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★遠藤航(後編)

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 シント・トロイデンには、浦和レッズでチームメイトだった関根貴大も含め日本人選手が5人在籍している(※)。日本人が多いことの良し悪しは当然あるだろう。

※遠藤、関根のほかに、冨安健洋、鎌田大地、木下康介が在籍

「やはり海外では、知っている人がいるというのは大きいですよね。英語をなかなか覚えないというデメリットはあるものの、言葉が通じる選手がいることはすごく大きいです。



シント・トロイデンでもリーダー的な役割を果たしている遠藤航

 アフリカ出身の選手たちはフランス語をお互いにしゃべれるので、いつも一緒にいますよね。海外に来て日本人が多くいることは、僕にとって入りとしてはすごく良かったです」

 そんな日本人選手の成長をチームや日本代表で間近で接してきて、どう感じているのだろうか。

「(鎌田)大地もフランクフルトで試合に出られなかったり、色々難しい思いをしてシント・トロイデンに来たと思うので、彼なりに覚悟はあったと思います。移籍してきて最初の試合でしっかり点を取れて、そこから波に乗っていけたのはストライカーとしてはすごく大事なことで、その覚悟が結果につながったのかもしれないですね。

 やはりサッカー選手は、練習も大事ですけれど、試合に出て経験を積み上げていくことによって一番の成長があると思っているので、大地も今シーズンはコンスタントに試合に出られていること自体が彼にとってはプラスだと思います。

 もともとはずっと(サガン)鳥栖で試合に出ていて、海外に行った選手なんで、1回挫折してもまだ若いし、ここからまたしっかり試合に出てやっていけば、もっともっと成長すると思います。冨安(健洋)も半年間試合に出られない時期がありましたけど、彼も同じだと思います」

 冨安は移籍する前のJリーグの試合でケガをし、加入当初は全体練習にも参加できない状況だった。

「冨安の場合は若かったですし、リオ五輪のサポートメンバーとして来ていて、その中では一番良い選手だなと感じて僕も見ていました。ただ、こんなにも早く日本代表に適応してフィットするとは思っていなかったです。それは森保(一)さんが監督になって、ワールドカップ後からメンバーをガラッと変えたのが彼にとってポジティブに働いたと思います。

 でも、そのチャンスをしっかり掴めたというのは彼の努力だと思うし、シンプルに選手としての良さを評価されたと思います。最終的なところは本人次第ですから」

 他の日本人選手にも話を聞いたが、遠藤はチームの中でもリーダー的な存在だ。

「まぁ、一番年上なので、そこは意識しています。 うまくいってる選手もいればちょっとうまくいっていない選手もいるわけで。僕もプロの経験は長いので、自分の経験などは伝えるようにしています。たくさんいるので、日本人選手全員で集まれることはなかなかないですが、そこも自分がバランスを見ながら、みんなとコミュニケーションを取るようにしています」

 湘南ベルマーレに所属していた19歳の時にキャプテンを務めた。学生時代からもずっとキャプテンであったが、Jリーグでこの若さで務めることは珍しい。

「キャプテンというよりはゲームキャプテンという感じでした。もともとベテランの方がキャプテンをやっていて、その方が試合に出られない時などに僕がキャプテンマークを巻いていました」

 キャプテンの素養は少年時代からあった。

「小学校、中学校、ユースもずっとキャプテンをやっていたんで、どちらかというと、やるかって言われたら、やりたいと言うタイプです」

 近い将来に自然とA代表のキャプテンの座も巡ってきそうだ。

「やりたいとは常に思っていますけれど、結局、やりたいと言ってやれるものではなくて、周りの選手や監督からの信頼があってこそ任されるものだと思います。僕はやりたい思いは持ちながらも謙虚にしっかりと努力を続けて、周りの選手からもっともっと認められるようにならないといけないと思っています」

 リハビリ中であったが、日本で会った時と変わらず、常に前向きでさらなる逞しさも感じた。初めての海外生活で困っていることはないのだろうか。

「言葉はほぼ大丈夫です。逆にある程度慣れてくると、ちょっと勉強が疎かになってしまっていて(笑)。もう一度しっかりスイッチを入れて、英語とフランス語の勉強に励みます。困っていることはあんまりないんですけど、強いて言うなら、家族と一緒に住めないのがちょっと寂しいかな」

 家族の話になると表情が一気にゆるんだ。家族には定期的にテレビ電話で近況を報告している。

「本当は一緒に住む予定だったんですけど、今は単身赴任のような感じなんですよ。独身のころも含めて今が初めての一人暮らしなんです」 

 急に出来た一人の時間で、言葉の勉強と料理にハマっている。

「もともと料理は得意じゃなかったんですけど、最近は楽しくて。最初は肉を焼くだけとか、シンプルにご飯と納豆、味噌汁、フルーツなどを食べていたんですけど、やはり飽きてくるので、最近は生姜焼きやローストビーフを作ったりしています。魚のレパートリーも増やしたいんですけど、魚がなかなかないんですよ」

 ベルギーで色々なレストランを回ったが、肉やポテト、パスタといった大味なメニューが多く、栄養を考えると自炊をしなければならない状況とも言える。勉強している言葉もしっかり日本で準備してきた。

「移籍する1年前くらいから知り合いに英語を教えてもらっていました。その1年間でしゃべれるまでにはなっていなかったんですが、監督の言っていることなどは何となくわかる状態だったんで、それは良かったです」

 英語を学んで来たものの、チームメイトにフランス語しかしゃべれないアフリカ出身の選手もいるのでフランス語にも挑戦している。

「発音はちょっと難しいですけれど、でも、結局それも楽しんで今はやっているので。一人でいて少し寂しいですけど、言語の勉強や料理に時間を費やせるっていうのはメリットではありますね」

 ヨーロッパの国々に囲まれているベルギーのメリットを活かして、オフの際は近隣の国へも出かけている。デュッセルドルフに行ったり、2連休があったらパリに行ったりして、リフレッシュを図っている。

 最後に今後の目標を聞いた。

「シント・トロイデンでは、やはりヨーロッパリーグ(EL)の出場権を獲得するのが最低限の目標です。そして代表では、まずは目の前のコパ・アメリカに向けて、しっかりやっていくことが大事かなと思っていますし、代表は常にワールドカップを見据えて活動していると思っているので、3年後に結果を残すために一人一人が自分を磨いていくことも必要ですね」

 言い残したことを聞くと、これまで関わってきた方々を大事にする遠藤らしい言葉が返ってきた。

「今でもSNSなどで『応援してます』というコメントをくれる方々って、ベルマーレやレッズのサポーターが多くて、そんなサポーターやファンのためにも頑張りたいと思っています。

『早く帰ってきて』とかも言われますけど、まだ僕は海外でやりたいので、海外でもっと上を目指して頑張って、日本に帰った時にはすごく観客を呼べるくらいの選手にはなっていたいと思っています。ベルマーレ、レッズとそれぞれのチームを応援してもらって、僕のこともちょっとだけ気にかけてもらえればうれしいです」

 取材後も「何か食べに行きましょうか?」と声をかけてもらい、遠藤お勧めのスペイン料理屋に連れて行ってもらった。

 帰国する日にも「空港まで送って行きますよ」と連絡があり、シント・トロイデンから車で送ってもらうことになった。飛行機までの時間があり「やり残したことはないですか?」と聞かれ、食べそびれた『ムール貝』の店に連れて行ってもらった。

 遠藤とは日本で面識はあったが、国内外での取材経験を思い返しても、ここまで相手の立場を考えてくれた選手はいない。冒頭でも述べたが、遠藤がずっとキャプテンを務めてきている理由がわかったような気がした。