松山英樹にとって、マスターズ(4月11日~14日/ジョージア州)挑戦は今年で8回目(アマ2回を含む)となる。 過去に、日本人選手初のローアマチュアを獲得。プロに転向してからも、5位(2015年)、7位(2016年)という実績を持っている。…
松山英樹にとって、マスターズ(4月11日~14日/ジョージア州)挑戦は今年で8回目(アマ2回を含む)となる。
過去に、日本人選手初のローアマチュアを獲得。プロに転向してからも、5位(2015年)、7位(2016年)という実績を持っている。
そして、”今年こそは”という大いなる期待感を抱かせる松山は、練習日から「不安しかない」と言葉少なげに語っている。
あまり気負うことなく、練習ラウンドをこなしていた松山英樹
その不安材料の大きな要因は、前週のオープンウィークに風邪をひいてしまったことだった。
松山が、舞台となるオーガスタ入りしたのが、4月5日(金)。その日は、大学の後輩で、過去の松山と同じくアジアアマに優勝して出場権を得たアマチュアの金谷拓実(東北福祉大)と、一緒に9ホールをプレーした。
その際も、「ともかく、風邪をひいてずっと寝ていたので、何もしていないです」と語り、精緻なショットを要求されるオーガスタにおいて、その攻略の第一条件となるピンポイントで打っていくことに、不安いっぱいという表情を見せた。
4月7日(日)も、金谷と一緒にハーフラウンドをこなした。4月8日(月)は練習ラウンドをせずに、練習場で1時間ほどボールを打って終了。翌4月9日(火)は前半9ホールを回ったあと、雨上がりの練習場で遅くまでボールを打っていた。
試合前日となる4月10日(水)は、午前中に小平智と一緒に後半9ホールをプレー。そのあとは、パー3コンテストにも参加せず、早々にコースを去った。
つまり、大会初日を迎える前までに、松山は都合2ラウンドほどの練習にとどめている。
「風邪はだいぶよくなっています。でも、不安ばかりです」と言う松山だが、どの選手も入れ込んで、ともすると初日からの戦いを前にしてオーバーペースになりがちなマスターズの雰囲気を、あえて抑えているような気がするのだ。
このマスターズの創設者で、「球聖」と呼ばれたボビー・ジョーンズ(※)は、当時のエスクワイア誌の独占手記の中で「唯一、私が(後進に)アドバイスできるのは、大切な試合の前から『あまり根を詰めるな』ということです」と語っている。
※アマチュア選手ながら数々のビッグタイトルを獲得。1930年には当時の4大タイトル、全米オープン、全米アマ、全英オープン、全英アマのすべてを制し、年間グランドスラムを達成した。
それは、タイガー・ウッズ(アメリカ)をはじめ、世界ランク上位の優勝争い常連組は皆、当然心得ている。彼らが、しっかりとセーブしながら初日を迎えていることでも、それは実証されている。
松山のショットは、日に日に整ってきている。彼の場合、「不安いっぱい」という試合に限って、好成績を残しているような気がする。それは、無理せずに丁寧な攻めをするからかもしれない。
今年のマスターズ攻略のカギとなるのは、前半9ホールでのスコアのまとめ方だと思う。特に、5番ホール(パー4)がおよそ40ヤード近く延びて、495ヤードの最難関ホールとなったこともある。
かつて、マスターズ優勝6回を誇るジャック・ニクラウスは、「5番ホールが難しいのは、本来ショートアイアンで受けるグリーン形状なのに、そこでロングやミドルアイアンで攻めなければいけないことだ」と言っていた。
それが、近年では進化したクラブ、ボールによって、どの選手もショートアイアンで狙える時代に変わっていたが、再び今年から、本来あるべきホールの特性を再現すべく、40ヤード距離を延ばしたのだ。松山もその長さに驚いたという。
それでなくても、前半はなかなかアンダーパーで回りにくい。まずは、そこをイーブンパーで切り抜けること。そうすれば、後半のチャージにつながる。
今季、松山はここまでトップ10に3回入っている。それも、マスターズに向けて尻上がりの状態での成績だ。「不安いっぱい」で、根を詰められなかった松山の状態が、吉と出てほしい。