9月に開幕するラグビーワールドカップ日本大会へのカウントダウンが、刻々と進んでいる――。 日本代表を指揮するジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「全員に試合を経験させる」ため、日本代表候補・約60名の選手を、「サンウルブズ」と「…

 9月に開幕するラグビーワールドカップ日本大会へのカウントダウンが、刻々と進んでいる――。

 日本代表を指揮するジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「全員に試合を経験させる」ため、日本代表候補・約60名の選手を、「サンウルブズ」と「ウルフパック」のふたつに分けた。そして、スーパーラグビーとその2軍にあたるチームと対戦することで、彼らに多くの実戦経験を積ませている。



ラピースが日本代表に入れば戦力は確実にアップする

 休養を取っていた日本代表の主力数名も、4月下旬から試合に復帰する予定だ。サンウルブズは4月19日と26日の夜に、東京・秩父宮ラグビー場でニュージーランドの強豪と対戦(19日=ハリケーンズ戦、26日=ハイランダーズ戦)。一方、ウルフパックは20日に千葉・市原のゼットエーオリプリスタジアムでハリケーンズBと、27日は秩父宮ラグビー場でウェスタン・フォースと対戦する。

 ワールドカップに出場する最終登録メンバーは31名は、9月頭の期限前に発表される予定だ。日本代表候補の約60名は、6月に宮崎で40名ほどに絞られる合宿に参加することが第一関門となろう。

 キャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケル、PR(プロップ)稲垣啓太、PR具智元(グ・ジウォン)、HO(フッカー)堀江翔太、FL(フランカー)姫野和樹、SH(スクラムハーフ)田中史朗、SO(スタンドオフ)田村優、CTB(センター)ラファエレ ティモシー、WTB(ウイング)福岡堅樹、FB(フルバック)松島幸太朗――。彼らは指揮官からの信頼も厚く、合宿には間違いなく呼ばれる。

 その一方、まだ代表キャップを保持していないものの、「3年居住」という代表資格(※)を得られれば、すぐにでも日本代表に選ばれそうな外国人選手がいる。それは、昨シーズンからサンウルブズでもプレーしている南アフリカ出身のふたり、身長2メートル越えのFL/LOグラント・ハッティングと、「ラピース」という愛称で呼ばれているFLピーター・ラブスカフニだ。

※ラグビーの代表チームはオリンピックのような「パスポート主義」ではなく「協会主義」であるため、その国や地域に所属するチームで3年間プレーすれば代表選手になれる。

 まずは、3月からひと足早くサンウルブズに合流し、トライを挙げるなど活躍を見せているハッティングから紹介したい。スーパーラグビーのライオンズやブルズ(ともに南アフリカ)で活躍し、2015年からクボタスピアーズに加入した。そこで3シーズンプレーしたのち、昨シーズンから神戸製鋼コベルコスティーラーズに移籍。プレーオフ決勝でもトライを挙げ、15シーズンぶりの優勝にも貢献している。

 ハッティングの魅力は、なんと言っても201cmの身長である。日本代表候補で一番背が高い。日本代表は、ワールドカップの1次リーグでアイルランドやスコットランドといったセットプレーの強いチームと対戦するので、ラインアウトやキックオフなどでの空中戦で大きな武器となるだろう。

 また、ハッティングは身長の割に足も速く、両サイドでトライを取りにいくFLのポジションでもプレー可能だ。試合中のケガ人などのアクシデントを考慮すると、LOとFLの両方でプレーできる点はジョセフHCの好みである。近年は「3年居住」のルール適用がより厳格になってきたが、7月のPNC(パシフィック・ネーションズ・カップ)では桜のジャージー姿が見られるはずだ。

 そして、もうひとりのラピース。本人も「ラブスカフニ」という名字の発音が難しいため、この愛称を好んでいる。2012年からチーターズやブルズ(ともに南アフリカ)で5シーズンプレーし、クボタでプレーするために2016年に来日した。

 2年前にジョセフHCから「日本代表になる可能性がある」ことを知らされ、そこからワールドカップ出場を視野に入れたという。昨シーズンのサンウルブズではチーム内の「ベストFW」にも選ばれた。運動量が豊富で、タックルも強く、頼りになる選手だ。

 また、リーダーシップも高く評価されており、昨年のサンウルブズではゲームキャプテンを務めた。今年の日本代表候補合宿ではリーチキャプテン、田中、田村、SH流大(ながれ・ゆたか)らとともに「リーダーのひとり」に指名されるなど、チームでの存在感は日に日に大きくなっている。

 ただひとつ、ラピースには問題があった。試合には出場していないものの、2013年11月に南アフリカ代表のヨーロッパ遠征に参加したことが問題視されていたのだ。だが、今年になって「南アフリカの協会から、日本代表として出場していいという許可が出た」(ラピース)。出場できるタイミングは未定だが、9月のワールドカップ本番には間に合う予定だ。

 このふたり以外にも、ワールドカップに日本代表として出場可能な外国人選手はいる。現在サンウルブズで猛アピールを続けているが、リーグ全体でも屈指のボールキャリア数を誇るFL/No.8(ナンバーエイト)ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ――通称「ボニ」だ。

 フィジー人の父とアイルランド人の母を持つボニは、オーストラリアのシドニー生まれ。オーストラリア高校代表に選ばれるなど頭角を表し、2016年にNTTコミュニケーションズシャイニングアークスに加入した23歳だ。また、2016年にトップリーグ最年少出場記録(19歳)を更新し、今年サンウルブズ入りも果たしたFLベン・ガンター(パナソニックワイルドナイツ)も台頭してきた。

 ただ、バックロー(FL/No.8の総称)にはリーチや姫野を筆頭に、No.8アマナキ・レレィ・マフィや前出のラピースもいるため、相当な活躍を見せないとワールドカップへの出場は難しいが、ともに可能性を残している。

 また、ジョセフHCは「(7月~8月の)PNC後に代表資格を得る選手もいる」と語っており、LOジェームス・ムーア(宗像サニックス)やCTBシェーン・ゲイツ(NTTコミュニケーションズ)、WTBゲラード・ファンデンヒーファー(クボタ)なども、まだ日本代表入りの可能性がある。

 ラグビーはケガがつきものだ。試合中にもシンビン(10分間の一時的退出)やHIA(脳震盪がどうかの確認)によって、選手がピッチから離れることも多々ある。選手層は厚いに越したことはない。彼ら外国人選手の加入は、間違いなく日本代表を強くする。