多くのスポーツでは試合中に監督やコーチが作戦を伝えたりするためにタイムを取ることができますが、テニスでタイムを取ることができるのはどんな場合で、何回許されるのでしょうか。今回はタイムについて説…

多くのスポーツでは試合中に監督やコーチが作戦を伝えたりするためにタイムを取ることができますが、テニスでタイムを取ることができるのはどんな場合で、何回許されるのでしょうか。今回はタイムについて説明します。

■タイムを取れる場合は2つ

テニスでタイムを取れる場合は2つ。試合中に病気やケガなど身体の不調が起こった場合に治療を受けるためのメディカル・タイムアウトと、トイレや、女子の場合は着替えをするためのタイム(トイレット・ブレイク、チェンジ・オブ・アタイア・ブレイク)です。

■メディカル・タイムアウトにはトレーナーの判断が必要

病気やケガなど身体の不調がある場合、選手はメディカル・タイムアウト(MTO)と呼ばれるタイムを取ることができます。MTOを取るためには、選手はまず次のコートチェンジかセットの終わりに治療の必要性をトレーナーに判断してもらうことを、主審に申請しなければなりません。そしてトレーナーが治療を必要だと判断すれば、3分間のMTOを取ることができます。その際に、やはりトレーナーがそうすべきと判断すれば、コートを離れて治療を受けることもできますが、時間は同じ3分間です。ケガが2ヶ所以上ある場合には3分間のMTOを最大2回続けて取ることもできます。MTOは、ケガ/病気1つにつき1回だけ認められます。チェンジコートの90秒間及びセットとセットの間の120秒間の間であれば、MTOを取らずに治療を受けることも可能です。

けいれんには、MTOは認められません。ただし、チェンジコートの90秒間及びセットとセットの間の120秒間の間に治療を受けることは許されています。

■トイレット・ブレイクは明確な時間制限なし!

もう1つのタイムは、トイレに行く、及び女子の場合は着替えのためのタイムです。これは何分とはっきりとは決まっておらず、「妥当な(reasonable)」時間、となっています。1試合に許される回数は、四大大会では女子シングルス(3セット)でも男子シングルス(5セット)でも1人2回まで、タイミングはセットとセットの間、と決められています。ただ、違うタイミングや既に2度取ってからまたタイムを取る必要ができた場合は、主審に言ってトイレに行くことはできますが、チェンジコートの90秒、セット間の120秒という時間を超過した場合には、超過時間によって警告やポイントを失うなどの罰則を科されてしまいます。

■戦略的タイムあり?

2018年、ダニール・メドベージェフ(ロシア)がステファノス・チチパス(ギリシャ)との試合後に「(チチパスは)5分もトイレに行った」などと大声で怒りを露にしたことがありました。タイムに関するルールには、「トイレット・ブレイクはトイレに行くという目的のもの」で、MTOもどちらも「戦略的利用」をしてはいけない、とはっきり書かれています。とはいえ選手たちも人間。相手が調子の波に乗って手がつけられない、あるいは自分がなぜだか不調で何をやってもうまくいかない、というような時には、心を落ち着け、流れを変えるためにトイレ休憩を取りたい、と思ってしまうこともあるかもしれません。コート上では全てを一人で解決しなければならないテニス選手たちは、フェアプレーの精神も、また相手の行動に惑わされないタフさも必要とされるのでしょう。

(文/月島ゆみ)※写真は2018WTAファイナルズでMTOを受ける大坂なおみ(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)