サッカーファンと野球ファンを1つにする、競技の垣根を超えた「クロス・プロモーション」が埼玉県で開催される。■埼玉県で開催される埼玉西武ライオンズ&大宮アルディージャのコラボ企画 サッカーファンと野球ファンを1つにする、競技の垣根を超えた「ク…

サッカーファンと野球ファンを1つにする、競技の垣根を超えた「クロス・プロモーション」が埼玉県で開催される。

■埼玉県で開催される埼玉西武ライオンズ&大宮アルディージャのコラボ企画

 サッカーファンと野球ファンを1つにする、競技の垣根を超えた「クロス・プロモーション」が埼玉県で開催される。

 埼玉西武ライオンズとJリーグクラブの大宮アルディージャは、昨年に引き続き「A×L(エール)!大宮」キャンペーンを行うことを発表した。両チームは「プライドリームス埼玉」の一員として、「スポーツで埼玉をもっと元気に!」をキャッチフレーズに埼玉県内に本拠地を置くスポーツチームと共に活動している。

 日本では野球部は野球を、サッカー部はサッカーだけをプレーして1つの競技を追及する風潮が今でも続いている。一方、米国ではシーズン制でプレーする競技も、ファンとして楽しむ競技も季節によって変わっていく。米国では、シーズンごとに違った競技を楽しむ者が多いことから、競技を超えた「二刀流アスリート」が大学レベルでも多く存在する。

 MLBとNFLの両方でプレーしたことで知られるボー・ジャクソンやディオン・サンダースは有名な話だが、先日殿堂入りを果たしたケン・グリフィーJrも父親であるケン・グリフィーSr.は生活をしていくためにアメリカンフットボールではなく、野球を選んで家族を支えてくれたというエピソードを話していた。最近でも両スポーツでドラフトされていても不思議でなかった選手は多く存在する。2014年のスーパーボウル優勝を果たしたNFLを代表するQBの1人となったラッセル・ウィルソンは2010年コロラド・ロッキーズにドラフト指名を受け、NFL選手となる前はマイナーリーガーだった。

■ドジャースも「クロス・プロモーション」に積極的

 競技が違う2つのプロリーグで活躍したプロアスリートを輩出している米国だが、日本ではそのようなエピソードはまだまだ少ない。最近でこそ傾向は変わってきているが、まだ野球ファンはサッカーを毛嫌いし、サッカーファンは野球を見ないという人も少なくない。

 だが埼玉西武ライオンズがおこなう「A×L(エール)!大宮」のキャンペーンはそんな垣根を越えた取り組みである。埼玉に拠点を置く人をターゲットにアルディージャファンには野球を、そしてライオンズファンにはサッカーを楽しんでもらうために企画を展開する。

 チケット相互割引から限定グッズの配布、そしてマスコットの交流など埼玉在住としては、ちょっと足を運んでみようかなと思わせる取り組みである。

 メジャーリーグでクロス・プロモーションに積極的なのは、ロサンゼルス・ドジャースだ。今シーズンも8月12日にNHLのロサンゼルス・キングスとのタイアップでドジャースタジアムでは「LAキングス・ナイト」が開催される。昨年はこのプロモーション用に販売されたチケットが完売となるほどの人気ぶりだった。

■アイスホッケーの試合をNFLやMLBの会場で行う催しも

 キングスの現役選手たちが始球式で登場し、そしてライト側のパビリオンではキングスファン同士がドジャースタジアムで交流できる場を設けている。そこでは特別なカクテルが振舞われ、この特別チケットを購入したファンに対してはドジャースとキングスのリバーシブルのマフラーまで配布される。

 米国では競技の垣根を越えたスポーツ界での交流が多く、地元を共にする他チームが活躍していれば声を大にして応援し、実際に会場へ足を運んで応援する選手も多い。野球シーズンが開幕した直後には、プロバスケットボールのNBAやプロアイスホッケーリーグのNHLがシーズン終盤を迎えているため、デーゲームの後は多くの選手が応援へ向かうことも多い。

 私もシカゴにいたときには、デーゲームの後に監督が用意したスイートにお邪魔して、NHLの試合を観戦した思い出もある。NHLの試合でのハーフタイムの催しでは、シカゴ・カブスのアンソニー・リゾ選手が“ホッケーのリンクに降り、ゴールを打ち込むことができるか?”とホッケーのショットにチャレンジすることで地元スポーツファンたちを楽しませていた。

 毎年恒例となっている屋外スタジアムで開催されるNHLのウィンター・クラシックではアイスホッケーの試合をアメリカンフットボールのスタジアムや、メジャーリーグのボールパークで開催している。これまでもシカゴのリグレー・フィールド、ボストンのフェンウェイ・パーク、フィラデルフィアのシチズンズバンク・パーク、ワシントンDCのナショナルズ・パーク、そして2017年にはセントルイスのブッシュ・スタジアムで開催が予定されている。

■日本ハムとコンサドーレ札幌の交流も

 最近はボールパークで海外サッカーの試合が開催することも多く、スタジアムでも競技の垣根を越えた興行が展開されている。

 ちなみに北海道では、札幌ドームがファイターズだけでなく、サッカーJ2・北海道コンサドーレ札幌のホームグラウンドとしても活用されている。そして2015年には北海道でもコンサドーレ、ファイターズ、そしてレバンガが3つのプロスポーツを楽しめるセットチケットを販売した。そして今シーズンの4月27日にはコンサドーレに所属する小野伸二選手がファイターズ戦で始球式を投げるなど、更なる交流を深めた。

 8月5日からはリオデジャネイロオリンピック、9月7日からはパラリンピックが開幕。そして2020年の東京へと続いていく。最大のスポーツの祭典は競技の垣根を超え、世界中の人々がアスリートのパフォーマンスに一喜一憂する。

 2020年、さらにはそれ以降も競技の垣根を越えた盛り上がりを日本で創造するためにも、まずはパ・リーグを中心に新たなスポーツ文化の形を彩っていくようなクロス・プロモーションを今後も期待していきたい。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

「パ・リーグ インサイト」新川諒●文