先週、東京都トーナメント準決勝・東京ユナイテッド(東京U)戦(◯1−0)で待望の白星をつかみ、公式戦の連敗を2で止めた早大。この日は関東大学リーグ戦(リーグ戦)初勝利を目指して、昇格組ながら首位に立つ中央大と対戦した。FW蓮川雄大(スポ4…

 先週、東京都トーナメント準決勝・東京ユナイテッド(東京U)戦(◯1−0)で待望の白星をつかみ、公式戦の連敗を2で止めた早大。この日は関東大学リーグ戦(リーグ戦)初勝利を目指して、昇格組ながら首位に立つ中央大と対戦した。FW蓮川雄大(スポ4=FC東京U18)の先制弾でリードして前半を折り返したが、その後複数訪れた決定機を生かせないでいると、試合終盤に同点とされ1−1のドロー。すんでのところで勝利を逃したが、今季初の勝ち点を得る結果となった。

 この日はMF山下雄大(スポ1=柏レイソルU18)、FW西堂久俊(スポ1=市立船橋)のルーキーコンビをスタメンに抜てき。ここまでリーグ戦1得点にとどまっている攻撃陣の活性化を促した。すると13分、敵陣中央でボールを持った山下を起点に西堂がチャンスを演出。続く18分には先週の東京U戦から右サイドでプレーするFW武田太一(スポ4=ガンバ大阪ユース)のクロスに、同じく東京U戦から最前線に配置された蓮川が頭で合わせた。いずれもゴールこそならなかったが、立ち上がりから主導権を握ることに成功した。そして26分、早大が先手を取る。相手のロングボールをDF阿部隼人(社3=横浜F・マリノスユース)が跳ね返し、すぐさまカウンター。西堂からボールを受けた山下が一気に最前線の蓮川へボールを送り、決定機を生み出す。蓮川のシュートはGKの好セーブに阻まれたが、これで得たCK。キッカーの阿部が相手の意表を突くグラウンダーの速いボールを送り、フリーの山下がシュートを放つ。相手DFにブロックされるも、蓮川がこぼれ球にいち早く反応し、ゴールに叩き込んだ。


スタメンに抜擢され、存在感を示した山下

 リードを奪った直後には西堂、蓮川、武田の位置関係を入れ替え、守備の強度を高めにかかる。前線から連動したプレスを仕掛け、卓越した個人技を持つ中央大FW大久保智明(3年)へのパスコースをシャットアウト。ボールホルダーに対して複数人で圧力をかける果敢な守備で中央大の攻撃を封じ、反撃の糸口すらつかませない。勢いそのままに突き放したい早大であったが、山下と蓮川のシュートがそれぞれバーを叩くなど、あと一歩のところで追加点を奪えずにハーフタイムを迎えた。

 前半の良い流れのまま進めたいところだったが、後半に入ると試合の構図はボールを握り圧力をかける中央大と、押し込まれてカウンターに活路を見出す早大へと変化していく。「リーグ戦でまだ勝てていないという空気感」(外池大亮監督、平9社卒=東京・早実)によって守勢に回る時間が増え、大久保のサイド突破とFW加藤陸次樹(4年)を中心に危険なかたちをつくられる。それでもDF大桃海斗主将(スポ4=新潟・帝京長岡)を中心とした最終ラインの粘りやGK山田晃士(社3=浦和レッズユース)の好セーブでゴールを割らせない。後半も半ばになると、再び蓮川を1トップに据え、前線に収めどころをつくる。これが奏功し、武田の斜めのボールから蓮川が決定機を迎えるなど試合の流れを引き戻した。しかし、勝ち点3獲得が目前に迫りかけた85分。中盤からのフィードに抜け出した加藤に一瞬の隙を突かれて同点とされてしまう。その後は勝ち越し点を狙う両者が前がかりになり、オープンな展開に。最後までゴールに向かっていったが、1−1のまま試合終了の笛が鳴り響いた。


梁の交代で攻撃の流れを変えるも、決定的なチャンスはつくれず

 先週の東京U戦から、固定されつつあった前線に変化を加えていた早大。これまで1トップの位置でプレーしていた武田を右サイドに、最前線に蓮川を配置した。これにより前線で起点となれる場所が2つに増え、過去2節と比較してゴールに直結するプレーの数が格段に増加。また、この日初スタメンを飾った山下は、最後方のビルドアップからアタッキングエリアでの仕上げの部分まで積極的にボールに絡み、堂々たるプレーを披露した。チーム全体のシュート数も今季最多の10を数え、試合通じて多くの決定機を生み出せたことは今後の戦いに向けても自信となるはずだ。だが最終的に1得点にとどまったことで、フィニッシュ精度の課題解消までには至らず。結果として勝ち点『2』を失った格好となった。それでも試合を重ねるごとに「確実にチームは向上している」(外池監督)のも事実。昨季王者復権の時は、もう手の届くところまで来ている。


スターティングイレブン

★ようやく生まれた、リーグ戦初ゴール


得点を挙げ、力強くよろこぶ蓮川。待望のゴール!

 待望のリーグ戦初ゴールが生まれた。27分、山下が放ったシュートのこぼれ球が蓮川の足下へ渡ると、迷いなく左足を一閃。得点力不足に苦しんでいた早大に光明をもたらす、値千金の先制点を決めた。その後も優れた戦術眼を武器に攻撃を活性化させ、中央大にとって最大の脅威として90分戦い続けた。追加点を奪えないまま引き分けに終わり、フォア・ザ・チームを心情とする蓮川にとって手放しで喜べる結果とはならなかったが、本人にとっても早大にとっても大きな意味を持つ得点となったのは間違いない。次に狙うは、チームを勝利に導く殊勲のゴール。度重なるケガを強靭な精神力で乗り越え、ピッチに舞い戻ってきた『不撓の戦士・蓮川雄大』。完全復活の時は近い。

(記事 森迫雄介、写真 大山遼佳、菅沼恒輝)


第93回関東大学リーグ戦
早大1-0
0-1
中大
【得点】
(早大)27’蓮川 雄大(中大)85’加藤 陸次樹
早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK16山田 晃士社3浦和レッズユース
DF鍬先 祐弥スポ3東福岡
DF杉山 耕二スポ3三菱養和SCユース
DF◎3大桃 海斗スポ4新潟・帝京長岡
DF阿部 隼人社3横浜F・マリノスユース
MF金田 拓海社4ヴィッセル神戸U18
MF34山下 雄大スポ1柏レイソルU18
→77分19田部井 悠スポ2群馬・前橋育英
MF栗島 健太社4千葉・流通経大柏
FW武田 太一スポ4ガンバ大阪ユース
FW33西堂 久俊スポ1千葉・市立船橋
→HT10梁 賢柱スポ3東京朝鮮
→90分12大里 優斗社4鹿島アントラーズユース
FW11蓮川 雄大スポ4FC東京U18
◎=ゲームキャプテン
監督:外池大亮(平9社卒=東京・早実)
コメント

外池大亮監督(平9社卒=東京・早実)

――きょうの試合結果をどう捉えていますか

時間帯や、ミスが目立ってきたのも考えるともったいないという印象のゲームであったのは間違いないので、勝ち点3を逃したといえるかもしれません。しかしトータルで振り替えると、0を1に積み重ねることができ、確実にチームは向上しているので、その点では勝ち点1に大きな意味を感じています。

――右に武田、左に蓮川を置いたのは攻撃の活性化を狙いとしていたのでしょうか

守備のところのリズムを考えていました。他にもサイドのところに優位性をつくるというのもありました。彼ら二人の特徴としてはサイズもあるし、突破力もあるしポイントになれるので。前半は西堂もいいチャレンジをしてくれていたと思います。今チームにけが人が多くいる満身創痍の中で、新しい力がチームの力になればいいかなと思っています。

――絶対狙い通りのプレーができているように見えました

そうですね。セットプレーでも狙っていたものが出せましたし、その後もいくつかのチャンスがありました。ですが、ああいったところでしっかりやり切る力、もう一つ取りに行く力が欲しかったです。後半もチャンスがありましたが、終盤のところはリーグ戦でまだ勝てていないという空気感でどうしても受け身の体制に回ってしまっていたと思います。そこはなかなかサッカーの神様も簡単には大きな一歩を進ませてくれないな、と感じました。ああいったところをどう突き詰めていくのかが今後戦う上ではテーマになってきますね。そして改めて厳しい試合を我々は戦っている、と実感しました。自分たちが早稲田として戦うべき姿は表現できたと感じているので、良い流れは継続してゴールデンウイークの残りの試合もしっかりやっていきたいです。

――終盤はウラを狙われる場面も多かったですが

向こうも勝たないといけない状況でしたからね。本来、中央さんはああいう攻めのかたちではないと思うので、ああいう攻め方にしたという点では逆に成功ではありましたね。うちがあそこで対応しきれなかったのが悔しいですね。GKとの連携などもう一度修正していきたいです。ただあの時間帯になって受け身になってしまった空気感がああいう状況を生み出してしまった大きな原因だと思います。

――交代の意図を教えてください

西堂に関しては彼の特徴を非常によく出せていたのですが、守備のところで攻略されていたので、それを改善する意味で武田と蓮川をサイドにして真ん中に梁を入れました。そうすると今度は逆に真ん中にボールが入らなくなってしまいました。今後どう改善するかは課題ですね。山下は途中で足を痛めたのでリフレッシュしないといけないと思って、いくつか選択肢があった中で田部井を入れました。栗島と金田でダブルボランチを組ませて、相手の選手にプレーさせないようにしてくれました。両サイドに上手な選手がいましたが、そこに対してしっかりケアができていた反面、最後までもう少し我慢ができればよかったですね。

――守備の修正が試合を通してできているように見えました

大桃中心に、チームとして色々高みを目指して攻撃的なイメージをもっています。それによって失いかけていたチャレンジ・アンド・カバーのような守備の基本的な本質がようやく徹底されるようになってきました。早稲田は当たり前のことを当たり前にできるチームであるべきだと思っているので、そこに気付けているのは大きな基準ですね。そこを大事にして継続してやっていけば、きょうのような失点は振り返った時に大きなものになってきます。

FW蓮川雄大(スポ4=FC東京U18)

――リーグ戦初ゴールおめでとうございます、ゴールシーンを振り返って

セットプレーは中央大学さんもここ2試合で得点していたので、僕たちも今週はセットプレーで点を取ろうということで(練習していました)。一本目で、トリックプレーで山下がシュート打つというシーンだったんですけど、ちょうどこぼれ球が僕の前に来て。外池さんから今日の試合前に、テーマの1つとして「押し込む」ということを言われて、ゴールに対して貪欲になれという話を週中でもされていましたし、FWでプロになるならそこにもっとこだわらなければいけないという話をされた中で、気持ちで押し込む場面を表現できたのは良かったと思いますね。

――リーグ戦でようやく得点できたという点については、特別な気持ちがあったりしますか

でもやっぱりチームの勝利というのが必要なことですし、勝てなかったことに対する悔しい気持ちが大きいです。先制点を取ったあとに2点目を取るチャンスも僕含めてあったので、今年チーム通して得点力不足と言われている中で、2点目を取れなかったことが引き分けに直結してしまったと思います。

――先週の天皇杯予選から最前線に蓮川選手、右に武田選手という配置でスタートしていますが、それは前線に起点を増やすためですか

そうですね、前にポイントを2つ置けるという狙いがあります。太一が右で起点になれるので、そこで僕のところで背後の動きだったり、ゴールに直結する動きを出していくことで相手の脅威になるかなと。あとカウンターを仕掛ける際に自分がアクションを起こすところを中盤の選手が見てくれているので、いくつかそういうチャンスをつくれたのは次につながると思います。ただそこを決め切らないと試合に勝てないと思うので課題は残りました。

――現にきょうは、武田選手が右サイドで収めてから中央に供給というかたちが目立ちましたね

そうですね、あそこも練習から何度もトレーニングを重ねているかたちでしたし、太一からの斜めのボールから1つ決定機があったので、あそこを決め切らなきゃなと思います。

――きょうは何度か前線の3人の位置関係が入れ替わっていたが、監督からの指示なのか、それとも状況ごとに自分たちで判断していたのか

守備のところからしっかり試合に入るのが早稲田の強みでもあるので、一応試合の流れを読んで(判断していました)。(先制直後の場面は)僕と太一のところで一度守備を固めるという意味で、サイドハーフ起点を置いてということと、前半は西堂の左サイドのところで少し対応が難しかった部分があったので、僕が(左サイドに)入って太一が真ん中に移り、西堂が右というのは監督からの指示で動いたところです。

――相手の大久保選手が1人で持っていけるプレーヤーで、対応には手を焼いたと思いますが

前半はしっかり前からプレスを掛けて、8番の大久保選手にボールが入らないかたちをつくれていたのですが、後半に入ってから自分たちが守備のところで後手に回って押し込まれてしまったので、大久保選手に良いかたちでボールが入ってしまうシーンが増えてしまいました。オン(ザ・ボール)の質がかなり高い選手だったので、そこはもっとゲーム中に改善していかなければいけなかったと思います。

――ゾーンで守るというより、ボールホルダーに人数をかける守備をしていた印象があります

まあそうですね、ゾーンで守るのではなく相手選手にアタックするっていうのはチームとして共有していましたし、スペースに人がいるだけでは守れないという意識はチーム全体としてあったので、細かいところですけどもう数センチ寄せていれば相手にロングボールを蹴られなかったり、縦パスをカットできたりした場面はたくさんあったので、そういうところは守備の課題が残ったかなと思います。

――天皇杯予選は順調に勝ち上がりリーグ戦でも勝ち点は取れたということで、チーム状態は上向いてきたのでは

徐々に良くなってきている部分は多いと思いますけど、やっぱりきょうのような試合を勝ち切っていかないと今後上の順位に上がっていくのは難しいと思いますし、ゴールデンウィークの2連戦、専修と明治との試合はとても大事になるので、そこ2つで勝ち切って上に食らいついていきたいと思います。

MF山下雄大(スポ1=柏レイソルU18)

――試合を振り返って

前半を通しては苦しかったですが、自分自身はうまくボールに絡んで前に配球できたこともあり、決定機は決め切れませんでしたが、悪くはなかったです。

――初スタメンでしたが

球際や切り替えの場面で頑張ろうと思って臨みました。

――プレーで意識したことはありますか

常にボールに絡んで自分のところから縦パスや逆に展開することを意識していました。

――攻撃の起点となる場面が多く見られました

相手からボールを奪った瞬間のカウンターなどはチャンスになっていたので、奪った瞬間に前の選手を見てシンプルに背後に蹴ることを意識しました。

――今後の意気込みをお願いします

きょうは勝ち切れませんでしたが、勝敗は、決め切ることや守りきることといった際の部分で決まってくると思うのでそういったことを意識して次は頑張りたいと思います。