ひとたび川崎にボールを持たれると、あまりにも脆かった。得点できそうな雰囲気があったのは確かだが、さらに失点を重ねそうな雰囲気が、それ以上にプンプンと漂っていた。

 そして、試合は実際、そのとおりになった。

「そのあたり(重心が下がったこと)を少し整理して、背中を押して、(前へ)出ていこうとすれば、高い位置で実際にボールを取れるので、それが試合の頭からやれるようになると、また違った結果が出せたのかなと思う」

 そんな渡邉監督の言葉どおり、仙台は後半と言わず、前半途中から少しずつ重心を前へと移した。川崎がMF家長昭博、MF中村憲剛らを欠いていたとはいえ、徐々に相手の持ち味を打ち消す守備ができるようになっていった。

 しかし、冷めた言い方をすれば、勝負が決してから目を覚ましたのでは、遅いのだ。

 仙台は前節、ガンバ大阪に2-1で勝利し、今季J1での2勝目を手にしたものの、それが選手に自信を与え、積極性をもたらすことはなかった、ということになる。

 2014年シーズン途中から仙台を率い、6季目を迎えた指揮官は、「0-3から1点を返したところや、これ以上点はやらずに踏ん張ろうという選手の姿勢は次につながる」と語ったが、前向きな言葉を鵜呑みにするのは難しい。

 仙台の最近5シーズンのJ1順位は、14位、14位、12位、12位、11位。着実に順位を上げてきたとも言えるが、常にふた桁順位に低迷してきたとも言える。まして今季は、MF奥埜博亮、MF野津田岳人、DF板倉滉ら、昨季の主力を移籍によって失っている。その結果、ここまで2勝7敗1分けと大きく負けが先行。順位も前節終了時の16位から17位に下がり、ついにJ2自動降格圏に足を踏み入れた。

 仙台にポジティブな要素があったことは否定しない。長いJ1のシーズンは、まだ3分の1弱を終えただけである。

 だが、楽観的になり過ぎれば、7カ月後に待っているのは、最悪の結末である。