専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第200回 2020年東京五輪まで、あと1年と3カ月ほどとなり、関係各所はその準備に大忙しです。同時に、着実に準備が進んでいることをアピールするため、各競技の会場ごとにその成果…
専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第200回
2020年東京五輪まで、あと1年と3カ月ほどとなり、関係各所はその準備に大忙しです。同時に、着実に準備が進んでいることをアピールするため、各競技の会場ごとにその成果をお披露目しています。
ゴルフ競技についても、去る2月25日に開催コース(霞ヶ関カンツリー倶楽部)の出来栄えを初めてメディアに公開。レジェンドプロによる、デモンストレーションラウンドを実施しました。
おそらく出来栄えは立派なものでしょう。高速グリーンで、距離もたっぷりあって、さらに戦略性もあり、どこに出しても恥ずかしくない国際標準の一級コースであることは間違いありません。
けど、それでいいのだろうか? 日本の選手が勝てるような設定を施しているのか、甚だ疑問です。
だいたい、オリンピック招致に使途不明金を支出するような”お坊ちゃま気質”のJOC(日本オリンピック委員会)が、日本を勝利に導く戦略なんて、とても考えているようには思えません。
話は、1957年のカナダカップ(ワールドカップの前身)に遡(さかのぼ)ります。霞ヶ関CCで行なわれたこの試合は、日本チーム(中村寅吉、小野光一ペア)が個人、団体ともに優勝しています。
体格的にハンデがあった当時、なんで日本チームは勝つことができたのか?
その要因のひとつは、グリーンが高麗だったことです。当時の日本のコースは、高麗グリーンの全盛。ベントグリーンに慣れていた外国人はみんな、高麗グリーン独特のボールの切れ方に対処できず、大苦戦を強いられました。
片や、迎え撃つ日本チームは、練習を重ねて高麗グリーンに対応。見事な栄冠獲得につなげました。
そして今、霞ヶ関CCで、日本の選手が勝てる秘策は練られているのでしょうか?
もし、そんな準備が進んでいたら、ごめんなさい。私の認識の誤りなので謝罪します。
ホームアドバンテージが少しでもあるといいんですけどね...
けど、おそらくそんなことはやっていないでしょう。単に世界の名コースと比較して、そん色ないレベルにまでクオリティを引き上げる――そのことで、頭がいっぱいなはずです。
ただそうやって、世界レベルに上げていけばいくほど、日本の選手にとっては不利なんですけど……。まさに島国の”カッペ根性”の成せる業ですね。
こうなったら、今からでも川奈ホテルゴルフコースに変えるとか、妙案はいっぱいあります。川奈GCは、チャールズ・ヒュー・アリソン設計で、『世界のベストコース100』の常連ですから、誰も文句は言わないでしょう。
そこのグリーンは、なんと高麗。癖があって、読みにくいです。加えて、風も強く、それを読むのは難しいです。同コースに馴染みがある日本の選手に比べて、海外の選手はその対応に苦慮するはずです。
ぜひ、川奈GCでやって、日本の選手に金メダルを! と思うんですけどね。まあ、現実的には難しいでしょうね……。
もはや霞ヶ関CCで開催するのは仕方がないです。そこは諦めようと思うのですが、あらためて問題になるのは、ギャラリー対策です。
猛暑日の縁天下に、2万人規模の集客を目論んでいる、というのはどうかと思います。しかも、1日の観戦チケットを1万円(※男女決勝ラウンド。予選ラウンドは7000円)で販売するって、アホかもう。
私なら、1万円もらっても真夏の霞ヶ関CCの試合観戦には行きたくありません。だって、猛暑で阿鼻叫喚の地獄絵図になるのが見えていますから。
ちょっと想像力のある方なら、真夏のコースの厳しさを容易に推察できます。これまで、何度も猛暑日にラウンドしましたが、あれはプレーせずに、ただ立っているだけでもしんどいです。帽子を被っていても、頭が蒸れてかえってクラクラします。
運営側は、五輪本番では経口補水液をギャラリーの人数分用意すると言っていますが、そんなもの1時間ぐらいしか持たないでしょう。半日いるなら、もっと水分を摂らないと。
あと、問題はトイレと救護所ですかね。
トーナメントの場合、ギャラリーはクーラーの効いたクラブハウスには入れません。だから、なんぼ暑くても、屋外にずっといることになります。これが問題です。
トイレも当然、クラブハウス内の涼しくて、ウォシュレット付きトイレを使用できるわけではありません。
ウォシュレット付きトイレが日本でいち早く普及したのは、ゴルフ場です。わがままで金持ちの、いかにも痔になっていそうなオヤジがたくさんいたから、その需要がものすごくあったんでしょうね。
オリンピックのゴルフ競技では、そんなゴルフに精通しているオヤジたちが観客の大半を占めることでしょう。てことは、日頃ウォシュレット慣れしている人が、急な便意をもよおして仮設トイレに駆け込むわけです。エアコンもないし、匂いもきついし……となったら、やってられません。
しゃがんでいる間に、滝のような汗が滴り落ちる――もはや、ゴルフ観戦どころの騒ぎではありません。「これが、オリンピックなの?」「1万円も出して、この仕打ちはないよ」って、みなさん憤慨することでしょう。
観客のみなさんがそんな苦痛を味わうことがないよう、仮設トイレであっても、ぜひとも洋式のウォシュレット付きで、できればクーラーも完備していだきたいですね。電源とかはないですけど、そこは発電機を大量に持ち込んでほしいところです。
こうなったら、プレハブでいいから、エアコン付きの休憩所や介護所も設置してほしいです。そのために、トレーラーハウスを大挙導入するとかね。
だって、もし入道雲がわき起こって、記録的な集中豪雨に見舞われたら、どうするんですか。ほんと、心配性なもので、すみません……。
霞ヶ関CCは、うれしいことに36ホールあります。試合会場となるのは東コースで、西コースは余っています。そこを使って、いろいろな退避スペースが作れます。その辺は何とか了承してもらって、素晴らしい大会にしていただきたいと思います。
加えて、アクセスの問題もありますね。1万人を超える規模の移動をどうするのか。
当然、マイカーでの来場は禁止ですから、ギャラリーは不便を強いられるでしょう。JR川越線の笠幡駅が最寄り駅で、そこから歩いていけますけど、真夏はちょっときついんじゃないですか。
そもそも笠幡駅の列車運行はさほど多くありません。JRと協議して臨時便の増発も考えてもらわないといけないでしょうね。
その笠幡駅を含めて、普段クラブバスが運行している西武新宿線の狭山駅からもシャトルバスも出すのでしょうが、1万人の移動となれば、相当なバスが必要です。どう対処するのか、見ものです。
小池百合子都知事は、オリンピック期間中は「終電を伸ばす」と明言しています。そんなことより、ひっ迫しているのは競技会場への観客の円滑な輸送でしょ。各関係者と協議して、そっちを早急に決めてもらわないと。
室内競技はともかく、屋外競技はテレビで見ていたほうがいいかもしれません。4K、8Kのテレビ商戦のほうが大きな山場になる――そんな気がしますね。