男子テニス界ではBIG3が長年頂点に立っているものの、彼ら以外にも素晴らしい選手は多い。BIG3相手に毎回タイトルを争うとは限らなくても、時には名勝負を繰り広げ、このスポーツをより魅力的にして…

男子テニス界ではBIG3が長年頂点に立っているものの、彼ら以外にも素晴らしい選手は多い。BIG3相手に毎回タイトルを争うとは限らなくても、時には名勝負を繰り広げ、このスポーツをより魅力的にしてくれるベテラン・中堅勢を紹介していこう。

今回取り上げるのは、BIG3に次ぐ記録を持つダビド・フェレール(スペイン)。

元世界3位でプロ20年目のフェレールは、通算勝利数が現役選手としてはロジャー・フェデラー(スイス/1198勝)、ラファエル・ナダル(スペイン/929勝)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア/849勝)に続いて4番目に多い731勝。これは、762勝を誇るレジェンドのピート・サンプラス(アメリカ)に迫る数字だ。なお、四大大会での優勝経験がない選手としては歴代最多となる。

四大大会も決してチャンスがなかったわけではない。「全仏オープン」では2013年に決勝進出を果たしたが、ナダルの前に涙を呑んだ。また「全豪オープン」「全米オープン」で準決勝、「ウィンブルドン」では準々決勝まで駒を進めている。身長175cmとテニス選手として恵まれた体格とは言えないが、フェデラーに「男子最高」と称されたリターナーであり、軽快なフットワークと精確なストローク、そして闘志を武器とする。2002年のATPツアー初優勝以来27のタイトルを獲得し、「ATPファイナルズ」に7度出場、デビスカップで3度栄冠を手にした。年末ランキングでは、2005年にトップ20の壁を破ると、2013年までに4度のトップ5入りを経験。しかし2014年頃からケガや疲労による棄権、欠場が増えていき、ランキングも徐々にダウン。37回目の誕生日を迎えた直後の2019年4月15日時点で155位まで順位を落としている。

そんなフェレールが引退の意思を表明したのは、2018年夏のこと。「かつてのように素早く反応したり、回復することができなくなった。2019年にスペインの人々の前でキャリアを終わらせたい。いいプレーができないわけではなく、身体的なものなんだ」というのが理由だった。

時折ラケットを破壊してしまうなど熱い面を見せる一方、礼儀正しい人格者として知られるフェレール。多くの選手がその引退を惜しむとともに功績や人となりを称えており、錦織圭(日本/日清食品)もその一人だ。2008年の「全米オープン」3回戦は当時18歳で126位だった錦織が初めてトップ10の選手を倒した試合だが、その相手が4位のフェレールだった。それを皮切りにこれまで14回対戦したフェレールについて、「(引退の知らせは)最近一番ショックな出来事かもしれない。彼が自分を小さい頃から育ててくれたというか、自分のライバルであり、模範であり、小さい頃から目指すべき選手だった」と語る。また、同胞でありデビスカップ優勝をともに成し遂げたナダルは「彼の成し遂げたことは大きい。(700勝を超える)記録が物語っている。長年トップレベルでプレーしてきた。僕にとって素晴らしい選手であると同時に大事な友人だ」と先輩を称えている。

とはいえ、フェレールの闘志はまだ消えてはいない。2019年3月の「ATP1000 マイアミ」で世界3位のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)をフルセットの末に下すと、「すごく嬉しい。今年引退する僕にとって特別な日になったね。サーシャ(ズベレフ)のようなトップ10の選手に勝利したことは贈り物だよ。最高の状態ではもう戦えないけど、一戦一戦にエネルギーを注ぎ込み、今の自分ができる最善のプレーをしたい」と、喜びとともに手ごたえを口にしている。

そんな彼の最後の大会は、2019年5月に開催される「ATP1000 マドリード」。コートは、彼が現役選手としてはナダルに次いで2番目に多くの白星(331勝)を獲得してきたクレーだ。「僕にとってテニスはすべて。僕が得たものは全部テニスのおかげであり、その恩返しがしたい。最後の大会まで、最後のポイントまで戦い続けるよ」という言葉通り、母国の人々の前で今一度、最高の闘志を見せてくれるはずだ。

(※データはすべて2019年4月17日時点)

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「ホップマンカップ」でのフェレール(Photo by Paul Kane/Getty Images)