女子国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループ(以下WG)II・プレーオフ(入れ替え戦)「日本vsオランダ」で、日本(ITF国別ランキング17位)は、ホームコートアドバンテージを生かして、オランダ(同14位)を4勝0敗で破った。オランダに勝…

 女子国別対抗戦フェドカップ・ワールドグループ(以下WG)II・プレーオフ(入れ替え戦)「日本vsオランダ」で、日本(ITF国別ランキング17位)は、ホームコートアドバンテージを生かして、オランダ(同14位)を4勝0敗で破った。



オランダに勝利し、よろこぶ(左から)青山修子、土居美咲、奈良くるみ、土橋監督、穂積絵莉、日比野菜緒

 2月にスペインとの1回戦で敗れたため、グループ残留をかけてプレーオフにまわった日本。シングルスで土居美咲(WTAランキング104位、4月15日づけ/以下同)が2勝、日比野菜緒(112位)が1勝を挙げ、3連勝でチームの勝利を確定させて残留を決めた。

 日本の勝利に大きく貢献した土居は、ホッとした表情を浮かべてオランダ戦を振り返り、日本がWGに留まる意義を次のように語った。

「(地域ゾーンと比べて)やっぱりモチベーションが上がります。(オランダ戦での)昨日と今日の勝利は、日本女子テニスにとっては、ものすごく希望のある勝利だったんじゃないかなと思います」

 敗れたオランダ代表のポール・ハールヒュース監督は、日本代表との力の差を素直に認めた。

「はるかに日本チームが勝っていたと思います。あそこのポイントを取っていればとか、ちょっと惜しかったねとか、そういう次元の問題ではなかった」

 土橋登志久監督は、日本がWGに留まるべきチームであることを力強く語りつつ、さらなる高みを目指している。

「チーム日本として、WGに残留すること、そして常にここで戦うことを目標に掲げています。戦う力があることは証明できた。こういう戦いをしていけば、いつかはさらに上を目指していける」

 今回の日本代表は、土居、奈良くるみ(169位)、日比野、青山修子(ダブルス44位)、穂積絵莉(ダブルス31位)で構成され、日本トップランカーの大坂なおみ(1位)は代表を辞退して不参加だった。

 3月下旬のWTAマイアミ大会で大坂は、「次に出場する試合は?」と質問をされた時に、WTAシュツットガルト大会(ドイツ、4月22日~)と答えていた。つまり、大坂は個人戦を優先し、4月からのヨーロッパクレーシーズンに備えることを選択したのだ。

 マイアミには、土橋監督も視察のために足を運んでおり、大坂へフェドカップ出場を要請したものの残念ながらその思いは叶わなかった。土橋監督は、大坂との交渉を「グランドスラムで何回も優勝したロジャー・フェデラーやセリーナ・ウィリアムズといったトップクラスの選手を説得するようなものだ」とたとえた。

「(大坂に)フェドカップへのオファーをしたのは事実ですし、(大坂が)個人の大会を優先したいということで、今回辞退したのも事実です」

 今回、大坂がフェドカップに出場しなかったことで、多くの関係者が気をもんだのが、2020年東京オリンピックへの出場権のことだ。

 プロテニス選手がオリンピックに出場するには、オリンピックとオリンピックの間の4年で、国別代表戦に3回出場しなければならない。さらにそのうちの1回は、オリンピックの1年前、あるいは開催年に代表としてプレーしなければならない。

 大坂は、すでに2017年2月のアジア・オセアニアゾーンIでの地域予選と、2018年4月のWGIIプレーオフ・イギリス戦に出場しているが、東京オリンピック出場条件のためには、あと1回、国別代表戦でプレーしなければならない。

 ただ、ワールドツアーが確立しているプロテニス界にとって、4年に1回オリンピックは、最高峰の大会ではなく特殊なイベントである。

 オランダのエースであるキキ・バーテンズ(7位)も、大坂同様、今回は代表を辞退していた。両国ともエース不在の状況を、ハールヒュース監督は「選手が普段の個人戦の厳しいスケジュールの間を縫って代表戦をこなすとき、そのバランスを保つのは難しい」という見解を示した。

「まず、選手はランキングによって判断されます。それが、最も大切なこと。それを踏まえてスケジュールを立て、どの大会でプレーするのがベストなのか決める現状です。ランキングが上がった選手は、フェドカップやデビスカップ(男子国別対抗戦)に召集されるようになり、当然こなさなければいけない試合数が増えます。国のためにプレーしたいかどうかは一人ひとりの選手が決めるべきだと考えています」

 大坂は世界ナンバーワンになり、当然スケジュール管理が厳しくなる。

 この局面を土橋監督は、「新しいステージに日本も来たのかな。日本にとっては大きな経験だと思います」と、”うれしい悲鳴”であることを強調した。

「チームのスケジュールと考え方を、我々も選手とともに考えながら交渉しますし、(大坂に)出てもらいたいという気持ちはあります。(大坂の)オリンピックの出場権というのも正直かかっている。これからもいいサポートといいコミュニケーションを取りながら進めていければ」

 だが、大坂にかかりきりになることで、引き起こされる別の問題もある。日本代表の一部の選手からは、「全然(他の)選手のことは考えてもらえていない」という不満の声があがった。

 もちろん大坂の実績は評価されるべきで、大坂は日本代表にとって重要な戦力だが、他の代表選手がいなければチームとして成立しないこともまた事実である。

 これまで、シングルスでのグランドスラムチャンピオンを輩出できなかった日本にとっては、大坂の処遇をどうすべきか手探りの部分があるのかもしれないが、大坂の召集を優先するあまり、ほかの選手への代表内示の連絡が遅くなり、あまりにもギリギリになることもある。そのため、選手たちが個人戦のスケジュールを決められないという事態も生じている。

 選手は毎週厳しい戦いをして、ワールドツアーの個人戦で成績を残せなければ、キャリアの死活問題に直結する。そのことをもっと考慮すべきであり、選手たちそれぞれと良好な関係を築いていけるように、日本チームと土橋監督はさらにコミュニケーションをとる必要があるだろう。

 日本は、2020年もWGIIで戦える権利を手にした。現在の日本は、WGでプレーできる力をたしかに持っているが、WGでさらに勝ち上がっていくとなると、大坂と他の選手との実力差を少しでも縮めながら個々の力を引き上げることが必要不可欠であり、そこからチーム全体のレベルアップにつなげていかなければならない。

 そこで、大坂も含めた日本代表チームがどう進化を遂げることができるのか。東京五輪へ向けても注目したい。